自分の土地に自分の借地権を付けられるのは、誰かと一緒に持つときだけです|築古アパートのオーナーが読む借地借家法15条の自己借地権

結論からお伝えすると、自分の土地に自分の借地権を付けること(自己借地権)は、借地権を「誰かと一緒に持つ」ときに限って認められます。根拠は借地借家法15条1項です。自分ひとりで土地も借地権も持つ形は、この条文の外です。反対に、いったん付けた借地権の一部が地主(自分)に戻ってきても、ほかの人と一緒に持っている限り、借地権は消えません(15条2項)。

たとえば、こんな相談を考えてみます。親が持っている土地に、古いアパートを建て替える。費用は親と長男で半分ずつ出し、建物は2分の1ずつの共有で登記する。土地は親の名義のまま。このとき「建物の側に、土地を使う権利をきちんと書類で付けておけないか」というのが、自己借地権の出番です。

自己借地権は家族などと一緒に持つときだけ付けられ、ひとりでは付かず、一部が地主に戻っても残り、全部そろえば混同で消えることをまとめた図

原則として、自分の土地に自分の借地権は付けられません

借地権は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」です(借地借家法2条1号)。築古のアパートで多いのは賃借権のほうです。

  • 賃貸借は、民法601条で「当事者の一方」が「相手方」に物を使わせる約束として書かれています。自分ひとりでは、約束の相手がいません。
  • すでにある借地権が地主と同じ人にそろうと、原則として「混同」で消えます。賃借権なら民法520条、地上権なら民法179条1項です。

借地の上のアパートのオーナーが底地を買った場合の話は、借地のアパートで底地を買うと、借地権は消えますに書きました。この記事は、その裏側にある「消えない場合」と「最初から付けられる場合」の話です。

借地借家法15条1項は「他の者と共に有する」ときだけ認めています

条文はこうです。

借地借家法15条1項…借地権を設定する場合においては、他の者と共に有することとなるときに限り、借地権設定者が自らその借地権を有することを妨げない。

冒頭の例に当てはめると、次の形になります。

  1. 土地の持ち主は親。親が「借地権設定者」になります。
  2. 借地権を持つのは、親と長男の2人です。所有権以外の権利を数人で持つことを「準共有」といい、共有の規定が準用されます(民法264条)。
  3. 親は、地主でありながら、借地権の持ち主の1人にもなります。これが自己借地権です。

借地権の部分は、建物の共有と同じ考え方で整理できます。共有のアパートを誰の同意で貸せるかは、相続で共有になったアパートは、誰の同意で貸せるのかで民法252条から書いています。

土地も建物も自分ひとりのときは、付けられないのですか?

付けられません。15条1項の条件は「他の者と共に有することとなるとき」で、ひとりで持つ形は入っていません。

  • 土地=自分、建物=自分だけ → 15条1項の外です
  • 土地=自分、建物と借地権=自分と家族の共有 → 15条1項で付けられます
  • 土地=自分、建物と借地権=家族だけ → ふつうの借地です。自己借地権の話ではありません

「将来、建物だけ売るかもしれないから、今のうちに自分の借地権を付けておく」という使い方は、ひとりで持っている限り、この条文ではできません。

一部が地主に戻ってきても、借地権は消えません

15条2項…借地権が借地権設定者に帰した場合であっても、他の者と共にその借地権を有するときは、その借地権は、消滅しない。

たとえば、借地の上のアパートを兄弟2人で共有していて、地主が兄の持分(建物と借地権)を買い取ったとします。借地権の一部は地主のものになりましたが、弟と一緒に持っているので、借地権は残ります。

混同で消えるのは、借地権の全部が地主ひとりにそろったときです。「地主が一部を買ったら借地権は消える」と思い込んでいると、地代や更新の話を落とします。残った弟は、これまでどおり借地権者です。

借地権の全部が地主にそろうと混同で消え、一部だけ地主に戻ってほかの人と一緒に持つなら借地借家法15条2項で残ることを比べた図

借地権を付けておくと、何が変わるのですか?

いちばん大きいのは、土地だけが別の人に渡ったときです。

  • 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記した建物を持っていれば、第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。
  • 土地が相続や売却で別の人に渡っても、建物の側に「土地を使う権利」が残ります。
  • 借地権を付けずに家族で建てた場合、土地を使う根拠が書類に残っていないことがあります。土地が別の人に渡ったとき、話し合いの出発点がありません。

相続の場面で借地権がどう扱われるかは、借地のアパートを相続するのに、地主の承諾は要りませんにまとめています。

区分所有の建物でも、同じ考え方が使われます

1棟を部屋ごとに区分所有にして売る場合、土地を使う権利(敷地利用権)は、原則として部屋と切り離して処分できません(建物の区分所有等に関する法律22条1項。規約で別の定めをした場合を除く)。自己借地権は、土地の持ち主が借地権付きで部屋を売っていく場面でも使われる形です。築古のアパートを区分所有にして売るのは例外的ですが、条文の考え方は同じです。

古い借地にも当てはまりますか?

15条は、1992年8月1日に施行された借地借家法(平成3年法律第90号)で置かれた条文です。附則には、15条だけを外す経過措置は見当たりませんでした(附則4条は、施行前に生じた事項にも原則として適用するとしたうえで、旧法で生じた効力を妨げないと書いています)。

私が確かめた範囲では、施行より前に土地と借地権が1人にそろって消えた借地権がどう扱われるかは、条文だけでは決めきれませんでした。古い借地で持分の移動があった物件は、司法書士か弁護士に確かめてください。

都合の悪いことも書いておきます

  • 地代をいくらにするかで、税金の扱いが変わることがあります。家族の間で地代を取らない・極端に安くする場合の扱いは、一般的には税理士か税務署に確認してください。
  • 相続税で土地と借地権をどう評価するかも、この記事では判定しません。同じく税理士に確認してください。
  • 登記の入れ方は、司法書士に相談してください。借地権そのものを登記するか、建物の登記で対抗力を持たせるかで手続きが変わります。
  • 家族の共有は、のちに売るときに全員の足並みが要ります。自己借地権は「共有で持つ」ことが前提なので、共有の悩みもそのまま付いてきます。

今日やることを1つだけ選ぶなら

土地と建物の登記事項証明書を取り、土地の名義、建物の名義と持分、借地権の登記があるかどうかを1枚に並べてください。自己借地権が付けられる形か、もう付いているのか、それとも何も付いていないのかは、この3行で分かります。

出典

  • 借地借家法1条・2条・10条・15条・附則4条(e-Gov 法令API・2026年11月1日時点)
  • 民法179条・264条・520条・601条(e-Gov 法令API・2026年11月1日時点)
  • 建物の区分所有等に関する法律22条(e-Gov 法令API・2026年11月1日時点)

Follow me!