アパートの共用廊下に非常用照明は要るのか|築古アパートのオーナーが外廊下と階数で分ける順番

結論からお伝えすると、共用廊下や階段に非常用照明が要るかどうかは「共同住宅だから」では決まりません。決め手は、その通路が外気に開放されているか、そして建物の階数と延べ面積です。条文は住戸を名指しで外していますが、共用部は外していません。外れる理由が別のところに書かれています。

外階段を上がって、開放廊下に玄関ドアが3枚並んでいる2階建てのアパート。廊下の天井には、四角い照明器具が1つだけ。夜になると、その1つが廊下全体を照らしています。この器具が切れたとき、普通の器具に替えていいのか——答えは条文の本文にあるカッコ書きに書かれています。

共用部の非常用照明が要るかを分ける4点の図。用途と規模、通路が外気に開放されているか、ただし書が外すのは住戸だけであること、窓のない居室があるかどうか。

非常用照明の設置を定めているのは、建築基準法施行令126条の4です

条文はこう始まります。

法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物の居室、階数が三以上で延べ面積が五百平方メートルを超える建築物の居室、第百十六条の二第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室又は延べ面積が千平方メートルを超える建築物の居室及びこれらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。)並びにこれらに類する建築物の部分で照明装置の設置を通常要する部分には、非常用の照明装置を設けなければならない。

対象になる居室は4つです。整理するとこうなります。

  • 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までの特殊建築物の居室(共同住宅は(二)項に入ります
  • 階数が3以上で、延べ面積が500㎡を超える建築物の居室
  • 施行令116条の2第1項1号に該当する窓のない居室
  • 延べ面積が1,000㎡を超える建築物の居室

そして、これらの居室から地上に通ずる廊下・階段その他の通路も対象に含まれます。ここが共用部の話です。

ただし書が外しているのは「住戸」だけです

126条の4には、4つのただし書があります。1号がこれです。

一 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸

外れているのは住戸です。共用廊下も共用階段も、この号には書かれていません。「アパートだから非常用照明は関係ない」という言い方は、条文の読み方としては正確ではありません。住戸の中の話と、住戸の外の話は、別々に判断する必要があります。

では共用部はどこで外れるのですか

本文のカッコ書きです。「採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。」——この一文が、外廊下・外階段のアパートを対象から外しています。屋根と手すりだけで、横が外に開いている廊下。そこから続く外階段。これが「直接外気に開放された通路」に当たるかどうかが分かれ目です。

逆に言えば、両側を壁で囲まれた屋内の廊下や、建物の中に納まった階段室になっている築古アパートは、ここで外れません。そのときは、上に挙げた4つの居室のどれかに当たるかを見ることになります。共同住宅は(二)項の特殊建築物なので、1つ目に当たります。

階数3以上・延べ500㎡超という数字は、居室のほうの条件です

読み間違えやすいのがここです。「階数が三以上で延べ面積が五百平方メートルを超える建築物の居室」は、特殊建築物ではない建物の居室を対象に取り込むための条件で、共同住宅の場合はそもそも1つ目の「特殊建築物の居室」に当たります。2階建てだから対象外、という読み方はできません。

もう1つ、避難施設等の規定には施行令117条という「適用の範囲」の条文があり、「階数が三以上である建築物」などに限って適用すると定めています。ただしこれは非常用照明には及びません。126条の4第2項は「第百十七条第二項各号に掲げる建築物の部分は」と、117条の2項の各号だけを引いています。1項の適用範囲は引いていません。非常用照明の適用範囲は、126条の4の本文が自分で書き切っているという構造です。

窓のない居室は、住戸の外にもあります

3つ目の対象「施行令116条の2第1項1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室」は、採光に有効な部分の面積の合計が、その居室の床面積の20分の1未満の部屋を指します。

