昭和のアパートで分電盤と漏電をいつ点検するか|オーナーが見る場所と呼ぶ相手

結論からお伝えすると、分電盤と漏電については、オーナーがやることは「見る」と「呼ぶ」の2つだけです。カバーを外す、配線に触れる、ブレーカーの中身を確かめる——これらはオーナーの仕事ではありません。見るのは外から分かるサインだけにして、1つでも当たったら電気工事店か電力会社に連絡してください。

7月の夕方、入居者から管理会社に電話が入ります。「ドライヤーと電子レンジを一緒に使うと、部屋が真っ暗になるんです」。ブレーカーを上げれば戻るので、そのときは様子見になりました。ところが翌週、同じ建物の別の部屋からも似た連絡が入ります。1部屋だけなら使い方の話かもしれませんが、2部屋目が出た時点で、見るべき場所が変わります。

分電盤で見る場所を6つ並べた図。外箱や扉の内側の変色、漏電のつまみが無い、焦げたにおいや音、盤そのものが古い、濡れる場所にある、写真を1枚残す。

なぜオーナーが自分で触ってはいけないのか

電気は、見た目で異常が分からない設備です。配線や分電盤の内部にかかわる作業は、一般的に電気工事士の資格が必要とされていますので、点検のつもりでカバーを開けることも避けてください。詳しい線引きは、お付き合いのある電気工事店や電力会社にご確認ください。

オーナーの手で確認してよいのは、分電盤の扉を開けて、外から見える範囲を眺めるところまでです。落ちたブレーカーのつまみを上げ下げするのは日常の操作ですが、それ以上は分けて考えてください。「自分でやれば安く済む」という発想が、いちばん高くつく領域です。

見た目で気づける4つのサイン

空室のときに、扉を開けて1分見るだけで気づけることがあります。

  • 外箱や扉の内側が茶色く変色している……熱を持った跡として現れることがあります
  • 「漏電」と書かれたつまみやテストボタンが見当たらない……古い分電盤には漏電を検知する仕組みが入っていないことがあります
  • 焦げたようなにおい、ジジッという音……そのまま扉を閉めて、その日のうちに連絡してください
  • 盤そのものが古い……扉の内側の表示が読めない、金属部分が錆びている、雨染みが近くにある

もう1つ、置かれている場所も見てください。洗面所の壁や屋外の階段下など、濡れる可能性のある場所にある盤は、状態が悪くなるのが早くなります。外壁側にある場合は、外壁と屋根を見るタイミングでまとめて確認すると効率がいいので、外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかで触れている点検の順番とあわせて計画してください。

入居者の言葉から気づくこともある

オーナーが現地にいなくても、連絡の内容で分かることがあります。

  • 「同時に使うと落ちる」……使い方の話のこともありますが、繰り返すなら見てもらう対象です
  • 雨の日だけ落ちる」……水がかかわっている可能性があります。天気と症状が結びついたら、様子を見てくださいと答えないでください
  • 「洗濯機に触るとピリッとする」……その場で使用を止めてもらい、すぐに連絡してください
  • 「上げてもすぐ落ちる」……ブレーカーが落ちること自体が異常を知らせている状態です

入居者に原因を探してもらうのは避けてください。分電盤の前に立たせて「どのつまみが下がっているか見てもらえますか」まではお願いできますが、それ以上は業者の仕事です。

気づいたとき、どこに連絡すればいいのか

  1. 焦げたにおい・煙・熱を持っている……火災につながる可能性がありますので、消防と電力会社に連絡してください
  2. 建物全体、または複数の部屋が停電している……まず電力会社へ。引き込み側の可能性があります
  3. 1つの部屋の中だけで起きている……電気工事店(電気工事士)へ。管理会社がいるなら管理会社経由で手配します
  4. 共用部の照明・ポンプ・オートロックが落ちる……共用部の盤はオーナー側の管理範囲になることが多いので、契約や管理委託の内容を確認してください

どこに頼むか迷って一晩置いてしまうのが、いちばん避けたい形です。連絡先を1枚にまとめておくと、鍵や設備のトラブルでも同じ紙が使えます。現地での対応の速さがそのまま機会損失に効く話は、築古物件で「鍵が現地対応でない」ことがどれだけ機会損失になるかにも書いています。

分電盤を点検するタイミングを5段階で示した図。退去のたびに空室で扉を開ける、原状回復の工事に合わせて電気工事店を呼ぶ、外壁や屋根の工事のとき屋外の盤も見てもらう、買ったばかりの建物は最初に1回まとめて、写真を残して次と見比べる。

いつ点検するのがいちばん楽か

入居中の部屋に上がるのは、日程の調整だけで手間がかかります。タイミングを選べば、その手間が消えます。

  1. 退去のたび……空室の間に、分電盤の扉を開けて写真を1枚撮っておく
  2. 原状回復の工事に合わせて……職人が入っている期間なら、電気工事店も同時に呼びやすくなります
  3. 外壁や屋根の工事に合わせて……屋外の盤や引き込み部分を同時に見てもらえます
  4. 買ったばかりの建物……前の所有者が記録を残していないことがありますので、最初に1回まとめて

撮った写真は部屋番号と日付をつけて残します。点検を建物単位でまとめる考え方は、築古アパートのシロアリと給排水管はいつ点検するかと同じです。

都合の悪いことも書いておきます

点検にも交換にも費用がかかります。しかも電気の工事は、やった直後に家賃が上がるものではありません。だから後回しになりやすく、後回しになった建物ほど、あとでまとめて出ていきます。

費用の目安は、盤の位置・戸数・配線の状態で大きく変わりますので、数量の入った見積りを2〜3社から取って比べてください。1室ずつ順番にやるか、全戸まとめてやるかでも1戸あたりの金額は変わります。全戸まとめてやる場合は、入居者に在宅と一時的な停電をお願いすることになるので、日程の連絡を早めに出しておく必要があります。

建物全体でどこから直すかを決めかねているなら、築40年のアパートはリフォームか建て替えかで整理している判断の順番が使えます。

まとめ

埼玉県・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでは、建てたときの分電盤がそのまま使われている建物があります。生活家電の数は当時と変わっていますので、盤だけが昭和のままという状態になっていることがあります。

今日やることを1つだけ選ぶなら、いま空いている部屋の分電盤の扉を開けて、写真を1枚だけ撮ってください。変色があるか、漏電を知らせる仕組みが付いているか、それだけで次に呼ぶかどうかが決まります。実際の点検・工事は資格のある電気工事店や電力会社にご依頼ください。

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