木造アパートは200平方メートルから内装制限がかかります|オーナーが共用廊下を貼り替える前に見る条文
外廊下の壁がくすんでいたので、住戸と同じクロスで貼り替えようという話になりました。見積は1棟分で20万円台。材料は室内用の量産品です。ところが、内装業者から「共用部だと使えない品番があります」と言われて、話が止まりました。同じ建物なのに、部屋の中と廊下で選べる材料が違う。これは業者のこだわりではなく、条文の話です。
結論からお伝えすると、共同住宅は建築基準法でいう特殊建築物なので、一定の規模を超えると内装の材料に制限がかかります。そして木造や軽量鉄骨のアパートでは、その線が延べ200平方メートルという、築古の6戸アパートでも普通に届く数字に置かれています。さらに、住戸の中でよく使われる「床から1.2メートルまでは対象外」という緩和は、廊下と階段には書かれていません。

共同住宅は、法律上の「特殊建築物」です
まず出発点です。建築基準法2条2号に、特殊建築物として並んでいる用途があります。
学校(中略)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫(後略)
そして内装制限の入口が35条の2です。
別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物(中略)は、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。
別表第一(い)欄(二)項に、共同住宅が入っています。アパートは、映画館や病院と同じ枠に置かれている建物です。ここを知らないと、次の数字が意外に見えます。
木造アパートは、200平方メートルから対象になります
どの規模から制限がかかるかは、建築基準法施行令128条の4第1項1号の表が決めています。(二)項、つまり共同住宅の行はこうなっています。
- 耐火構造で一時間準耐火基準に適合する建築物 ── 当該用途に供する三階以上の部分の床面積の合計が300平方メートル以上
- 一時間準耐火基準に適合しない準耐火建築物等 ── 当該用途に供する二階の部分の床面積の合計が300平方メートル以上
- その他の建築物 ── 当該用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートル以上
築古の木造アパート、軽量鉄骨のアパートの多くは3段目の「その他の建築物」です。階数も、何階の部分か、も関係ありません。建物全体で200平方メートルに届いたかどうかだけです。
数えてみます。1Kが25平方メートルの8戸で200平方メートル。2DKが40平方メートルの6戸で240平方メートル。木造2階建て、1棟6戸から8戸という、当社のエリアでいちばん多い形が、そのまま線の上か、線を越えています。「うちは小さいアパートだから関係ない」は、この表を見ると成り立ちません。
なお、耐火・準耐火の建物には、緩い側にもう1つ条文があります。128条の5第1項のかっこ書きで、準耐火構造の共同住宅は、住戸を200平方メートル以内ごとに区画していれば、その部分の居室は対象から外れます。ところがこの緩和は、条文の文言上「主要構造部を準耐火構造とした建築物」の話です。その他の建築物には、この出口がありません。
居室と廊下で、要求される材料が違います
対象になった建物が何をするかは、128条の5第1項です。2つの仕上げが指定されています。
- 居室の壁と天井 ── 第1号の仕上げ=難燃材料(三階以上の階に居室を有する建築物の、その用途の居室の天井は準不燃材料)
- 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁と天井 ── 第2号の仕上げ=準不燃材料
難燃と準不燃の違いは、施行令1条5号・6号にはっきり書かれています。どちらも「通常の火災による火熱が加えられた場合に」108条の2の要件を満たす材料ですが、時間が違います。
- 難燃材料 ── 加熱開始後5分間(令1条6号)
- 準不燃材料 ── 加熱開始後10分間(令1条5号)
- (参考)不燃材料 ── 加熱開始後20分間(法2条9号、令108条の2)
5分・10分・20分。この3つの数字が、材料のカタログに書かれている等級の中身です。廊下と階段のほうが、部屋の中より厳しいのは、そこが逃げる道だからです。人が最後まで通る場所に、5分でだめになる材料は使わせない、という組み立てになっています。
「床から1.2メートルまでは対象外」は、どこに書いてあるのか
内装制限を調べると必ず出てくるのが、腰壁の緩和です。条文で確かめます。128条の5第1項の該当部分を、そのまま並べます。
