インターネット無料は築古賃貸でも導入できるか|オーナーが確かめる順番
結論からお伝えすると、インターネット無料は築古の建物でも導入できることが多い一方で、「引けない建物」と「引いたのに評価されない入れ方」があります。決める順番は、①その建物に何が引けるか(配管・配線) ②何年しばられるか ③無料と言えるだけの速度が出るか——の3つです。先に契約年数を確かめないまま入れると、やめたくなったときにやめられません。
3月の内見のあと、仲介会社の担当者から電話が入ります。「お客様から、ネットは無料ですかと聞かれました。無料の物件と迷っていらっしゃいます」。募集条件の紙を見返すと、その欄は空白のまま。同じ駅の競合物件を検索すると、条件で絞り込む項目の中に「インターネット無料」のチェックボックスがある。チェックを入れた瞬間、自分の物件が検索結果から消えました。数日後、業者に現地を見てもらうと、電話の配管を通そうとしたところで詰まりが見つかり、「この経路は使えません。外壁沿いに新しく通す形になります」と言われました。

「無料」は、誰が払っているのか
入居者から見れば無料ですが、費用が消えるわけではありません。オーナーが毎月支払い、その分は家賃の中に含まれている、という形になります。ここを取り違えると判断を誤ります。
確かめ方は単純です。自分の数字で計算してください。
- 出ていくお金:毎月の支払額 × 12か月 × 契約年数(+初期の工事費)
- 入ってくるはずのお金:埋まらなかった月数 × 家賃、または下げずに済んだ家賃 × 12か月 × 年数
後者が前者を上回らないなら、その導入は収支としては合いません。「あったほうがいいから」で決めないための計算です。家賃を触る前の手として比べたい場合は 家賃を下げる前に試す4つの手 と並べて見てください。初期費用の中身をどう組み替えるかは 消毒料は必要か|オーナーが見直す初期費用の中身 が近い考え方です。
築古の建物に、そもそも引けるのか
ここが最初の関門です。昭和築のアパートでは、次のところで止まることがあります。
- 建物までの引き込み経路がない:近くの電柱から建物へ渡す経路が確保できるか。前面道路の状況や、隣地・私道の持ち主の承諾が必要になる場合があります
- 建物内の配管が使えない:既存の電話用の配管が潰れている、細い、途中で曲がっている。中を通せず、外壁を沿わせる形になることがあります
- 各室までの経路がない:廊下の天井裏や壁の中に、部屋まで届く通り道があるか。無ければ露出配線になります
- 所有形態:建物全体が自分のものでない場合は、単独では決められません
図面で判断できません。業者に現地を見てもらってください。そのとき「引けますか」だけでなく、「引けない場合はどこで止まりますか」まで聞くと、代わりの方法があるかどうかが分かります。
なぜ露出配線を先に確かめておくのか
中を通せないと、配線が壁や廊下に見える形になります。内見に来た人の目に入るのは、その配線です。設備を足したのに、部屋の印象を下げてしまうことがあります。どの経路を通すのか、モールで隠すのか、色は何色か。見積りの段階で写真か図で見せてもらってください。
速度は、どこまで気にされるのか
入居希望者が見ているのは「無料かどうか」ですが、住みはじめてから見るのは速度です。ここがずれると、募集で得た分を退去で返すことになります。
- 1本の回線を全戸で分け合う形か、各戸が独立しているか:分け合う形は、夜間や休日に混みます
- 戸数に対して十分か:同じ設備でも、6戸と20戸では体感が変わります
- 有線が各室まで来るのか、共用部の無線を拾う形か:在宅で働く人には、この違いが大きいです
- 遅いときに誰が対応するのか:問い合わせ先が入居者なのか、オーナーなのか。決めておかないと連絡が管理側に来ます
「無料なのに遅い」は、設備が無いことより印象が悪くなる場合があります。速度を売りにするのか、あくまで「使える」程度と割り切るのか。募集資料に書く言葉も、ここで変わります。
何年しばられるのか。やめたくなったときにやめられるのか
導入の契約は、複数年にわたるものがあります。入れる前に必ず確かめる項目です。
- 契約期間は何年か。自動で更新されるのか
- 途中でやめた場合、どういう扱いになるか
- 建物を売却したとき、契約は買主に引き継がれるのか
- 設備は誰のものになるのか:契約が終わったとき、置いていくのか、撤去するのか
- 途中で速度の規格が変わったとき、入れ替えられるのか
3番目が抜けやすいところです。売却の予定がある建物では、契約が残っていること自体が条件交渉の材料になり得ます。複数年の契約を結ぶ前に、この建物をいつまで持つつもりかを先に決めてください。満室でも手元にお金が残らない状態については 満室なのにお金が残らない築古アパート に書いています。毎月の固定費は、この形で効いてきます。

導入する前に、順番に確かめる
- その広さ・その家賃帯の競合が、いくつ導入しているか:募集サイトで条件を絞り、件数を数えます
- 仲介会社に「聞かれますか」と聞く:物件の場所と入居者層によって、重さが変わります
- 現地を見てもらい、引けるか・どこを通すかを確かめる
- 契約年数と解約の条件を書面で確かめる
- 最後に、さきほどの計算で見合うかを出す
入居者層によって効き方が違う点は 築古アパートは誰に貸すか(入居者層の決め方) と、空室の原因の切り分けは 昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因 を合わせて読むと、順番を間違えずに済みます。
まとめ
インターネット無料は、検索の絞り込みで残るための条件になっている一方で、入れれば決まる設備ではありません。速度が伴わなければ評価されず、契約年数を確かめずに入れれば固定費だけが残ります。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の昭和築アパートでは、建物までの経路と室内の配管が最初の壁になります。
今日やることを1つだけ選ぶなら、仲介会社に「この物件で、ネット無料はどのくらい聞かれますか」と電話で聞いてください。聞かれていないなら、急いで入れる設備ではありません。聞かれているなら、次は現地調査です。契約内容の解釈や売却時の引き継ぎについては、契約書を持って宅建業者や弁護士などの専門家にご確認ください。


