アパートの水道管の凍結対策は11月までに決まる|築古アパートのオーナーが冬の前に回る5か所

1月の朝、空室のアパートの前を通ったら、外壁の下のほうが濡れて、その下の土だけ色が変わっていました。屋外の洗濯機用の水栓から、細く水が出続けています。閉栓しているはずの部屋です。凍って割れたのは、水道メーターより後ろの、建物側の配管でした。誰も住んでいないので、誰も気づかないまま何日か経っています。

結論からお伝えすると、水道管の凍結対策は、寒くなってから動くものではありません。11月までに保温材の状態を見て回り、必要な手当てを終えておく工事です。凍る当日にできることは、水を出しっぱなしにするくらいしかありません。そして埼玉の冬は、統計上、毎年きちんと氷点下になります。

「埼玉だから凍らない」は、数字で見ると成り立たない

気象庁のさいたま観測所の平年値(統計期間1991〜2020年)を見ると、こうなっています。

  • 1月の日最低気温の平年値はマイナス1.1度。2月はマイナス0.2度
  • 日最低気温が0度未満になる日(冬日)は、1月が21.3日、2月が15.3日、12月が11.9日
  • 年間の冬日は53.2日

1月は3日のうち2日が氷点下まで下がる、というのが平年の姿です。雪が降る年だけの話ではありません。しかも上の数字は気象台の百葉箱の中の気温で、北側の外壁に露出した金属管や、風の通る外廊下の水栓は、それより条件が悪くなります。

凍結防止は、法令上「給水装置の構造」の話になっている

ここは意外に知られていません。凍結対策は入居者の使い方の問題ではなく、まず給水装置の構造基準として書かれています。

水道法施行令6条1項は、給水装置の構造及び材質の基準を7つ挙げていて、その5号が「凍結、破壊、侵食等を防止するための適当な措置が講ぜられていること」です。給水装置とは、配水管から分岐して各戸の蛇口までつながっている管と器具のことで、水道メーターより先は建物の所有者のものです。

技術的な中身は「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」6条(耐寒に関する基準)にあります。

屋外で気温が著しく低下しやすい場所その他凍結のおそれのある場所に設置されている給水装置のうち(中略)耐寒性能試験により零下二〇度プラスマイナス二度の温度で一時間保持した後通水したとき、(中略)性能を有するものでなければならない。ただし、断熱材で被覆すること等により適切な凍結の防止のための措置が講じられているものにあつては、この限りでない。

読むべきはただし書きのほうです。マイナス20度で1時間もたせる器具に全部入れ替えるのが本筋ではなく、断熱材で被覆すれば基準を満たす、と省令自身が書いています。築古アパートで現実にやることは、この「被覆すること等」の側です。

そして水道法16条は、給水装置の構造及び材質が政令で定める基準に適合していないとき、水道事業者は供給規程の定めるところにより、給水契約の申込を拒み、または基準に適合させるまでの間、給水を停止することができると定めています。凍結防止措置は、そこまでつながっている基準です。

冬の前に見る5か所を並べた図。屋外の洗濯機用の水栓、給湯器まわりの配管、北側の外壁を走る露出配管、散水栓と立水栓、メーターボックスの中。露出と風と日陰と水が動かないことが重なる場所から見る。

冬の前に見て回る場所

凍るのは、①屋外に露出していて ②風が当たり ③日が当たらず ④水が動かない場所です。この4つが重なるところから順に見ます。

  1. 屋外の洗濯機置場の水栓。露出・風・不使用がそろいます。洗濯機置場が外にある部屋の扱いは洗濯機置場が外にある部屋はどう募集するかにまとめました
  2. 給湯器の周りの配管。とくに追い焚き配管と、給湯器から浴室へ回る立ち上がり
  3. 北側の外壁に沿った露出配管。保温材が紫外線で割れ、テープが外れて中の管が見えていることがあります
  4. 散水栓・立水栓。共用部の掃除用に付いているもので、冬は誰も使いません
  5. メーターボックスの中。ふたが割れていると外気がそのまま入ります

