築古アパートの共用部の電気代が上がったとき、オーナーが確かめる順番

結論からお伝えすると、共用部の電気代や水道代が上がったときに最初にやることは、電力会社を切り替えることでも設備を入れ替えることでもありません。検針票を12か月分そろえて、横に並べることです。上がったのが「単価」なのか「使った量」なのかが分からないまま手を打つと、お金だけ出ていって、翌月の数字が戻りません。

6月の初め、通帳を記帳したオーナーさんが、共用部の電気の引き落とし額が前の月より増えていることに気づきます。心当たりはありません。空室は1部屋あるだけで、去年から設備も替えていない。様子を見ていたら、翌月も増えたままでした。ここで電力会社に電話をしても、たいてい話は前に進みません。手元に、比べられる数字がないからです。

共用部の光熱費を見直す順番を示した図。検針票を12か月そろえる、電気と水道を分ける、共用灯の点灯時間、器具と電球の種類、水道メーターのパイロット、気づいた人に聞く、の6項目。

請求額ではなく、検針票の「使用量」を見る

共用部の明細には、請求額のほかに使用量が載っています。電気ならキロワットアワー、水道なら立方メートルです。まずここだけを12か月分、紙か表計算に並べてください。

  • 使用量はほぼ同じなのに請求額だけ上がっている → 動いたのは単価。プランや燃料費の調整分を確認する話になります
  • 使用量そのものが増えている → 動いたのは建物側。現地を見に行く話になります
  • 電気は横ばいで水道だけ増えている → 後述の漏水の確認に進みます

この切り分けをしないまま「電気代が高いからLEDに替えよう」と動くと、原因が水道側だった場合に何も解決しません。順番を決めるための作業だと考えてください。

去年の同じ月と比べる

光熱費は季節で動きます。先月と今月を比べても、それが季節のせいなのか建物のせいなのか分かりません。去年の同じ月と比べると、余計な迷いが減ります。12か月分そろえてほしいのはそのためです。

電気が増えているなら、共用灯が何時間ついているかを確かめる

共用部で電気を使い続けているものは、外階段や外廊下の照明、玄関まわりの灯り、給水ポンプ、宅配ボックスがあればそれくらいです。このうち、設定ひとつで使用量が動くのが照明です。

タイマーで動いている物件なら、いつ点いていつ消えるかを実際に見に行ってください。日が長くなっても冬の設定のままになっていることがあります。センサーで点くタイプなら、点きっぱなしになっていることもあります。

内見に立ち会った仲介の担当者から「そういえば、ここの外廊下、昼間も点いてますよね」と言われて初めて気づく、ということもあります。毎日そこを通る人のほうが先に気づくので、入居者や巡回している人に一言聞いてみるのも早い方法です。

LEDに替えるという選択肢

点灯時間を短くしても足りない場合、器具や電球をLEDに替えるという選択肢があります。ただし、ここで注意していただきたいことが2つあります。

  1. 電球だけ替えられる器具と、器具ごと替えないといけない器具があります。古い蛍光灯の器具は、中の安定器の関係で電球だけの交換ができないことがあります。現地で型番を見ないと分かりません
  2. 効果は、いま何時間点いているかで変わります。もともと数時間しか点いていない物件で替えても、下がり方は小さくなります

費用と効果の比較は、器具の数と点灯時間が分からないと計算できません。金額は、数量の入った見積りを2〜3社から取って比べてください。「一式」としか書かれていない見積りは比べようがないので、器具の数と単価を分けて書いてもらうようお願いします。

水道の使用量が増えたときの確認手順の図。増えた月の特定、蛇口と散水栓を閉める、メーターのパイロットを見る、時間を置いて確認、指定工事店へ連絡、翌月の検針票で確認、の6段階。

水道が増えているとき、まず何を見ればいいのか

水道の使用量が増えているときは、使い方の問題より先に漏れていないかを疑ってください。共用部の水道は、掃除と散水くらいしか使い道がありません。にもかかわらず使用量が伸びているなら、どこかで水が流れ続けている可能性があります。

確かめ方は、道具がなくてもできます。

  1. 共用部の蛇口と散水栓をすべて閉める
  2. メーターボックスのふたを開け、パイロット(メーターの中にある小さな丸い部品)を見る
  3. 誰も水を使っていないのにパイロットが回っていたら、その先で水が流れている
  4. 判断がつかなければ、しばらく置いてもう一度見て、数字が進んでいるかを確かめる

回っていた場合は、自分で掘ったり壊したりせず、管理会社か水道の指定工事店に連絡してください。地中の配管なのか、屋外の蛇口のパッキンなのかで、やることも費用もまったく変わります。

なお、築年数が経った建物では、給排水の設備そのものが寿命に近づいていることもあります。点検の考え方は築古アパートのシロアリと給排水管はいつ点検するかにまとめています。天井や壁に染みが出ているなら、雨漏りの連絡が入ったときオーナーが最初にやることもあわせてご覧ください。

見直しても、収支が大きく変わるとは限りません

共用部の光熱費を見直しても、収支が大きく変わるとは限りません。もともとの金額が小さい物件では、手間のわりに戻りも小さくなります。

それでもこの作業をおすすめするのは、気づかないまま毎月出ていくお金がいちばん減らしにくいからです。手取りが思ったより残らない理由は、こうした「見ていない支出」に散らばっていることがあります。この考え方は満室なのにお金が残らない築古アパートで詳しく書きました。

また、暗い外廊下を明るくすれば、それは経費であると同時に募集の材料にもなります。空室が続いている物件なら、昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因と一緒に考えてみてください。

まとめ|今日やることを1つだけ選ぶなら

今日やることを1つだけ選ぶなら、共用部の検針票(または明細)を12か月分そろえて、使用量の欄だけを並べてください。そこから先の手は、その数字が決めてくれます。何も変わっていなければ「建物側の問題ではない」と分かるので、無駄にはなりません。

埼玉・千葉県西部・栃木県南部の築古物件でも、この並べる作業をしただけで、原因が単価側なのか建物側なのかがはっきりすることがあります。

なお、契約プランの変更や、漏水が疑われるときの工事の要否は、電力・ガス・水道の各事業者や指定工事店に確認してください。修繕費として処理するのか資本的支出になるのかといった税務の扱いは、一般的には工事の内容によって変わりますので、実際の判断は顧問の税理士にご相談ください。

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