電柱に募集の紙を貼れる場所は、さいたま市内にありません|築古アパートのオーナーがのぼりと看板を出す前に見る4つの線

空室が続いたとき、駅からの道に矢印の板を出したい、敷地の角にのぼりを立てたい、電柱に「入居者募集」の紙を貼りたい。そう考えたことのあるオーナーは多いと思います。

結論からお伝えすると、さいたま市では、自分のアパートの敷地に立てるのぼりは条例の許可なしで出せますが、本数と大きさに上限があり、駅から現地までの案内看板を他人の土地や道路に出す道はほぼ閉じています。そして意外なことに、いちばん先に条例の網にかかるのは、住宅街にある物件のほうです。

さいたま市の条例で広告物を出せる場所と出せない場所を5点にまとめた図

「入居者募集」ののぼりは、法律上は広告物です

出発点は屋外広告物法(昭和24年法律第189号)の定義です。

「この法律において『屋外広告物』とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう」(同法2条1項)

この定義に「営利」も「宣伝」も書かれていません。屋外に、ある程度の期間、公衆に向けて出ていれば広告物です。「入居者募集」ののぼりも、駅からの道順を示す矢印の板も、敷地の入口に置く案内図も、すべてこの定義に入ります。「うちは売り込みではなく道案内だから」という理由で外れる仕組みにはなっていません。

規制の中身は、法律ではなく条例で決まります。法3条から5条までが都道府県に「条例で禁止できる」「条例で許可制にできる」と授権している形で、さいたま市のような指定都市は法27条によって自分で条例を持ちます。以下はさいたま市屋外広告物条例(平成14年さいたま市条例第109号)で見ていきます。川口市・越谷市・熊谷市・杉戸町などは別の条例なので、数字はそのまま当てはまりません。

住宅街のほうが先に止まります

条例3条は、広告物を表示してはならない「禁止地域等」を並べています。その第1号がこれです。

「都市計画法第8条第1項の規定により定められた第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、風致地区又は生産緑地地区」(さいたま市屋外広告物条例3条1号)

ここが誤解されやすいところです。禁止地域は幹線道路沿いや景勝地ではなく、まず低層の住宅街が名指しされています。禁止地域では、原則として広告物を出せません。許可を取れば出せる、という話ですらなく、6条の許可制が働くのは「3条各号に掲げる地域又は場所以外」だからです。

加えて条例4条は、地域を問わず広告物を付けてはならない「禁止物件」を並べています。オーナーがやりがちなものが並んでいます。

  • 橋、トンネル、高架構造物及び分離帯(4条1号)
  • 石垣及び擁壁(4条2号)
  • 街路樹及び路傍樹(4条3号)
  • 信号機、道路標識、歩道さく、こま止め及び里程標(4条4号)
  • 電柱、街灯柱その他これらに類する物で、市長が指定するもの(4条5号)
  • 郵便差出箱、信書便差出箱、電話ボックス及び路上変電塔(4条7号)

4条5号の「市長が指定するもの」は告示で決まっています。信号機設置の標柱の下端から道路にそって前後10メートルまでの地点の、両側3メートル以内にある電柱・街灯柱です(さいたま市屋外広告物条例による禁止地域等の指定について・平成15年さいたま市告示第125号)。

電柱への貼り紙は、市内のどこでも出せません

もう一段あります。条例5条は、4条5号に当たらない電柱・街灯柱についても、「市長が指定する道路及びこれに面する場所に存するもの」には、はり紙・はり札・広告旗・立看板を出してはならないと定めています。

そして同じ告示が、その道路をこう指定しています。「国道及び県道の市内全区間並びに市道」。

市道まで入っているので、さいたま市内の道路に面した電柱・街灯柱に、募集の貼り紙やのぼりを出せる場所は事実上ありません。「交通量の少ない裏道なら」という逃げ道は条文の側に用意されていません。

自分の敷地なら出せます。ただし本数まで決まっています

ここからが実務です。条例7条2項は、次の広告物について3条(禁止地域)と6条(許可)を適用しないと定めています。

  • 自己の氏名、名称、店名若しくは商標又は自己の事業若しくは営業の内容を表示するため、自己の住所又は事業所、営業所若しくは作業場に表示する広告物で、規則で定める基準に適合するもの(7条2項1号)
  • 前号に掲げるもののほか、自己の管理する土地又は物件に管理上の必要により表示する広告物で、規則で定める基準に適合するもの(7条2項2号)

いわゆる自家広告物です。第1種低層住居専用地域に建つアパートでも、自分の敷地に自分の物件の募集を出すことは、この枠で成立します。

ただし「規則で定める基準に適合するもの」という条件が付いています。基準はさいたま市屋外広告物条例施行規則の別表第1(第4条関係)にあり、禁止地域等の中では次のとおりです(令和8年3月27日さいたま市規則第42号による改正後)。

  • 広告旗(のぼり):表示面は縦1.8メートル以下かつ横0.6メートル以下、高さ3メートル以下、道路上に突き出していないこと
  • 建造物から独立した広告(自立看板):表示面積5平方メートル以下、上端の高さは地上から4メートル以下、自己の住所、事業所等における設置個数は2個以下、道路上に突き出していないこと
  • はり紙、はり札及び立看板:表示面積1平方メートル以下、道路上に突き出していないこと
  • 置き看板:表示面積1平方メートル以下、上端の高さは地上から1メートル以下、道路上に突き出していないこと
  • 壁面利用広告:総表示面積5平方メートル以下、上端の高さは軒高以下

のぼりの規格は、市販のスリムタイプ(45センチ×180センチ)が入り、レギュラーサイズ(60センチ×180センチ)がちょうど上限です。そして自立看板は2個まで。敷地の角に3本並べる、という見せ方は、この基準のほうで止まります。

注意すべきは、7条2項が外しているのは3条と6条だけだという点です。4条(禁止物件)と5条(電柱等へのはり紙)は外れません。自分のアパートの広告であっても、前の道の電柱や街路樹に付ければ違反になります。

駅からの案内看板は、なぜ道に出せないのですか?

