陸屋根の防水はいつやるか|築古アパートのオーナーが足場から逆算して決める
結論からお伝えすると、屋上・陸屋根の防水は「防水の時期」だけで決めないほうが安く済みます。決め方の順番は、防水がいつ切れるかではなく、足場を組む年をいつにするかが先です。屋根・外壁・鉄部はどれも足場が要ります。同じ年に寄せれば足場代は1回分、別々の年にやれば、そのたびに足場代を払うことになります。
国土交通省が出している賃貸住宅管理業者向けの計画修繕ガイドブックに、実際のアパートの長期修繕計画が載っています。そのうちの1つが、東京都にある木造2階建て・8戸・1K(18.2平方メートル)、平成10年築の物件です。11〜15年目に予定されている工事と金額は、次のようになっています。
- 屋根・屋上(塗装防水)……47万円
- 外壁(塗装)……96万円
- 鉄部・非鉄部(塗装)……51万円
- 廊下・階段・バルコニー(防水)……7万円
- 足場仮設……34万円
- 建物全体の小計……298万円
ここで見てほしいのは47万円ではなく、下から2番目の34万円です。屋根の防水そのものより、屋根に登るための足場のほうが金額の順位では上に来ています。しかもこの計画では、屋根・外壁・鉄部・廊下の4つを同じ年に寄せているので、34万円はこの4つで1回だけです。

足場が要る工事を、バラバラの年に入れないでください
もし「今年は屋上だけ」「3年後に外壁だけ」と分けていたら、足場は2回になります。同じ計画の21〜25年目・31〜35年目にも、足場は毎回34万円で計上されています。10年に1度しか登場しない費目なので、見積書を単発で見ているあいだは気づきません。
先に決めるのは、次の順番です。
- 足場を組む年を決める(10年前後に1回)
- その年に、屋根・外壁・鉄部・廊下や階段の防水をまとめて入れる
- 足場が要らない工事(室内、給湯器、外構)は、その年から外して別に回す
防水の周期は、どこの数字を見ればいいのか
同じガイドブックには、修繕周期の目安が2種類載っています。ひとつは国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインをもとにしたもので、これは中高層の単棟型マンションを想定した数字です。
- 屋根防水……補修・修繕は12〜15年、撤去・新設は24〜30年
- 床防水……修繕は12〜15年
- 外壁塗装等……補修・塗替は12〜15年、撤去・塗装は24〜30年
- 鉄部塗装等……塗装は5〜7年、清掃・塗装は12〜15年
もうひとつは、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の「賃貸住宅版長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)」(2014年発行)をもとにしたもので、こちらは賃貸住宅を想定した数字です。同じ資料から、この記事に関係する行だけを引くと、陸屋根・ルーフバルコニーは塗装が11〜15年、防水処理が21〜25年、ベランダは塗装が5〜10年、防水処理が11〜15年とされています。
2つを並べると、塗装(トップコートの塗り替え)と、防水処理(防水層そのもののやり直し)は別の周期で動いていることが分かります。10年ごとに来るのは前者、20年を超えたところで来るのが後者です。「前回やったのは12年前」と言うとき、それがどちらだったのかで、次の工事の規模が変わります。過去の見積書か請求書を1枚探してください。
陸屋根と、勾配のある屋根は同じではありません
木造アパートで多いのは、スレートや金属板が斜めに葺かれた勾配屋根です。この場合、上の表でいえば「傾斜屋根(カラーベスト)」の側で、塗装の周期は11〜15年とされています。陸屋根(平らな屋根)や、屋上・ルーフバルコニーがある建物は、水が流れて落ちるのではなく、いったん溜まってから排水口に向かいます。だから防水層と排水口の状態が、そのまま雨漏りの有無につながります。

まだ雨漏りしていないのに、やる必要があるのですか?
正直に言えば、防水層が切れてから雨漏りとして現れるまでには時間差があります。入居者から「天井にシミが出ています」と言われた時点では、防水の話ではなく、下地や断熱材の話になっていることが多いです。そうなると、防水のやり直しに加えて内側の工事が乗ります。
もうひとつ、費用より先に見ておくものがあります。排水口(ドレン)です。屋上の排水口が落ち葉や土で詰まると、平らな面に水が溜まったままになります。防水層がまだ生きていても、溜まった水は必ず一番弱いところを探します。ドレンの掃除は足場が要らず、その日にできます。台風の前後に見る場所としても、ここは外せません。
計画修繕をするかしないかで、何年変わるのか
同じガイドブックには、国土交通省住宅局「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について〜計画修繕を含む投資判断の重要性〜」(平成31年3月)を引いた試算が載っています。そこでは木造の経営期間を、計画修繕ありなら30年、計画修繕なしなら22年と置いて比較しています。
ここは正確に読んでください。これは「調べたら8年短くなっていた」という調査結果ではなく、試算をするための前提として置かれた数字です。実際に何年もつかは、建物と手入れの仕方で変わります。それでも、国が投資判断の資料をつくるときに「修繕をしない木造は22年で計算する」という置き方をしているという事実は、金融機関や買い手と話すときの材料になります。
費用の性質は、税理士に確認してください
防水や塗装の費用が、その年の経費(修繕費)になるのか、資産として何年かに分けて落とす支出(資本的支出)になるのかは、工事の中身によって扱いが変わります。一般的には、元の状態に戻す工事は修繕費、価値を高めたり耐久性を増したりする工事は資本的支出と説明されますが、境目は個別の判断になります。金額が大きくなる工事なので、見積の段階で顧問税理士か所轄の税務署に確認しておくと、期をまたいでから慌てずに済みます。
屋根と外壁をどちらから手を付けるかは外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるか、台風の前後に見る場所は台風が来る前と後、オーナーが動く順番にまとめています。廊下や階段まわりの傷みは外階段のサビと手すりのガタつきもあわせてご覧ください。まとまった工事に向けてお金をどう置いておくかは大規模修繕の積立をどう考えるかが参考になります。
今日やることを1つだけ選ぶなら
過去の工事の請求書を1枚探してください。探すのは金額ではなく、工事の名前と日付です。「屋上トップコート塗替」と書いてあるのか、「屋上防水改修」と書いてあるのか。前者なら次は10年前後、後者なら20年を超えたあたりが目安になります。書類が見つからないなら、それを見つけること自体が今年の仕事です。次の足場を何年に組むかは、その1枚から逆算できます。
出典
- 国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)付「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」(令和7年度の賃貸住宅の計画修繕推進セミナーで解説されているもの) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750538.pdf
- 同ガイドブック内・修繕周期の事例は「長期修繕計画作成ガイドライン」(国土交通省)および公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅版長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)」(2014年発行)に基づくもの
- 国土交通省住宅局「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について〜計画修繕を含む投資判断の重要性〜」(平成31年3月)