保温材は、劣化すると手で触っただけで粉のように崩れます。割れた保温材は、断熱していないのと同じどころか、水を吸って凍る芯になります。見るときは、上から巻いたテープの色ではなく、テープをめくった中身を見てください。

空室の凍結は、気づかれないぶんだけ被害が大きい

入居中の部屋なら、水が出なくなった時点で連絡が来ます。空室は来ません。ここが空室特有の危険です。

水道の使用を中止(閉栓)していても、止まっているのはメーターの位置での通水であって、建物側の配管に残っている水は残ります。残った水が凍って管が割れ、春に開栓した瞬間に噴き出す、という順番でも被害は出ます。長く空けるなら、水抜き栓があれば水を抜く、なければ指定給水装置工事事業者に相談するのが確実です。

割れた後の話は、2つの記事に分けて置いてあります。誰が直して誰が払うのかはメーターの前後で変わり、その線引きは敷地内の水道管は誰が直すのかに。下の階に水が回ってしまったときの責任下の階に水が漏れたときに書きました。失火責任法は水漏れには働きません。「うっかり」で免責になるのは火事だけです。

冬の前と凍ってからでできることを左右で比べた図。冬の前は保温材をめくって中を見て、割れた被覆を巻き直し、入居者に水抜きを伝えられる。凍ってからは熱湯をかけられず、タオルとぬるま湯で待つことになる。

入居者に何をどう伝えるか

凍結してから配る注意書きは間に合いません。入居中の部屋に伝えるなら11月です。伝えることは多くありません。

  • 年末年始などで長く留守にするときは、水を出し切っておく(水抜き栓がある物件はその使い方)
  • 凍って出なくなったとき、熱湯をかけない。急に温めると管や器具が割れます。タオルを巻いてぬるま湯を、が基本です
  • 出なくなったら、直そうとする前にまず連絡してもらう

連絡が来たあと、いつまでに直さなければならないかには法律上の期限があります。入居中の設備故障で動き出す3つの時計は入居中に設備が壊れたとき、どこまで急ぐのかに、給湯器が真冬に止まったときの切り分けは真冬に給湯器が止まったと連絡が来たらに分けてあります。

凍結して割れたら、入居者に請求できるのですか?

一律には決まりません。管や器具の劣化・構造が原因なら建物側の問題ですし、注意書きを渡していたのに長期不在で水を抜かなかったといった事情があれば、入居者側の責任が問われる余地があります。分かれ目になるのは「何を、いつ、どう伝えていたか」です。入居時の説明書と、11月に配ったお知らせの控えが残っているかどうかで話が変わります。個別の判断は、契約書の条項と状況を持って弁護士か保険会社に確認してください。

火災保険で「水道管凍結修理費用」を補償する特約が付いている契約もあります。証券を出して、特約の一覧を1度見ておく価値があります。付いていれば、割れた管の修理費が対象になることがあります。

今日やることを1つだけ選ぶなら

屋外の水栓と給湯器まわりの保温材を、テープをめくって中身まで見てください。崩れているところに印を付けて、9月から11月のあいだに巻き直します。夏のあいだは工事の日程も取りやすく、寒波が来てから電話が集中する時期とは事情が違います。

あわせて、給排水管そのものの点検時期は築古アパートのシロアリと給排水管はいつ点検するかにまとめてありますので、同じ日に回ると1回で済みます。

出典

  • 水道法(昭和32年法律第177号)16条/水道法施行令(昭和32年政令第336号)6条/給水装置の構造及び材質の基準に関する省令(平成9年厚生省令第14号)6条:e-Gov法令検索の現行条文(2026年8月30日確認)
  • 気象庁「さいたま(埼玉県)平年値(年・月ごとの値)」統計期間1991〜2020年(2026年8月30日確認)

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