退去のあと次の募集まで何日かかっているか|築古アパートの空室日数の数え方
結論からお伝えすると、「アパートの空室期間は平均何日か」を調べても、打ち手は出てきません。必要なのは平均ではなく、自分の物件で退去日・原状回復の完了日・募集開始日・申込日・契約日の5つを記録して、どの区間で日数が溶けているかを見ることです。区間ごとに、止めている相手も、直せる方法も違います。
3月末に退去。鍵が返ってきて、部屋の写真を撮って、それで一区切りついた気になる。7月のカレンダーを見て「あれ、あの部屋まだ空いてるな」と気づく。手帳をめくっても、書いてあるのは「3/28 退去」の一行だけ。原状回復がいつ終わったのか、いつからポータルサイトに出ていたのかが、どこにも残っていません。仲介に電話すると「募集、5月の頭からですね」と返ってくる。1か月以上、誰の手元でもない時間が過ぎていたことが、そこで初めて分かります。
なぜ「平均何日」を調べても意味がないのか
平均の数字には、次のものが全部混ざっています。
- 都心の新築ワンルームと、地方の築45年の2DK
- 管理会社が入っている物件と、自主管理の物件
- 原状回復をすぐ着工できたケースと、業者が3週間先まで埋まっていたケース
- そもそも「空室期間」の数え方が調査ごとに違うこと
混ぜたものの真ん中を見ても、自分の部屋がどこで止まっているかは分かりません。比べる相手は他人ではなく、去年の自分の物件です。

記録する5つの日付
部屋ごとに、次を1行で書きます。エクセルでも手帳でも構いません。
- 退去日:鍵が返ってきた日。契約上の解約日とずれることがあるので、実際に部屋が空いた日を書きます
- 原状回復の完了日:工事が終わって、貸せる状態になった日
- 募集開始日:ポータルサイトに掲載された日。仲介に依頼した日ではありません。ここを取り違えると、いちばん長い区間が見えなくなります
- 申込日:入居申込書を受け取った日
- 契約日:契約を締結した日。あわせて家賃の発生日も書いておくと、収支と突き合わせられます
この5つがあれば、区間が4つできます。どこが長いかを見るのが目的なので、日付は1日ずれていても構いません。始めることのほうが大事です。
日数は、どの区間で溶けているか
区間1:退去 → 原状回復の完了
ここが長いときの原因は、たいてい工事そのものではなく手配です。退去の連絡が入ってから業者に声をかけていると、業者の予定が埋まっていた分だけ後ろにずれます。
- 解約の通知を受けた時点で、立会いと工事の日を仮押さえしているか
- 見積りを待つあいだ、部屋は止まっていないか
- 設備の交換が入る場合、機器の手配に時間がかかっていないか
量産クロスの施工は、条件の良い空室で1日50〜80㎡が一つの目安です。部屋の壁と天井の数量が分かれば、実作業に何日かかるのかは概算できます。それより長くかかっているなら、伸びているのは工事ではなく待ち時間です。
区間2:原状回復の完了 → 募集開始
ここがいちばん見落とされます。部屋は貸せる状態なのに、写真がない、条件が決まっていない、掲載の依頼が出ていない。誰も困っていないので、誰も急ぎません。
そもそも工事の完了を待たずに募集を出す選択もあります。「工事中」「◯月中旬入居可」で掲載しておけば、区間1と区間2を重ねられます。
区間3:募集開始 → 申込
ここが長いときだけが、いわゆる「決まらない」状態です。掲載されているのに反響がないのか、内見はあるのに決まらないのかで、原因が分かれます。ここを分けずに家賃を下げると、下げなくてよかった部屋の家賃まで下がります。順番は 家賃を下げる前に試す4つの手 にまとめています。それでも動かないときの切り分けは 昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因 です。
区間4:申込 → 契約・入居
短いように見えて、審査、書類のやり取り、入居日の調整で日が過ぎます。申込が入ってから安心してしまうと、ここで数週間が乗ります。

集計してみると、何が見えるのか
1年分を並べると、区間ごとの合計が出ます。仮に4部屋の退去があって、区間2(貸せる状態なのに募集が出ていない期間)の合計が60日だったとします。家賃が月6万円なら、6万円÷30日×60日で12万円です。この金額は、家賃を下げなくても、工事をしなくても取り戻せる部分です。
数え方の注意を3つ。
- 部屋ごとに数える。棟でまとめると、どの部屋が足を引っ張っているか分からなくなります
- 意図して空けた期間は別扱いにする。建て替えの検討中、大きな工事の予定がある、といった期間を混ぜると数字が濁ります
- 数え始めた最初の1年は、比べる相手がいません。それでも記録は残ります。2年目から効きます
家賃が入っているのに手元に残らない、という感覚があるなら、空室日数と一緒に 満室なのにお金が残らない築古アパート の項目も並べて見てください。空いている日数と、埋まっているのに出ていくお金は、別々に効いてきます。
記録しても縮まらないこと
都合の悪い話も書いておきます。
- 数えるだけでは1日も縮みません。区間が分かってから、どこに手を打つかを決めて初めて動きます
- 区間3が長い理由は、記録からは分かりません。反響数や内見数は仲介に聞かないと出てきません
- 季節の影響を外せません。1〜3月に空いた部屋と、8月に空いた部屋を同じ土俵で比べると誤解します。比べるなら同じ時期どうしです
まとめ
空室期間の平均を検索しても、自分の物件の答えは出てきません。出てくるのは、自分で数えた4つの区間だけです。埼玉・千葉県西部・栃木県南部のように、繁忙期と閑散期の差がはっきり出る地域では、いつ空いたかで結果が変わります。だからこそ、自分の記録がいちばん近い資料になります。
今日やることを1つだけ選ぶなら、いま空いている部屋の「退去日」と「実際に掲載された日」の2つだけを書き出してください。その間が何日あったかで、次に手を入れる場所が決まります。契約や入居日の扱い、原状回復の負担区分の判断については、宅建業者などの専門家にご確認ください。