住戸の中の部屋であれば、ただし書1号で外れます。外れないのは、住戸ではない居室です。管理人室、集会室、住み込みの事務室——共用部にこうした部屋を持っている築古アパートでは、窓の大きさを一度測っておく価値があります。

そして、この20分の1は工事で動く数字です。押入れを潰して部屋に取り込めば床面積(分母)が増えます。物置を作るために窓を塞げば、有効な採光面積(分子)が減ります。募集の見せ方として押入れを触る話は収納が少ない部屋はどう募集するかに書きましたが、採光の計算に触る工事は、内装ではなく建物の性能に触る工事です。判定は建築士か自治体の建築指導課に渡してください。

付けるとしたら、どういう器具になりますか

構造は施行令126条の5が定めています。1号イがこれです。

イ 照明は、直接照明とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。

あわせてハで予備電源を設けること、ロとニで国土交通大臣が定めた構造方法によることが求められています。停電したときに自動で点いて、避難する間だけ床を1ルクス以上で照らす。普段の明るさを確保するための器具ではありません。光源の種類ごとの割増しや点灯を続ける時間は大臣が定める告示の側にあるので、機種の選定は電気工事の担当者に渡してください。

器具そのものを付けるかどうかという室内側の話は照明器具は付けるか、入居者に任せるかに、玄関まわりや外灯の話は玄関まわりで決まる第一印象にまとめています。

非常用照明と誘導灯を比べた図。非常用照明は建築基準法施行令126条の4で床面1ルクス以上、外気に開放された通路は外れる。誘導灯は消防法施行令26条で共同住宅は地階と無窓階と11階以上。

非常用照明と誘導灯は、別の法律の設備です

緑色に光っている「非常口」の表示は誘導灯で、こちらは消防法の側です。消防法施行令26条1項1号・2号は、避難口誘導灯と通路誘導灯の設置対象を用途ごとに分けており、共同住宅(別表第一(五)項ロ)については「地階、無窓階及び十一階以上の部分」と書いています。

つまりふつうの2階建て・3階建てのアパートは、誘導灯の設置対象からは外れます。一方、同条1項4号の誘導標識は「別表第一(一)項から(十六)項まで」で、対象がぐっと広くなります。ただし26条1項には「避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない」というただし書があり、除外の中身は総務省令の側です。建物ごとの要否は所轄の消防署に確認してください。

定期報告の対象外なら、設置しなくていいのですか

違います。建築基準法12条1項の定期報告は、政令で定める建築物と、それ以外の特定建築物のうち特定行政庁が指定するものが対象です。小規模な共同住宅は指定から外れている自治体が多く、報告を求められないことがあります。

ただし「報告しなくてよい」と「設置しなくてよい」は別の話です。設置の要否は126条の4が決めていて、報告の要否は12条が決めています。片方が外れても、もう片方は外れません。

今日やることを1つだけ選ぶなら

自分のアパートの廊下と階段が、外に開いているか閉じているかを見てきてください。横が外に開いていて、雨の日に手すりが濡れるような廊下なら、126条の4本文のカッコ書きの側にいます。両側が壁で、日中でも照明を点けないと暗いなら、閉じている側です。

閉じているほうだった場合に用意しておくものは3つです。①建物の階数と延べ面積が分かる書類(検査済証・確認済証・図面)②共用部に住戸ではない部屋があるかどうか③いま付いている器具に予備電源が入っているかどうか。この3つを持って建築士に相談すると、話が1回で終わります。図面や検査済証が手元にない場合の探し方は管理会社を変更するときの引き継ぎ書類に一覧を載せています。

外階段そのものの傷みが気になっているなら、外階段のサビと手すりのガタつきはいつ直すかを先に読んでください。この記事は法令の枠組みの話で、建物ごとの判定はしていません。耐震・防火・避難に関わる判断は、建築士と特定行政庁、消防設備は所轄消防署に渡してください。

※本文で引用した条文は、2026年8月20日にe-Gov法令検索で現行条文を確認したものです。

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