(中略)当該各用途に供する居室(中略)の壁(床面からの高さが一・二メートル以下の部分を除く。第四項において同じ。)及び天井(中略)の室内に面する部分(中略)の仕上げを第一号に掲げる仕上げと、当該各用途に供する居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを第二号に掲げる仕上げとしなければならない。
1.2メートルの除外が付いているのは「居室(中略)の壁」のほうです。同じ1項の後半、廊下と階段について書かれた「通路の壁」には、この括弧書きが付いていません。
条文の文言だけを読むかぎり、廊下と階段の壁は、床から天井まで全部が対象と読めます。腰から下だけ好きな材料にする、という納まりは、住戸の中では成り立っても、共用廊下では成り立たない可能性があります。この読み方が自分の建物に当てはまるかどうかは、建築士または自治体の建築指導課に確認してください。この記事では建物ごとの判定をしません。
同じ1.2メートルの括弧書きを、住戸の台所の側から読んだ話は築古アパートのキッチンは替えずに印象を変えられるか|オーナーが1階と最上階で分けて決める順番に書いてあります。あわせて読むと、同じ1つの括弧書きが、部屋の中と外でどう効くかが見えます。
「大規模建築物」の内装制限は、アパートには届きません
逆方向の話も置いておきます。内装制限には、用途とは別に「大きい建物だから」という枠があります。128条の5第4項です。階数が3以上で延べ500平方メートル超、階数2で1,000平方メートル超、階数1で3,000平方メートル超の建築物が対象です。
ところが、この項にはただし書があります。
ただし、同表(い)欄(二)項に掲げる用途に供する特殊建築物の高さ三十一メートル以下の部分については、この限りでない。
(い)欄(二)項は共同住宅です。高さ31メートルはおおむね10階建てに相当しますから、当社のエリアの賃貸アパート・マンションは、ほぼ全部がこのただし書の中に入ります。「延べ面積が500平方メートルを超えたから大規模建築物の内装制限がかかる」という説明を見かけたら、共同住宅にはこのただし書があることを思い出してください。アパートで効いてくるのは、あくまで用途と規模のほう(128条の4第1項1号の表)です。
検証で外せるものと、外せないものがある
もうひとつ、条文の中に面白い線があります。施行令129条1項は、階避難安全検証法で安全が確かめられた階について、128条の5の適用を外すと定めています。ただし、外れる範囲にかっこ書きが入っています。
並びに第百二十八条の五(第二項、第六項及び第七項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
階段だけは、検証法でも外れません。計算で「煙が下りてこない」と確かめられても、階段の内装は準不燃のまま残る。逃げる道の最後の一本は、計算では譲らないという書き方になっています。共用廊下の非常用照明を条文から追った話はアパートの共用廊下に非常用照明は要るのか|築古アパートのオーナーが外廊下と階数で分ける順番にありますが、そこでも階段と廊下の扱いは分かれていました。

共用部を触る前に、確かめる順番
実務としては、こう進めます。
- 共同住宅の用途に供する部分の床面積の合計を出す(検査済証か確認申請の副本を見る。手元になければ、市の建築指導課で台帳記載事項証明を取る)
- 建物の構造がどの列に入るかを確かめる(その他の建築物か、準耐火か、耐火か)
- 200平方メートル・300平方メートルの線に届いているかを見る
- 届いていれば、廊下と階段は準不燃材料、住戸の居室は難燃材料という前提で見積を取る
- 使う材料の不燃・準不燃・難燃の認定番号をメーカーのカタログで確認し、見積書に書いてもらう
5がいちばん実務的です。認定番号が見積書に書いてあるかどうかで、あとから証明できるかが変わります。建物の書類がどこまで残っているかで、1と2の手間はまるで違います。書類の探し方は垂直積雪量は市町村の規則で決まっています|築古アパートのオーナーが大雪の前に見る屋根と通路で触れた建築指導課への当たり方と同じで、市の窓口が起点になります。大規模なリフォームで建築確認が必要になる場面は再建築不可の家は貸せるのか|2025年4月から大規模リフォームに建築確認が要るにまとまっています。
今日やることを1つだけ選ぶなら
自分の物件の「共同住宅の用途に供する部分の床面積の合計」を、今日1つの数字にしておくこと。200平方メートルに届いているかどうかで、共用部のクロス1枚の選び方が変わります。この数字は一度出せば、次の工事でも、売るときの資料でも使えます。業者に聞かれてから探すと、たいてい1週間かかります。
条文の引用は e-Gov 法令検索の建築基準法および建築基準法施行令(2026年9月7日時点)によります。規模の判定、構造の区分、実際に使える材料の可否は、建物ごとに結論が変わります。建築士または自治体の建築指導課にご確認ください。