道路に物を置いて継続して使うには、道路管理者の許可が要ります。道路法32条1項は、許可の要る工作物を列挙しており、その1号に「電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物」と広告塔が入っています。

さいたま市には、この占用許可の前に踏む段があります。市が公開している「道路上に突き出す広告物(公共を除く)における屋外広告物条例適用確認票」(令和7年7月1日版・都市計画指導課)は、こう整理しています。

  • 条例の適用があり、許可が必要な場合、自家広告物かどうかを確認する
  • 自家広告物であれば、都市計画指導課の確認印を受けて、道路占用許可申請時に土木管理課へ提出する
  • 一般広告物であれば「屋外広告物条例で許可できないため、道路占用許可は出ない」
  • 確認印が無い確認票では、道路占用許可をすることができない

ここが答えです。自分の建物から道路側へ突き出す看板には道があります。一方、駅から現地までの途中に矢印の板を置くのは、自分の敷地でも建物でもない場所に出す一般広告物なので、入口の段で閉じます。

出しっぱなしにすると、別の条文が動きます

見落とされやすいのが条例19条1項です。

「広告物を表示し、又は掲出物件を設置する者は、許可の期間が満了したとき、若しくは次条の規定により許可が取り消されたとき、又は広告物の表示若しくは掲出物件の設置が必要でなくなったときは、5日以内に当該広告物又は掲出物件を除却しなければならない」

3つ目の引き金に「許可」という言葉がありません。同じ条の2項が「この条例の規定による許可に係る広告物」と限定しているのと対照的です。つまり、入居が決まってのぼりが要らなくなった日から5日が数え始められます。違反には30万円以下の罰金の定めがあります(条例35条2号)。

3条から6条までに違反して広告物を表示した場合は50万円以下の罰金です(条例34条1号)。なお、屋外広告物法34条は「3条から5条まで及び7条1項の規定に基づく条例には、罰金又は過料のみを科する規定を設けることができる」と限っています。広告物そのものの規制で身柄に及ぶ刑は条例に書けない仕組みです。

違反した貼り紙やのぼりは、行政が持っていくこともできます。法7条4項は、はり紙・はり札等・広告旗・立看板等について、知事(指定都市では市長)が自ら除却できると定めています。しかも法8条1項ただし書により、はり紙は保管しなくてよいとされています。回収して返す手続きすら省ける扱いです。除却や保管に要した費用は、法8条6項で所有者に負担させることができます。

自分の土地の中に出す場合と道路や電柱に出す場合の扱いの違いを並べた図

都合の悪いことも書いておきます

  • 基準を守った自家広告物でも、集客に効くとは限りません。1平方メートルの置き看板とのぼり2本で、駅から離れた物件の反響が変わるかは別問題です。上限いっぱいまで出すより、現地に着いてから部屋にたどり着けるかを整えるほうが効く場面のほうが多いと感じています。
  • ここに書いた数字はさいたま市のものです。川口市・越谷市・熊谷市・杉戸町、あるいは埼玉県屋外広告物条例の区域では、禁止地域の指定も自家広告物の基準も違います。物件の所在地の担当課で確認してください。
  • 用途地域と風致地区は、自分で調べられます。市の都市計画情報の地図で番地から引けます。第1種・第2種低層住居専用地域だった場合は、7条2項の枠の中で考えることになります。
  • 政治活動や選挙運動の掲示物とは扱いが違います。屋外広告物法29条は、この法律と条例の適用にあたって国民の政治活動の自由その他の基本的人権を不当に侵害しないよう留意しなければならないと定めており、条例7条1項2号も公職選挙法による選挙運動のポスター等を適用除外にしています。近所の電柱に選挙のポスターが貼られているのを見て「うちも大丈夫だろう」と考えるのは、別の話を見ています。

今日できること

  1. 敷地に出ているのぼりと看板を数える。自立看板が3個以上あれば、まず1つ減らす
  2. のぼりの実寸を測る。横が0.6メートルを超えていないか、全体の高さが3メートルを超えていないか
  3. 道路の上にはみ出していないか、真下から見上げて確かめる。基準はどの種類でも「道路上に突き出していないこと」で共通しています
  4. 前の道の電柱に、過去に貼った紙が残っていないか歩いて確認する
  5. 決まった部屋ののぼりを、その日のうちにしまう。条文上の期限は5日です

現地に着いてからの見え方は玄関まわりで決まる第一印象|築古アパートのオーナーが郵便受け・照明・室番号を直す順番に、看板ではなく募集図面の側で直せることは募集図面(マイソク)でオーナーが必ず直させる7つの欄|築古アパートで候補から外れないためににまとめています。案内をどれだけ整えても内見に至らないときは、築古物件で「鍵が現地対応でない」ことがどれだけ機会損失になるかの側に原因があることもあります。

ここに書いたのは条例・規則・告示と市が公開している資料から確認できる範囲です。個別の物件で出せるかどうかは、用途地域・道路の種類・広告物の大きさで変わります。設置の前に、さいたま市の北部または南部都市計画指導課に確認してください。

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