台風が来る前と後、オーナーが動く順番|築古アパートで先に見る5か所と入居者への連絡
台風13号の影響を受けている沖縄・奄美の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
結論からお伝えすると、台風が来ている当日にオーナーができることは、ほとんどありません。結果を分けるのは来る前の1時間と、通り過ぎたあとに何をどの順番で見るかです。そしてその準備にいちばん向いているのは、皮肉なことに自分の物件に台風が来ない週です。
今週の台風は、関東には来ない
気象庁の発表(2026年8月8日19時45分・19時現在)によると、大型で非常に強い台風第13号「ドルフィン」は久米島の西北西約200キロにあって、西へゆっくり進んでいます。中心気圧は945ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は60メートルです。
その後の予報は、9日の朝に東シナ海、10日には華中付近へ進み、11日ごろ熱帯低気圧に変わる見込みとされています。あわせて台風第15号「チャンホン」が日本の東にあり、11日ごろ三陸沖、12日ごろ日本海へ進む予想です。いずれも埼玉・千葉県西部・栃木県南部に近づく進路ではありません。
だから今日、この地域のオーナーが慌てて現地に走る必要はありません。ただ、台風のシーズンはこれからです。自分の物件に向かってこない台風の週こそ、次に向かってくる台風の準備が落ち着いてできる週だと考えてください。雨と風のなかで見て回るより、晴れた日に30分歩いたほうが、確実に多くのことに気づけます。
※ここに書いた台風の情報は2026年8月8日時点のものです。進路も勢力も日々変わりますので、実際の判断は気象庁と自治体の最新の発表でお願いします。

来る前に見る5か所
築古のアパートで先に問題が出るのは、建物の強さそのものより詰まるところと飛ぶものです。
- 雨樋と屋根の谷……落ち葉や土がたまっていると、雨水が樋からあふれて外壁を伝います。雨漏りより先に、外壁のシミとして出ます
- ベランダと外廊下の排水口……砂、洗濯ばさみ、枯れた鉢植え。ここが詰まると、水は室内側へ回ります
- 屋外に置いてあるもの……自転車、傘立て、ゴミ置き場のフタ、物置、看板、鉢。飛べば隣家や通行人に当たります
- アンテナと屋根に載ったままの設備……使っていない古いアンテナ柱や、外した給湯設備の架台が残っていることがあります
- 外階段・手すり・軒天……サビや浮きが出ている場所は、風で一気に進みます
このうち1・2・3は、道具がなくてもその日のうちに手が付きます。4と5は自分で登らず、業者や管理会社に見てもらう場所です。外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかで書いたとおり、傷みは風の日にまとめて表に出ます。塀についてはブロック塀の点検で見る項目を先に確認してください。
入居者にはいつ、何を伝えるのか
連絡は前日までに一度だけ。掲示か投函で足ります。内容は3つに絞ってください。
- ベランダの私物を室内へ入れていただきたいこと
- 窓と雨戸の施錠
- 何かあったときの連絡先(夜間・休日にどこへ掛けるかまで書く)
3つ目が抜けている物件が多く、実際に困るのもここです。管理会社に任せている場合でも、時間外の受付番号が入居者に伝わっているかは別の話なので、一度確かめておいてください。
なお、避難に関することはオーナーが判断して伝える話ではありません。「避難してください」ではなく、「お住まいの自治体の避難情報を確認してください」と書くのが正しい形です。高齢の入居者がいる部屋については、緊急連絡先の整え方を平時に済ませておくほうが確実です。

通り過ぎたあとに見る順番
建物から見に行きたくなりますが、順番は逆です。
- 人……けが、停電、断水がないか。一斉の連絡を1本入れる
- 通路……外階段や共用廊下に落ちている物、割れたガラス。避難経路をふさいでいるものを先にどける
- 建物……天井や壁のシミ、屋根、外壁、雨樋、ベランダ、塀
- 記録……写真を撮る
室内で天井のシミや水の跡が見つかった場合の動き方は、雨漏りの連絡が入ったときの初動にまとめています。
写真は、あとで保険の話につながる
4番の記録を軽く見ないでください。撮り方は3枚1組が扱いやすい形です。
- 建物の全景(どの建物のどの面か分かる1枚)
- その部位(どこが傷んだか分かる1枚)
- 近づいた1枚(傷みの状態が分かる1枚)
風や雨による傷みが保険の対象になるかどうかは、契約の内容によって変わります。判断するのは保険会社です。だからこそ順番が大事で、直してしまってから連絡すると、状態を示す材料が残りません。着工の前に自分の証券を開いて、風災の扱いと免責の条件を確認してください。築古アパートの火災保険で更新前に確認することで、証券のどの欄を見るかを整理しています。
被害が大きく、罹災証明書などの手続きが必要になりそうな場合は、市区町村の窓口に何が要るかを先に聞いてください。自治体ごとに受付の方法も必要書類も違います。
建物が危ないかどうかは、写真では決まらない
傾き、基礎のひび、塀のぐらつき——こうしたものを見つけたとき、危険かどうかをご自身やこの記事で判断しないでください。渡す相手は決まっています。
- 建物の構造にかかわること……建築士、または自治体の建築指導課
- 塀や擁壁で通行人に危険が及びそうなこと……自治体の担当課(通学路に面していれば特に)
- 費用を保険でまかなえるか……保険会社・代理店
- 入居者との費用負担で争いになりそうなこと……弁護士
オーナーの仕事は、危険を判定することではなく、渡す相手に渡せる材料をそろえることです。
今日やることを1つだけ選ぶなら
入居者に配る紙を1枚だけ作っておいてください。ベランダの私物、窓の施錠、時間外の連絡先。この3行です。台風が近づいてから文面を考えると、いちばん抜けやすいのが3行目の連絡先で、そこが抜けた回だけ、電話はオーナーの携帯に直接かかってきます。


