内見にオーナーは立ち会うべきか|築古アパートで任せたほうが決まる場面と出たほうがいい場面
内見の時間に合わせてオーナーが現地へ行き、玄関で待っている。案内の営業と内見者が入ってきた瞬間、「この建物は昭和58年で、外壁は5年前に塗ったばかりで」と説明が始まる。内見者は「はい」「そうですか」と相づちを打ちながら、部屋を一周して3分で出ていった——現地に出たオーナーほど、この形になりやすいものです。
結論からお伝えすると、築古アパートの内見に、オーナーは原則として立ち会わないほうが決まります。理由は建物の説明が悪いからではなく、その場にいると内見者が本音を言えなくなり、案内した営業も条件の話を切り出せなくなるからです。ただし、立ち会ったほうがいい場面もはっきりあります。両方を分けて整理します。

なぜ立ち会わないほうが決まりやすいのか
内見の30分間に起きていることを分解すると、理由が見えてきます。
- 内見者が短所を口に出せなくなる/「思ったより古いね」「収納が少ない」は、所有者の前では言えません。言えないまま帰ると、検討は自宅に持ち帰られ、そこで消えます
- 営業がクロージングできない/「ここ、いま空いてるので早めに決めたほうがいいですよ」という一押しは、オーナーの前だとやりにくくなります
- 条件の相談が出てこない/礼金や入居日の相談は、本来その場で営業が持ち帰る話です。オーナーが目の前にいると、内見者は言い出せず、営業も振れません
- 滞在時間が短くなる/人の家を訪ねている感覚になるため、収納を開ける、水を出してみる、といった確認が省かれます
内見で決まる部屋は、たいてい内見者が長く居座って、勝手に生活を想像し始めた部屋です。オーナーの役目は、その想像の邪魔をしないことになります。
どんなときはオーナーが出たほうがいいですか?
次の4つは、出た価値が出る場面です。
- 条件に幅を持たせている部屋/DIY可やペット相談のように、「どこまでOKか」をその場で決められるのは所有者だけです。持ち帰りが1往復減ります
- 戸建・敷地の広い物件/庭のどこまでが借りる範囲か、駐車場は何台停まるか、隣地との境はどこか。図面に出ていない情報は、現地で口頭のほうが早いです
- 設備に癖がある物件/給湯器のリモコンの位置、古いガスコンロの点け方、雨のときだけ開けにくい窓。隠さずに先に言うほうが、入居後の連絡が減ります
- 法人契約や、建物の履歴を聞かれる相手/耐震や修繕の経緯を聞かれたとき、記録を持っているのはオーナーです
出るなら「最後の5分だけ」にする
立ち会うと決めた場合も、最初から張りつかないほうがうまくいきます。おすすめは、内見者が一通り見終わったころに顔を出し、聞かれたことにだけ答えて帰る形です。
- 案内の最初の10分は営業と内見者だけにする(車で待つ、外にいる)
- 入ったら自己紹介と「何かご質問あれば」の2つだけ
- 建物の自慢と、昔の入居者の話はしない
- 賃料の値引きをその場で即答しない。「持ち帰って回答します」で十分です
とくに最後の1つは効きます。その場で下げると、次の内見者にも同じ条件が前提になります。
自主管理で、自分が鍵を開けるしかない場合
自主管理の物件では、そもそもオーナーが行かないと部屋が開かない、ということがあります。この場合も考え方は同じで、「鍵を開ける人」と「案内する人」を分けるだけで、立ち会いに近い状態を避けられます。玄関を開けたら鍵を営業に預けて外に出る、または現地にキーボックスを付けて自分は行かない。どちらでも構いません。行かない選択を作っておくと、平日昼間の急な案内にも対応できるようになります。

立ち会わない代わりに、先に用意しておくもの
出ないと決めるなら、オーナーの仕事は当日ではなく前日までに終わらせておくものになります。
- 鍵をすぐ開けられる状態にする/鍵が事務所にしかない部屋は、案内の順番が後回しにされます。鍵が現地対応でないことの機会損失は、立ち会いの有無より大きい要素です
- 部屋の状態を作っておく/においと水回りは、説明で埋められません。内見前に落としておく場所を先に済ませます
- 物件メモを1枚渡しておく/設備の型番、ゴミ出しの曜日と置き場、駐車場の空き、ネット回線の状況、周辺の店。営業が説明できれば、オーナーが現地にいる必要はなくなります
- 掲載情報を先に直す/来る前に落ちている候補のほうが多いので、募集写真の枚数と順番のほうが先です
埼玉・千葉県西部・栃木県南部でも、繁忙期の土日は1組あたりの案内時間が短くなります。その短い時間を、オーナーの説明ではなく内見者の確認に使ってもらう。これが立ち会いを考えるときの基準です。
今日やることを1つだけ選ぶなら、次の内見で「立ち会う/立ち会わない」をあらかじめ決めて、管理会社か仲介会社に伝えてください。当日その場で決めるのがいちばん中途半端になります。


