相続した築古アパートを短期間で立て直す進め方|オーナーが最初の3か月でやること

結論からお伝えすると、相続したアパートを短い期間で立て直す順番は①今どうなっているかを1枚にする ②お金と契約の名義を止める ③空室が埋まらない原因を1つに絞る ④直す・貸す・売るを決める——この4つです。最初にリフォームの見積りを取ると、判断材料が増える前に金額だけが増えて、かえって決められなくなります。

6月の午前、父が亡くなって2か月。残ったのは、駅から徒歩15分にある築41年・8戸のアパートです。通帳を開くと、家賃の入金が5件。8戸のうち3戸が空いている計算になります。契約書は仏間の押し入れの段ボールに、封筒のまま入っていました。日付を見ると、いちばん古いものは平成のはじめ。数日後に司法書士へ相談に行くと、「まず、建物と土地の名義をどうするかを決めてからです」と言われます。翌週、地元の仲介会社に電話をすると、「あの物件、いま募集は出ていませんね」と返ってきました。

相続した直後にそろえる材料を6項目にまとめた図。部屋ごとの一覧を作る、お金の出入りを確かめる、建物の履歴を書き出す、契約している相手を洗う、募集が出ているか見る、期限のある手続きを専門家に聞く。

相続した直後に確認する4つのこと

まだ何も直さない段階で、集めておくものがあります。この4つが揃うと、次に何をするかが自分で決められます。

  1. 入居している部屋と空いている部屋の一覧:部屋番号・家賃・共益費・契約日・敷金・滞納の有無。通帳の入金と突き合わせます
  2. お金の出入り:家賃がどの口座に入っているか、固定資産税・保険料・借入の返済がどこから出ているか
  3. 建物の履歴:屋根・外壁・給湯器・配管をいつ触ったか。分からなければ「不明」と書いておきます
  4. 契約している相手:管理会社、家賃保証会社、火災保険、電気・水道の共用部分の契約先

書類が見つからないときはどうするか

賃貸借契約書が一部しか出てこないことがあります。管理会社に入っていれば控えを持っていることがありますし、入っていない場合でも、入居者に連絡を取って写しをもらえることがあります。ここを飛ばして先に進むと、あとで更新や退去の話になったときに条件が分からず、打ち手が残りません。

なぜ先にリフォームの見積りを取ってはいけないのか

相続の直後は「早く直して埋めなければ」という気持ちが先に立ちます。ところが、この段階で見積りを取ると、判断が金額に引っ張られます。

  • 空室の原因が内装とは限らない:募集そのものが止まっている、鍵が現地で開けられない、家賃の設定が今の相場と合っていない、といった理由で決まっていないことがあります
  • 建物全体の予算が決まっていない:屋根や外壁に大きな費用がかかると分かった後で、内装にお金を入れた順番を後悔することになります
  • 持ち続けるかどうかが決まっていない:売ることになれば、直した費用がそのまま価格に乗るとは限りません

空室が埋まらない理由の切り分けは昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因に、内見の入口でつまずいていないかは築古物件で「鍵が現地対応でない」ことがどれだけ機会損失になるかにまとめています。原因を1つに絞ってから直すほうが、費用は少なくて済みます。

最初の3か月の進め方を6段の手順で示した図。名義と家賃の振込先を整える、募集が出ているかを確かめる、空室を見て写真で記録する、雨と水を止める工事を先に見る、数量の入った見積りで2〜3社を比べる、持ち続けるか売るかを決める。

短い期間で立て直すなら、どこから手を付けるか

最初の3か月でやることを並べると、次の順番になります。

  1. 名義と口座を整える:相続登記の進め方、家賃の振込先の変更、火災保険の契約者の変更。入居者への通知が必要かどうかも含めて確認します
  2. 募集が出ているかを確かめる:ポータルサイトで自分の物件を検索してみます。出ていない、写真が数枚しかない、間取り図が古い——ここは費用をかけずに直せます
  3. 空室を1部屋だけ見に行く:においがするか、水が出るか、畳が沈むか。定規を当てるような細かい確認は要りません。写真を撮って記録します
  4. 雨と水を止める工事を先に見る:屋根・外壁・雨漏り・配管。内装より前です
  5. 直す範囲を決めて、数量の入った見積りで2〜3社を比べる:「一式」だけの見積りでは比べられません
  6. 持ち続けるか、売るかを決める:ここまで来ると、材料が揃っています

雨と水をどの順番で止めるかは外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかが使えます。

直すか、貸し続けるか、売るか

都合の悪いことも書いておきます。相続したアパートが、必ず立て直せるとは限りません。建物の傷み方によっては、直す費用が家賃で回収できる範囲を超えることがあります。また、満室にしても手元にお金が残らない構造になっていることもあります。この場合は、直すより先に収支の中身を見たほうが早いです。

収支の見直しは満室なのにお金が残らない築古アパート、建て替えとの比較は築40年のアパートはリフォームか建て替えかにまとめています。

自分で決めない範囲を先に線引きする

相続には、自分で判断してはいけない領域があります。相続税の申告や納付の期限、遺産分割の進め方、相続登記の手続き、建物の耐震や構造の評価、火災保険を引き継げるかどうか。一般的にはこう扱われる、という話は調べれば出てきますが、実際にどうなるかは事情ごとに変わります。税理士・司法書士・弁護士・建築士・保険会社に、早い段階で聞いてください。期限のあるものは、後から取り返せません。

まとめ

相続したアパートは、放っておくと空室が1戸ずつ増えていきます。逆に、最初の数か月で状態を把握して手を打てば、まだ選べる道が多く残っています。埼玉・千葉県西部・栃木県南部にも、昭和から平成のはじめに建てられたアパートが数多く残っていて、代が替わるタイミングで同じ判断を迫られている方がいます。

今日やることを1つだけ選ぶなら、部屋ごとの家賃・契約日・空室かどうかを、1枚の紙に書き出してください。通帳の入金と突き合わせるだけで、何戸が空いていて、いくら入ってきているかがはっきりします。ここが埋まらないと、どんな見積りも判断できません。相続の手続き・税金・保険・建物の安全性については、税理士・司法書士・建築士・保険会社などの専門家に必ずご確認ください。

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