外階段のサビと手すりのガタつきはいつ直すか|築古アパートのオーナーが自分で見る5か所
階段の3段目だけ、踏んだときの音が違う。「コン」ではなく「ボン」に近い、少し低くこもった音。手すりを握って揺すると、支柱の根元で1センチほど動く。築古アパートの外階段で、オーナーがいちばん最初に気づく変化はここです。
結論からお伝えすると、外階段のサビと手すりのガタつきは「見た目が気になったら」ではなく、「日常の目視で決めた項目に引っかかったら」動きます。 そして、赤サビが出ている・塗膜がふくれている・はがれているものは、オーナーの判断で塗り直す前に、専門家に見てもらう対象です。国土交通省がこの線引きを文書で示しています。
なぜ外階段だけ、これほど厳しく扱われるのか
2021年(令和3年)4月17日、東京都八王子市の木造共同住宅で屋外階段が崩落し、住民が亡くなる事故が起きました。国土交通省はこれを受けて2022年(令和4年)1月18日に建築基準法施行規則と関係告示の改正を行い、あわせて「木造の屋外階段等の防腐措置等ガイドライン」(令和4年1月・屋外階段の防腐措置等検討TG)を公表しています。
名前に「木造の」と付いていますが、このガイドラインは木造の屋外階段に加えて、木造共同住宅で一般的に使われている鉄骨造の屋外階段も対象に含めています。 埼玉・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートで多い、鉄骨の外階段に外廊下がつながっている形も、ここで言う対象です。
外階段が特別扱いされる理由は単純です。建物の中で唯一、常に雨風に当たりながら、人の全体重を毎日支えている構造部分だからです。

オーナーが自分で見る5か所
ガイドラインは、所有者・管理者による「日常的な点検」として、階段部材に次のものが生じていないかを目視で確認するとしています。専門的な道具は要りません。
- ひび割れ——モルタルなどの仕上げ材に線が入っていないか
- サビ・腐食——鋼材の色が変わっていないか、粉が吹いていないか
- 腐朽・損傷・虫害——木部が柔らかくなっていないか
- 防水層の損傷——踏み板の表面材が切れていないか、めくれていないか
- 水分の滞留・水漏れ——雨のあと、水が引かずに残る場所がないか
5つ目が、いちばん見落とされます。サビは「鉄が弱いから」出るのではなく、「水がそこに留まるから」出ます。 段の隅、側桁と踏み板が合わさる線、支柱が地面に刺さっている根元。雨が上がった翌朝に一度だけ階段を上がってみて、まだ濡れている場所があれば、そこが数年後にサビになります。順番としては、サビを塗り直すより先に、水が抜ける形にするほうが効きます。
どこからが専門家の仕事か
ガイドラインは、日常の点検で次のものが確認された場合は専門家の点検を受ける、と線を引いています。
- 著しい汚れや摩耗、変形
- 赤サビの発生
- 塗膜面のふくれ、または、はがれ
- 蟻道の発生や昆虫による食害などの著しい劣化現象
- 腐朽による軟化など、劣化が疑われる不具合
- 著しい水分の滞留、水漏れ
ここで気をつけたいのが、「塗膜のふくれ・はがれ」と「赤サビ」が、素人が塗り直したくなる見た目そのものだという点です。ふくれている塗膜の下は、多くの場合すでに水が回っています。上から塗ると見た目は直りますが、水は閉じ込められたまま残り、次に表面に出てくるまでの時間が延びるだけです。見えなくなるのと、直るのは違います。
専門家による点検の頻度も示されています。竣工から概ね1年以内に初期不良の点検、その後は概ね3年以内ごとです。点検口が無い場合は、目視のほかファイバースコープや触診で確かめる方法まで書かれています。
塗り直せば済むのか、造り替えが必要なのか
この判断は、記事で決められるものではありません。建物ごとの構造・支持方法・劣化の進み方で変わるため、建築士や施工者に実物を見てもらう領域です。 ただ、依頼する前にオーナー側で用意しておくと話が早いものはあります。
- 階段の構造種別(鉄骨造か、木造か、組み合わせか)が分かる図面
- 前回いつ、どこを、いくらで直したかの記録
- ガタつき・音の変化に気づいた日付と場所
- 雨のあと水が残る場所の写真
とくに1つ目です。組み合わせの階段(鉄骨造の階段を木造部分で支持している形)は、ガイドラインでも別扱いになっています。 材料が違えば必要な措置も変わるためです。自分の階段がどれに当たるかは、図面が無いと現地でも判断に時間がかかります。

直す順番をどう決めるか
限られた予算の中では、全部を同時にはできません。次の順に見ると決めやすくなります。
- 人が落ちる可能性があるもの——手すりのガタつき、踏み板の沈み、支柱の変形。ここは費用の比較より前に手配します
- 水を止める・抜くもの——防水層の切れ、水が溜まる隅。原因側なので、先にやると次が長持ちします
- 見た目の回復——塗装。1と2を終えてから
手すりのガタつきを「まだ握れるから」と後ろに回すオーナーは少なくありません。ただ、手すりは高齢の入居者ほど体重を預けます。高齢の入居者が増えた築古アパートの備えと同じ話で、同じ建物でも、誰が住んでいるかで危険度は変わります。
記録を残しておくと、あとで効く
点検の結果は、「異常なし」も含めて日付つきで残します。 何も出なかった日の記録は無駄に見えますが、後で価値が出ます。
- 売却するとき、買主に渡せる資料になる(築古アパートを売るなら満室にしてからか空室のままか)
- 火災保険で風災などを申請するとき、いつからの傷みかを説明できる
- 管理会社を変えるとき、そのまま引き継げる(管理会社を変更するときの引き継ぎ書類)
外壁や屋根と同じで、外階段も「気づいた時点」より「記録が始まった時点」のほうが大事になります(外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるか)。共用部をまとめて見る日を作るなら、分電盤と漏電の点検やゴミ置き場と同じ日に回すと、年に数回で済みます。
なお、耐震性や構造上の安全性そのものの判断は、一般論では書けない領域です。不安がある場合は、建築士や自治体の建築指導課に実物を見てもらってください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
次に雨が上がった日の朝、階段を一段ずつ上がりながら、まだ濡れている場所だけ写真を撮ることです。サビはそこから始まります。撮った日付が、あなたの物件の記録の1日目になります。


