準防火地域の窓は、普通のサッシに替えられないことがあります|築古アパートのオーナーが窓リノベの締切前に測る距離
結論からお伝えすると、準防火地域の築古アパートでは、隣地や道路に近い窓を、ふつうのアルミサッシに替えてはいけない場合があります。建築基準法61条が、防火地域・準防火地域の建築物の「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分」に防火設備を求めているからです。窓の交換そのものは建築確認が要らないことが多いぶん、誰にも止められずに違反の状態を作ってしまうのがこの工事の怖いところです。国の補助事業「先進的窓リノベ2026事業」は、交付申請の予約が遅くとも2026年11月16日までと公表されているので、見積りを取る前にこの条文を1本だけ確かめてください。
築40年のアパートの2階。北側の窓は網の入ったガラスで、枠のアルミは白く粉を吹き、冬は結露でカーテンの裾が黒ずむ。隣の家の外壁までは2メートルほど。「カバー工法なら1日で替えられますよ」と言われ、カタログを開くと、同じ形の窓に「防火戸」と書いたものと書いていないものが並んでいて、値段がかなり違う。どちらを選ぶかは、好みではなく条文で決まります。

「延焼のおそれのある部分」は、距離で決まっています
建築基準法2条6号は、「延焼のおそれのある部分」を次のように定めています。
- 隣地境界線・道路中心線・同じ敷地の2つ以上の建物の外壁間の中心線から
- 1階は3メートル以下、2階以上は5メートル以下の距離にある建築物の部分
- ただし、防火上有効な公園・広場・川などの空地や水面、耐火構造の壁などに面する部分などは除く
冒頭の北側の窓は、隣地境界線までが2メートル台なら、ほぼ確実にこの範囲に入ります。網入りガラスが入っているなら、この部分の窓として作られた可能性が高いと考えてください。網入りガラスは、その窓に防火設備が求められていた手がかりになります。
61条が求めているのは、窓そのものの性能です
61条1項は、防火地域又は準防火地域内にある建築物について、「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け」、その防火設備を、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は大臣の認定を受けたものとしなければならない、としています。施行令109条1項は、その防火設備を「防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備」としています。
ここで効くのは、ガラスだけでなく、サッシとガラスの組み合わせで性能が決まる点です。網入りガラスだけを残して枠を普通の製品に替えたり、枠は替えずにガラスだけ複層ガラスに替えたりすると、組み合わせとして認められたものでなくなることがあります。カタログに「防火設備」「防火戸」と書かれた製品と、その適用条件を必ず見てください。
窓を替えるだけなら、建築確認は要らないのですか?
多くの場合、要りません。建築確認が要る「大規模の修繕・模様替」は、2条14号・15号で主要構造部の1種以上について行う過半の修繕・模様替とされ、主要構造部は2条5号で「壁、柱、床、はり、屋根又は階段」です。窓はここに入っていません。だからこそ、申請の段階で誰も61条を確かめません。建築確認の要否の考え方は木造2階建てのアパートは面積を問わず建築確認の対象ですで書いています。
先進的窓リノベ2026事業の締切
環境省の「先進的窓リノベ2026事業」は、補助対象者に「住宅を所有し、賃貸に供する個人または法人」が明記されている制度で、ガラス交換・内窓設置・外窓交換(カバー工法/はつり工法)・ドア交換が対象工事です。公表されている要点は次のとおりです(2026年9月25日確認)。
- 対象期間…2025年11月28日以降に着手した工事
- 交付申請の予約…遅くとも2026年11月16日まで
- 交付申請…遅くとも2026年12月31日まで。どちらも予算上限に達した時点で終了
- 上限…住宅は1戸あたり100万円。1申請あたりの合計補助額が5万円以上の工事が対象
- 申請するのは工事をする事業者(登録した窓リノベ事業者)で、補助金は発注者に還元される
公式サイトでは、予算に対する申請額の割合が毎日更新されており、2026年9月25日の表示は概算で25%でした。補助の対象になる窓は、事業の性能要件を満たす製品に限られます。準防火地域の延焼ラインにある窓は、「補助の対象か」と「防火設備か」の両方を満たす製品を選ぶことになるので、選べる幅が狭くなります。
(出典:先進的窓リノベ2026事業 公式サイト「事業概要」ほか・2026年9月25日確認)
内窓を足す場合の費用感と、断熱の考え方は民間賃貸の断熱と遮音に、結露の相談が来たときの対応は結露とカビの相談が入居者から来たときにまとめています。

都合の悪いことも書いておきます
建てた後に準防火地域に指定された建物は、話が単純ではありません。建築基準法3条2項は、規定の施行や適用の際に現に存する建築物で、その規定に適合しない部分には、その規定を適用しないとしています(いわゆる既存不適格)。ただ、その扱いが窓の交換でどう変わるかは建物と工事の内容で分かれます。自分の物件がどちらに当たるか、この記事では判定しません。市の建築指導の窓口か建築士に、図面を持って確認してください。また、防火設備の窓は同じ大きさの普通の窓より高くなることが多く、補助で差が埋まるとは限りません。補助を受けて入れた窓を撤去・廃棄するときは「財産処分」に当たる可能性があり、事前の相談が求められています(賃貸住宅の入居者が退去・転居する場合などは除く)。
今日やることを1つだけ選ぶなら
物件の住所で、防火地域・準防火地域の指定を市の都市計画の窓口か公開地図で確かめてください。準防火地域なら、隣地境界線と道路中心線から、1階は3メートル、2階以上は5メートルの範囲に入る窓に印を付けた簡単な配置図を作る。見積りを頼むときにその図を渡せば、防火設備が要る窓と要らない窓を分けた見積りが返ってきます。11月16日の予約締切から逆算すると、見積りは10月中に取り始めるのが目安です。
出典
- 建築基準法2条5号・6号・14号・15号、3条2項、61条(e-Gov 法令API・2026年9月25日時点)
- 建築基準法施行令109条(e-Gov 法令API・2026年9月25日時点)
- 先進的窓リノベ2026事業 公式サイト「事業概要」「対象要件の詳細(住宅)」(2026年9月25日確認)


