仲介会社に物件を覚えてもらうには|築古アパートのオーナーが渡す1枚と訪問の仕方

駅前の仲介店に菓子折りを持って行って、店長と15分話して帰ってきた。その2週間後、同じ店から入った問い合わせは0件。悪気があったわけではありません。店長は、接客するご本人ではなかったというだけです。

結論からお伝えすると、仲介会社に覚えてもらうのは「物件」ではなく「お客さんの前で即答できる状態」です。営業担当がカウンター越しに「この部屋、ペットは?」「今日鍵開けられますか?」と聞かれたときに、手元の1枚で答えられる。そこまで用意して初めて、候補に残ります。この記事では、渡す1枚の中身と、訪問の仕方を整理します。

なぜ賃貸は条件が流れてしまうのか

売買と賃貸では、書面の義務が違います。宅地建物取引業法第34条の2第1項は、媒介契約書の作成・交付についてこう定めています。

「宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約……を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。」

ここに書かれているのは「売買又は交換」だけで、貸借は入っていません。報酬に関する事項も、他社に重ねて依頼できるかどうかも、有効期間も、条文上は売買・交換の媒介について書面に残すことになっています。

もちろん、入居者への重要事項説明(第35条)は貸借にも適用されます。条文には「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方」と明記されています。入居者を守る書面はあるが、オーナーと仲介会社の間の取り決めを残す書面は、法律上は義務になっていない——ここが賃貸の実務の形を決めています。

だから条件は口頭で伝わり、担当者が代わると消えます。「たしか二人入居はダメだった気がします」で候補から外れる。これを止められるのは、オーナー側が書いて渡すことだけです。

仲介の店に渡す1枚に入れる6欄。鍵の所在と当日案内の可否、入居可能日、可否の線引き、申込書式と審査、初期費用の内訳、連絡先と返事ができる時間帯。

渡す1枚に入れる6つの欄

募集図面(マイソク)とは別に、営業担当が接客中に見る用の1枚を作ります。マイソクはお客さんに見せる紙、こちらは店の中で使う紙です。マイソクそのものの直し方は募集図面(マイソク)でオーナーが必ず直させる7つの欄にまとめています。

1. 鍵の所在と、今日案内できるか

いちばん聞かれて、いちばん答えられない欄です。現地キーボックスなら暗証番号の渡し方、店持ちならどの店に何本あるか、管理会社経由なら何時までに連絡すれば当日開くのか。「確認して折り返します」が発生した時点で、その日の案内には入りません。

2. 入居可能日と、原状回復の終わる日

工事中なら「◯月◯日から入居可、それ以前は現況で案内可」と書きます。「工事中」だけだと案内を止められます。

3. 可否の線引き

ペット・楽器・二人入居・ルームシェア・事務所使用・喫煙・高齢の方・外国籍の方・法人契約。「相談」と書くと、相談されずに外されます。条件付きで可なら、条件まで書いてください。「小型犬1匹まで可、敷金1か月追加」のように書けば、その場で提案してもらえます。

4. 申込書式と、審査の流れ

使う保証会社、申込書のひな形の入手先、審査に何日かかるか、必要書類は何か。ここが不明だと、営業担当は「話が早い他の部屋」を先に出します。

5. 初期費用の内訳

敷金・礼金・前家賃・日割り・保証料・鍵交換代・火災保険・清掃費。誰が負担するのかまで書きます。お客さんの前で総額を出せるかどうかで、その場の温度が変わります。

6. 連絡先と、返事ができる時間帯

携帯かメールか、何時まで出られるか、出られないときは誰に聞けばいいか。土日の夕方はいちばん問い合わせが来る時間ですが、いちばんつながらない時間でもあります。

訪問の段取り。平日の午前か14時前後に行き、実際に接客する担当者に会い、渡す紙とマイソクを人数分置いて10分で帰り、写真データの渡し方を添え、2週間後に一度だけ反響を聞く。

訪問はいつ、誰に、何を持って行くか

時間帯を外す

土日と、平日の17時以降は接客の時間です。行くなら平日の午前中か、14時前後。長居はしません。10分で帰るほうが次も会えます。

会うのは、実際に接客する人

店長に話を通すのは筋として正しいのですが、部屋を出すかどうかを決めているのは、その日カウンターに座っている担当者です。紙を人数分置いてくるほうが、1人に長く話すより届きます。

持って行くのは3点だけ

  • 上の6欄を入れた1枚(人数分)
  • マイソク(人数分)
  • 写真データの渡し方を書いたメモ(ダウンロードのURLなど)

写真は、店側が自分のところの掲載に使い回せる形で渡すのが親切です。順番の決め方は募集写真は何枚・どの順番で載せるかを参照してください。

行ったあとに1回だけ連絡する

訪問から2週間ほど経ったら、「反響はいかがでしょうか」と1回だけ聞きます。毎週催促すると、扱いにくいオーナーとして記憶されます。覚えてもらいたいのは顔ではなく、部屋の条件です。

やってしまいがちな3つ

条件を口頭で変える

「まあ、礼金は無しでもいいですよ」を電話で言うと、その条件は言った相手の記憶にしか残りません。他の店には旧条件のまま出ています。変えたら、全社に同じ文面で一斉に送る。これだけで問い合わせの取りこぼしが減ります。

店ごとに違う条件を出す

親しい店にだけ良い条件を出すと、他店から見て「この物件は情報が信用できない」となります。お客さんは複数の店を回っています。

内見に毎回立ち会う

オーナーが同席したほうがいい場面と、いないほうが決まる場面があります。判断は内見にオーナーは立ち会うべきかに整理しました。案内のたびに現地で待っていると、営業担当は連れて行きにくくなります。

部屋の側が整っていることが前提

ここまでは伝え方の話です。伝えた先に見てもらう部屋が汚れていれば、次からは出してもらえません。空室の掃除をどこまでやるかは空室の掃除はどこまでやるかにまとめています。紙を配るのは、部屋の状態づくりが済んでからです。

今日やることを1つだけ選ぶなら

上の6欄を、A4の紙1枚に書き出してください。書けない欄が出てきたら、そこが仲介会社の側でも答えられていない欄です。訪問はそのあとで構いません。埋まっていない欄がある紙を配っても、聞き返される回数が増えるだけです。

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