アパートの工事で車を前の道路に止めるなら、駐車許可ではなく道路使用許可です|築古アパートのオーナーが業者に確かめること

結論からお伝えすると、アパートの工事で業者のトラックを前の道路に止めて資材を降ろしたり、道路で作業をしたりするなら、必要なのは「駐車許可」ではなく「道路使用許可」です。道路交通法77条1項1号は、道路で工事や作業をしようとする者に、所轄の警察署長の許可を受けるよう定めています。しかも申請できるのは工事を頼んだ大家だけでなく、工事の請負人もと条文に書かれています。だから大家がやることは、自分で申請することよりも、見積りの段階で「誰が、いつ、どこまで申請するのか」を業者に確かめておくことです。

たとえば、築35年の木造アパートで、退去後の1階の部屋の床と壁を張り替えるとします。前の道路は幅4メートルほどの市道で、敷地に車を入れる場所はありません。朝8時半、2トントラックが道路の端に寄せて止まり、ハザードを点けたまま職人が合板とクロスのロールを抱えて何往復もしている。そこへ宅配の車が来て、バックで引き返していった。——この光景のどこからが「許可の要る使い方」なのかを、条文で整理します。

道路を使う工事の前に業者に確かめる5点

駐車許可を取っておけば、止めてよいのではありませんか?

工事の場合は、そうなりません。駐車許可は道路交通法45条1項ただし書の制度で、駐車禁止の場所に、警察署長の許可を受けて止めるものです。埼玉県警察が公表している駐車許可の審査基準には、対象になる用務の条件として「道路使用許可対象行為を伴う用務ではないこと」が挙げられています。対象として例示されているのは訪問介護・訪問医療・貨物集配・引っ越しなどで、道路で工事や作業をする用務は、最初から77条の道路使用許可の側で扱うという線引きです。

同じページは、駐車許可の申請から許可証の受領まで半月以上かかるとも書いています。工事の直前に「とりあえず駐車許可を」と考えても、種類も時間も合いません。

誰が、どこに申請するのですか?

申請先は、工事をする場所を管轄する警察署です(77条1項)。申請書には、申請者の住所と氏名、道路使用の目的、場所または区間、期間、方法または形態、現場責任者の住所と氏名を書き、2通出します(道路交通法施行規則10条1項・2項)。埼玉県警察の案内では、あわせて位置図・見取り図・行為を説明する資料を各2部求めています。

  • 審査手数料は1申請2,500円。審査の手数料なので、不許可になっても返金されません(埼玉県警察)
  • 受付は平日の午前9時から午後4時15分まで。e-Govの電子申請でも出せます
  • 千葉県・栃木県の物件は、それぞれの県警の警察署が窓口で、手数料もその県の定めによります

現場責任者を書く欄があるとおり、実際に申請書を書けるのは工程と車の台数を知っている業者です。大家が確かめるのは、その手数料と手間が見積りに入っているかです。

足場や資材を道路に置くなら、もう1つ許可が要りますか?

要ることがあります。道路法32条1項は、道路に工作物や物件を設けて継続して道路を使う場合に、道路管理者の許可(道路占用許可)を求めています。何が対象かは道路法施行令7条にあり、4号に「工事用板囲、足場、詰所その他の工事用施設」、5号に「土石、竹木、瓦その他の工事用材料」が挙がっています。外壁塗装の足場が歩道や道路の上にはみ出す、合板を道路に仮置きする、といった場面です。

この2つは窓口が違いますが、道路交通法78条2項と道路法32条4項で、どちらかの窓口にまとめて出せるようになっています。足場の段取りは陸屋根の防水はいつやるか、歩道の縁石を下げる工事そのものは駐車場のために歩道を切り下げるなら、道路法24条の承認が先ですに書いています。

5分で荷物を降ろすだけなら、許可は要りませんか?

「駐車」かどうかと、「道路で作業をしている」かどうかは別の話です。道路交通法2条1項18号は、貨物の積卸しのための停止で5分を超えないものを「駐車」から外しています。一方で77条は、駐車かどうかではなく、道路での工事・作業という行為に許可を求めています。埼玉県警察の案内も、1号許可の例に「搬出入作業」を挙げています。どこからが作業に当たるかは場所と方法で変わるので、迷う使い方をするなら、所轄の警察署の交通課に事前に聞くのが確実です。

許可を取らずに作業すると、どうなりますか?

77条1項に違反した者は、3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金です(119条2項7号)。業者の従業員が違反した場合は、その業者にも罰金刑が科されます(123条)。許可に付いた条件(時間帯や誘導員の配置など)に違反した場合も同じ罰則です(119条2項8号)。許可の期間が終わったら道路を元に戻す義務があり(77条7項)、違反には5万円以下の罰金があります(120条2項5号)。

罰則の相手は主に作業をした側ですが、道をふさがれて困るのは入居者と近所の方で、苦情が来るのは大家です。前の道路をめぐるもめごとは、アパートの無断駐車と放置自転車をどう止めるかで整理した「道路」の定義ともつながります。

駐車許可と道路使用許可のちがい

都合の悪いことも書いておきます

  • 許可は審査で決まり、不許可になることもあります。77条2項は、交通の妨害のおそれがないときや、条件を付ければおそれがなくなるときに許可するとしています。狭い道ほど、時間帯の制限や誘導員といった条件が付きやすくなります
  • 許可があっても、近所の了解を取ったことにはなりません。音や車の出入りは、許可とは別に事前の挨拶が要ります
  • 申請から許可までの日数は、道路使用許可の案内には書かれていません。工程表を組む前に、警察署に聞いておく必要があります

今日やることを1つだけ選ぶなら

次に予定している工事の見積書を開き、「道路使用許可の申請者」と「申請の手数料」がどこに入っているかを業者に聞いてください。答えが「止めてすぐ降ろすだけなので要りません」なら、どの時間に何台、何分止めるのかまで聞きます。それが言えない業者の工程は、当日の道路でもめます。

出典

  • 道路交通法2条1項18号・45条1項・77条・78条・119条2項・120条2項・123条、道路交通法施行規則10条(e-Gov 法令検索・2026年10月14日時点)
  • 道路法32条、道路法施行令7条(e-Gov 法令検索・2026年10月14日時点)
  • 埼玉県警察「道路使用許可に関する申請手続」「駐車許可に関する申請手続」(2025年12月25日更新・2026年10月14日閲覧)

Follow me!