玄関まわりで決まる第一印象|築古アパートのオーナーが郵便受け・照明・室番号を直す順番

内見の集合場所は、ほとんどの場合アパートの前です。案内の担当者が鍵を開けるまでの30秒から1分、内見者は立ったまま周りを見ています。目に入るのは、郵便受けの投入口からはみ出したチラシ、テープで留められた「〇〇様」の紙、切れたままの外灯、剥がれかけた号室のシール。部屋の中を1分も見ないうちに、印象の半分はここで決まっています。

結論からお伝えすると、玄関まわりは「きれいにする」より先に「規格に合っているか」を見てください。郵便受けには、法律と省令で決まった最低の大きさと構造があります。多くの築古アパートの受箱は、その線を下回ったまま何十年も使われています。手を付ける順番は、郵便受け → 照明 → 表示の3つです。

玄関まわりで先に見る5点。郵便受けの差入口は縦2cm横16cm以上、厚さは12cm以上、取出口に施錠できること、室番号の表示、夕方の暗がりの確認。

郵便受けには、法令で決まった最低規格がある

知られていませんが、郵便受箱は「好きな箱を付けておけばいい」ものではありません。郵便法第43条に、こうあります。

「階数が三以上であり、かつ、その全部又は一部を住宅、事務所又は事業所の用に供する建築物で総務省令で定めるものには、総務省令の定めるところにより、その建築物の出入口又はその付近に郵便受箱を設置するものとする」(郵便法第43条)

そして規格が、郵便法施行規則第11条にそのまま書いてあります。

  • 容積:長さ30cm以上、幅20cm以上、厚さ12cm以上であること
  • 差入口縦2cm以上、横16cm以上の大きさであること
  • 構造・材質:配達された郵便物を安全に保護するもので、かつ郵便物の取出口に施錠することができるものであること
  • 設置場所:郵便物の配達に支障のない場所であること
  • 表示:世帯主の氏名、事務所・事業所の名称又は室番号を適宜の箇所に明示したものであること
  • 2以上の住宅等が共同して使用するものでないこと

昭和築のアパートに付いている薄い受箱は、厚さ12cmと差入口の縦2cmで引っかかることがあります。実際に起きているのは、厚みのある封筒やカタログが入りきらず、口からはみ出したまま何日も残るという状態です。内見者は「盗られそう」「留守が丸わかり」と読みます。

2階建てのアパートは対象外。ただし物差しとしては使える

この設置義務がかかるのは、施行規則第10条で絞られています。住宅の出入口の全部が「直接地上に通ずる出入口のある階およびその直上階または直下階のいずれか一方の階」にのみあるものは、対象から外れます。1階と2階だけのアパートは、ここで外れます。管理者の事務所や受付があるものも外れます。

つまり3階建てで3階にも部屋があるアパートは、設置が義務。2階建ては義務ではありません。ただし義務がないことと、使いにくくてよいことは別です。国が「これ以下だと配達に支障が出る」と定めた線なので、2階建てでも交換の判断基準にそのまま使えます。

「表札を出さないと届かない」は、少し違う

入居者から「表札は出したくない」と言われて困る、という相談があります。ここは整理できます。

施行規則が求めているのは、受箱に「世帯主の氏名、事務所若しくは事業所の名称又は室番号」を明示することです。氏名か室番号の、どちらかで足ります。玄関ドアに名字を掲げることを求めた条文ではありません。

単身の入居者、特に女性の入居者にとって、氏名の掲示は防犯の話になります。オーナー側で室番号のプレートを統一して付けておけば、受箱の表示要件は満たしたうえで、入居者に氏名の掲示を強いずに済みます。数字のシールを貼り替えるだけの作業です。手書きの紙をテープで留めた状態は、内見の印象という意味でもいちばん損をします。

外灯が切れているのは、印象の問題だけでは済まないことがある

共用廊下や階段の照明は、切れたら替える。それだけの話に見えますが、建物の規模と造りによっては、法令が設置を求めている照明が混ざっていることがあります。

建築基準法施行令第126条の4は、一定の建築物の居室と「これらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路」に非常用の照明装置を設けなければならないと定めています。ただし書で除かれているのは「一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸」で、除かれているのは住戸です。共用の廊下や階段は、この文言に入っていません。

一方で条文の本文は、「採光上有効に直接外気に開放された通路」を除くとしています。屋外に開いた外廊下・外階段のアパートと、内側に階段室があるアパートとで、話が変わってきます。

自分の建物がどれに当たるかは、階数・延べ面積・通路の造りで決まります。ここは記事で判定できる話ではありません。3階建て以上の物件、あるいは内階段の物件をお持ちなら、次に建築士や特定行政庁と話す機会に「非常用照明の対象になっているか」を一度聞いておいてください。切れたままの照明が、印象の問題ではなく法令の問題だった、という順番で気づくのがいちばん困ります。

先に替えるなら、明るさより「位置」

実務として効くのは、ワット数を上げることより、光が当たっていない場所を1つ潰すことです。内見が夕方になる時期は、次の3か所だけ夕方に見に行ってください。

  1. 郵便受けの前:手元が暗いと、それだけで管理されていない建物に見えます
  2. 階段の踏面:段鼻が見えないと、内見者は下を向いたまま上がります。建物を見てもらえません
  3. 各戸の玄関ドアの前:鍵穴に鍵を差す高さに光が届いているか
郵便法施行規則第11条が定める郵便受箱の規格。容積は長さ30cm・幅20cm・厚さ12cm以上、差入口は縦2cm横16cm以上、取出口に施錠、氏名または室番号の明示、共同使用の禁止。

手を付ける順番はどうやって決めるか

玄関まわりは細かい項目が多く、全部やろうとすると止まります。費用の安い順ではなく、内見者の目に入る秒数の長い順に並べてください。

  1. 郵便受けの中身を空にする(0円・その日にできる)。チラシがはみ出した状態は、空室であることを通行人にも知らせています
  2. 室番号のプレートを統一する(数百円〜・手書きの紙をやめる)
  3. 切れている電球を替える(夕方に現地で確認してから買う)
  4. 受箱そのものの交換を検討する(規格に届いていない場合)。ここは金額が出るので見積もりを取る段階です

1と2は、次の内見までに終わります。掃除の範囲をどこまでやるかは空室の掃除はどこまでやるかに、外階段のサビや手すりの点検は外階段のサビと手すりのガタつきはいつ直すかにまとめています。玄関まわりを直したら、募集写真も撮り直す番です。順番と枚数は募集写真は何枚・どの順番で載せるかに置いています。

内見に立ち会うかどうかで、この30秒を自分の目で見られるかが変わります。判断の基準は内見にオーナーは立ち会うべきかにあります。ゴミ置き場も同じ「案内の前に目に入る場所」で、対策は築古アパートのゴミ置き場対策にまとめました。

今日やることを1つだけ選ぶなら

物件に行って、郵便受けの差入口に定規を当ててください。縦2cm、横16cm。ここに届いていない受箱は、国が「配達に支障がある」と考えている大きさです。

印象の話は主観になりがちですが、この2つの数字は主観ではありません。届いていなければ交換の理由が1行で書けます。届いていれば、次は電球です。玄関まわりは、内見者が最初に見て、オーナーがいちばん見ていない場所です。

Follow me!