蜂の巣は許可なしで落とせて、卵やひなのいる鳥の巣は落とせません|築古アパートのオーナーが分ける鳥獣保護法の線

結論からお伝えすると、蜂の巣は許可なしで落とせて、鳥の巣は落とせないことがあります。分かれ目は、鳥獣保護管理法2条1項の「鳥獣」の定義です。この法律が守っているのは鳥類または哺乳類に属する野生動物だけで、昆虫であるハチは1文字も入っていません。一方、ツバメもムクドリもハトも鳥類なので、そのまま入ります。

6月、入居者から電話が入る。「ベランダの上に大きい巣ができていて、羽音がすごい」。同じ週に、別の棟の外階段の裏にツバメが巣をかけたという連絡も来る。この2本の電話は、同じ「巣を取ってほしい」に見えて、動かせる範囲がまったく違います。

ハチと鳥で守る法律が違うことを5点にまとめた図解。鳥獣の定義・空の巣・卵・許可の申請先・市の費用負担

ハチの巣に、法律の許可は要りません

鳥獣保護管理法8条は「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等をしてはならない」と定めていますが、その入口の2条1項が「鳥獣」を鳥類または哺乳類に限っています。スズメバチもアシナガバチもミツバチも昆虫なので、この法律の対象外です。9条の許可も要りません。

要らないのは許可であって、安全ではありません。スズメバチの巣は、高所作業と刺傷の危険が同時に来る作業です。脚立の上で羽音に驚いて落ちる事故は毎年起きています。大家が自分で落として、たまたま通りかかった入居者が刺されたときの責任まで考えると、業者に頼むほうが安いという判断になります。

さいたま市は、場所によって市が費用を持ちます

さいたま市は、スズメバチの巣に限って、市の費用負担で委託業者が駆除します。ただし対象は「自己所有または賃貸の戸建て住宅及びその敷地内にできた巣」と「分譲または賃貸の集合住宅の専有部分、ベランダなどの専用使用部分にできた巣」です。

対象外も市がはっきり書いています。

  • 集合住宅の共用部分にできた巣(廊下・外壁・外階段・植栽など)
  • 専ら事業用など、生活の用に供されていない建物や場所にできた巣
  • 空き家、空き地、田畑、寺社、道路など、住居ではない建物や場所にできた巣

アパートのオーナーから見ると、線はベランダの内と外です。入居中の部屋のベランダにできた巣は市の制度で片付き、同じ建物の外壁や外階段の裏にできた巣は自費になります。申し込めるのはその住居に住んでいる入居者本人で、大家や近所の人からの依頼は受け付けていません。申込先は区役所のくらし応援室です(出典:さいたま市「スズメバチの巣について」)。スズメバチ以外のハチは対象外なので、まず種類の見分けから始まります。

この扱いは市町村ごとに違います。埼玉・千葉県西部・栃木県南部でも、駆除まで市がやる自治体、業者を紹介するだけの自治体、防護服を貸すだけの自治体に分かれます。物件のある市町村の環境課に、先に一度聞いておいてください。

鳥の巣は、中に何がいるかで変わります

ここが誤解されています。鳥獣保護管理法8条が禁じているのは「鳥獣の捕獲等」と「鳥類の卵の採取等」で、巣そのものは条文に出てきません。「捕獲等」は捕獲または殺傷、「採取等」は採取または損傷を指します(2条8項・8条)。

つまり、次のように分かれます。

  1. 卵もひなもいない空の巣…巣は「鳥獣」でも「卵」でもないので、8条には当たりません。撤去できます
  2. 卵がある巣…落とせば卵の損傷に当たります。9条1項の許可が要ります
  3. ひながいる巣…落とせばひなの捕獲または殺傷に当たります。同じく許可が要ります

許可を出すのは、原則として都道府県知事です(9条1項。環境大臣が指定する鳥獣保護区内など3つの場合だけ環境大臣)。目的は9条1項の「鳥獣の保護又は管理の目的」に当たるかどうかで見ます。法2条3項が「管理」を、生活環境の保全などの観点から生息数を適正な水準に減少させることと定義しているためです。

ハトのように糞害が続く鳥は、巣を作らせない側で手を打つほうが早く済みます。ネットやワイヤーで止まる場所をなくすのは、巣ができる前ならいつでもできます。できてしまってからでは、上の3つの分岐に入ります。

さいたま市がスズメバチの巣の費用を持つ場所と、大家の自費になる場所を左右で比べた図解

費用は誰が持つのか

民法606条1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」としています。ただし書きで、賃借人の責めに帰すべき事由による場合は除かれます。ベランダや外壁にできた巣は、ふつう入居者のせいではありません。建物の側の問題として、大家が動くのが原則です。

放っておくと611条1項が効いてきます。賃借物の一部が使用・収益できなくなり、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるときは、賃料はその部分の割合に応じて減額されます。ベランダが1か月使えなければ、理屈の上では減額の対象です。連絡を受けてから動くまでの日数が、そのまま効いてきます。

入居者が「自分で殺虫剤をまいた」と言ってきたときは、止めてください。中途半端に刺激した巣は攻撃性が上がり、作業の難度と費用が上がります。連絡だけもらう形にしておくのが結局は安く済みます。連絡の受け方はお知らせの投函を業者に頼むと、頼んだ側も郵便法に触れますで書いた1本化の考え方が使えます。

都合の悪いことも書いておきます

巣は、見つけたときにはもう大きくなっています。スズメバチは春に女王蜂が1匹で作り始め、夏に一気に大きくなります。4月から5月にかけての、まだ小さいうちに落とすのがいちばん安全で安いのですが、その時期は誰も見ていません。

だから、共用部の点検のついでに軒下と外階段の裏を見上げる習慣を作るしかありません。アパートの草刈り・ゴミ置き場・共用清掃は誰がやるかで決めた巡回の担当に、この1項目を足しておいてください。アパートの落ち葉と剪定枝は家庭ごみに出せないで書いたとおり、敷地の木を切りすぎない範囲で見通しを保つのも効きます。

今日やることを1つだけ選ぶなら

物件のある市町村の環境課に電話して、ハチの巣の駆除を市がやるのか、やるなら共用部は対象かを聞いてください。対象なら連絡先を控えておく。対象外なら、駆除業者を1社決めて連絡先を控えておく。どちらも、電話が来てから探すのでは間に合いません。

鳥の巣については、卵とひなの有無を確かめてから動くとだけ覚えておけば足ります。中にいるなら都道府県の担当課に相談してください。種類の判定や許可の要否は、県の自然環境課や市の環境課の判断になります。

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