耐用年数を過ぎた木造アパートの減価償却をどう考えるか|オーナー向け

結論からお伝えすると、法定の耐用年数を過ぎた木造アパートでも、減価償却は計上できます。ただし償却できる期間は短く見積もられるのが一般的で、その期間が終わった翌年から、家賃は変わっていないのに手元のお金だけが苦しくなることがあります。先に知っておきたいのは、いくら節税できるかではなく、償却がいつ終わるかのほうです。

2月の朝、確定申告の準備。テーブルに広げたのは、購入したときの売買契約書、固定資産税の納税通知書、それに通帳のコピー。税理士に一通り渡すと、契約書を1枚めくって聞かれます。「建物と土地、いくらで分けていますか」。その場で答えられずに持ち帰り、翌週にもう一度伺うことになる——ここでつまずくと、その年の申告だけでなく、そのあと数年の見通しまで宙に浮きます。

耐用年数を過ぎた木造アパートの減価償却で押さえる6点の一覧。建物と土地の按分、償却できる年数、建物と設備を分けるか、元金の返済は経費にならないこと、償却が終わる年、売却時に効いてくること。

減価償却は、そもそも何をしているのか

建物は年が経つほど価値が減っていく、という前提で、買ったときの金額を数年に分けて経費にしていく仕組みです。その年に現金が出ていかなくても経費になる、というのが特徴です。

ここで大事なのは、土地は償却しないという点です。土地は時の経過で減るものとは扱われません。だから、購入額のうちいくらが建物で、いくらが土地なのかという按分が、最初の分かれ道になります。

  • 売買契約書に建物価格が書かれている:それを使えることが多い形
  • 消費税額から逆算する:土地には消費税がかからないため
  • 固定資産税評価額の比で分ける:契約書に内訳が無い場合の考え方の一つ

どの方法をとるかで、その後の数年の経費がまるごと変わります。一般的にはこうした方法があるとされていますが、実際にどれを使うかは取得の経緯や資料の内容で変わりますので、必ず税理士にご確認ください。

耐用年数を過ぎた建物は、何年で償却するのか

中古で買った建物は、新築と同じ年数では償却しません。簡便法と呼ばれる考え方が使われることが一般的です。

  1. 法定耐用年数をすべて過ぎている場合:法定耐用年数×0.2。木造は22年とされているので、22×0.2=4.4となり、端数を切り捨てて4年という形になります
  2. 一部だけ経過している場合:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
  3. いずれも1年未満の端数は切り捨てるため、木造では最も短くて4年という形になります

築30年の木造なら、1番目にあたるので4年、という枠組みになります。ただし、これは制度の考え方であって、あなたの物件がその年数になるとは限りません。資産の区分の分け方や、取得したときの状況によって変わります。年数の決定と実際の計算は、必ず税理士にご確認ください。この記事で税額の試算はしません。

建物と設備を分けるかどうか

建物本体と、給排水や電気・ガスなどの附属設備では、耐用年数が違うとされています。分けて計上すると、はじめの数年の償却は大きくなりますが、その分だけ早く終わります。分けられるかどうかは、契約書や見積書に内訳があるかで変わります。ここも税理士の判断です。

なぜ償却が終わった年から苦しくなるのか

借入をして買っている場合、返済のうち元金の部分は経費になりません。経費になるのは利息の部分だけです。一方で減価償却は、現金が出ていかないのに経費になります。

つまり償却が続いているあいだは、「現金は出ないのに経費がある」元金の返済と、帳簿の上で相殺されるような形になります。ところが償却が終わると、この経費が消えます。家賃も返済額も変わっていないのに、帳簿の上の利益だけが増える。これがデッドクロスと呼ばれる状態です。

手元の現金と帳簿の数字がずれていく話は 満室なのにお金が残らない築古アパート にまとめています。償却が終わる年は、買った時点で分かります。分かっているものは、先に予定に入れておけます。

直した費用は、その年の経費になるのか

ここも分かれます。一般に、元の状態に戻す工事は修繕費、価値を高めたり使える期間を延ばしたりする工事は資本的支出として扱われるとされています。資本的支出になると、その年に全額を経費にはできず、資産として計上して償却していく形になります。

給湯器やエアコンの交換をどう扱うかは 給湯器とエアコンはいつ交換するか、外壁や屋根の工事をどこまでやるかは 外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるか が判断の材料になります。ただし、どちらに当たるかの線引きは工事の内容ごとに変わります。見積書を持って税理士にご相談ください。

減価償却が続いている間と終わったあとの比較図。続く間は現金が出ないのに経費になり元金返済と帳簿上で相殺される形で、木造の中古では数年で終わる。終わったあとはその経費が消え、家賃も返済額も変わらないのに帳簿の利益だけが増える。

売るときには、どう効いてくるのか

もう一つ、先に知っておきたい点があります。減価償却をした分だけ、帳簿の上での建物の価額は下がっていきます。そして売却したときの利益は、一般に、売った価格とその帳簿上の価額との差をもとに計算されるとされています。

言い換えると、償却で減らした分は、売るときに出てくる性質があります。「消えた」のではなく「先送りした」に近い。だから、償却の年数だけを見て買う・売るを決めるのは危ないところです。建て替えまで含めた判断は 築40年のアパートはリフォームか建て替えか が材料になります。売却時の税の計算は所有期間などでも変わりますので、売る前に税理士にご確認ください。

まとめ

耐用年数を過ぎた木造アパートの減価償却は、短く、そして早く終わります。大きな経費が数年で消えることを知らないまま買うと、あとから打ち手が残りません。埼玉・千葉県西部・栃木県南部では、築30年、40年を超えた木造アパートが今も普通に売買されています。買う前でも買ったあとでも、確かめておく価値のある部分です。

今日やることを1つだけ選ぶなら、売買契約書を出して、建物と土地の按分がどうなっているかを確認してください。建物価格が書いてあるか、消費税額が載っているか。それだけで、税理士に相談したときの話が一段速くなります。耐用年数の決定、按分の方法、修繕費と資本的支出の区分、売却時の課税は、いずれも個別の事情で変わります。必ず税理士にご確認ください。

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