築古アパートの火災保険|オーナーが更新の前に確認する5つのこと

結論からお伝えすると、築古物件の火災保険で先に確かめるのは①今の契約が「時価」か「再調達価額」か ②水災・破損などの補償が付いているか ③地震保険を付けているか ④免責金額はいくらか ⑤満期がいつか——この5つです。加入できるかどうか、条件や保険料がどうなるかを決めるのは保険会社です。この記事は、保険会社や代理店に相談へ行く前に、自分で読んでおける範囲をまとめたものです。

9月、台風が過ぎた翌週の火曜日。築39年のアパートの2階から連絡が入ります。「和室の天井に、茶色いシミが広がってきているんですけど」。バケツを持って部屋へ上がると、天井の隅が湿っていて、押し入れの上の板も色が変わっています。証券は、自宅の引き出しから出てきました。数日後、代理店に電話をして番号を伝えると、担当者が契約の内容を読み上げます。「こちらのご契約は、建物の評価が時価になっています」。この一言の意味が分からないまま、修理の見積りを待つことになります。

火災保険の証券で最初に見る場所をまとめた図。建物の評価方法が時価か再調達価額か、保険金額、付いている補償の範囲、免責金額、保険期間と満期日、そして修繕の履歴。

証券で最初に見る5か所

証券を手元に置いて、次の項目を探してみてください。用語はむずかしく見えますが、見る場所は限られています。

  • 建物の評価方法:「時価」か「再調達価額(新価)」か。支払われる金額の考え方が変わります
  • 保険金額:いくらまで支払われる契約になっているか
  • 付いている補償:火災・落雷・風災・水災・水濡れ・破損など。どこまで入っているか
  • 免責金額:自己負担になる金額。ここが大きいと、小さな損害では請求しても手元に残りません
  • 保険期間と満期日:いつまでの契約か。次の更新の準備をいつ始めるかが決まります

読んでも分からないところは、そのまま代理店に聞いて構いません。契約したときの担当者がすでに代わっていることもあります。証券を一度も開かないまま更新だけが続くと、事故が起きたときに「何が対象なのか」から調べることになります。更新のたびに一度は開いてください。

「時価」と「再調達価額」で、何が変わるのか

一般的な説明として、次のように整理されます。

  • 再調達価額(新価):同じものを今建て直す・買い直すのに必要な金額を基準に考える方法
  • 時価:再調達価額から、使ってきた年数に応じた分を差し引いて考える方法

築年数が経った建物では、この2つの差が出やすくなります。ただし、実際にいくら支払われるかは契約の内容と損害の状況によって決まり、判断するのは保険会社です。「時価だから足りない」「新価なら全部出る」と決めつけず、自分の契約がどちらで、その場合どういう考え方になるのかを、加入している保険会社または代理店に確認してください。

築年数が古いと、契約はどうなるのか

ここは、いちばん断定してはいけない場所です。「築◯年を超えたら入れない」「築古は必ず保険料が上がる」といった一律の決まりがあるわけではありません。一般には、建物の構造・築年数・過去の事故の状況・修繕の履歴などをもとに、引き受けの条件や保険料が判断されるとされていますが、その基準は保険会社ごと、商品ごとに違います。

満期の前に、オーナーができること

条件を決めるのは保険会社ですが、相談の材料をそろえるのはオーナーの仕事です。

  1. 満期の数か月前に、代理店へ相談を入れる:更新の直前だと選ぶ時間がありません
  2. 修繕の履歴を出せるようにしておく:屋根・外壁・雨樋・配管をいつ直したか。建物の管理の状況を説明できる材料になります
  3. 複数の窓口に相談する:扱う商品は会社によって違います
  4. 今の契約の内容を書き写しておく:比べるには、今の条件が分かっている必要があります

屋根・外壁の傷みをどの順番で直すかは外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかにまとめています。直した記録が残っていることは、そのまま説明材料になります。

年数による劣化と突発的な事故を左右で比べた図。劣化は少しずつ進んだ傷みで対象外として扱われることが多く記録が無いと説明できない。事故は台風で瓦が飛んだ、雪で雨樋が壊れたなどで、起きた日と状況を記録し写真を撮ってから片づける。線引きを判断するのは保険会社。

保険で直せるものと、直せないもの

都合の悪い話を先に書きます。一般には、年数が経ったことによる劣化(経年劣化)は、火災保険の対象外として扱われることが多いとされています。台風で瓦が飛んだ、雪で雨樋が壊れた、といった突発的な事故と、少しずつ進んだ傷みは、扱いが分かれます。

雨漏りは、この線引きがいちばん難しいものの1つです。台風の直後でも、原因が長年の劣化だと判断されれば対象にならないことがあります。逆に、劣化だと思い込んで請求しないまま直してしまうこともあります。判断するのは保険会社です。まず連絡してください。初動の順番は雨漏りの連絡が入ったときオーナーが最初にやることにまとめています。

地震保険と、建て直せない物件の扱い

火災保険だけでは、地震・噴火・津波を原因とする損害は対象になりません。これらに備えるには地震保険を付ける必要があります。付けるかどうかは、建物の状況と、万一のときにどうするかによって変わります。旧耐震の建物をどう扱うかは旧耐震のアパートを持ち続けるリスクと選択肢を、建物を失ったあと同じ規模で建て直せない可能性がある物件については再建築不可の物件をどう扱うかをご覧ください。保険金が出るかどうかと、建て直せるかどうかは、別の話です。

まとめ

火災保険は、入ったときのまま何年も置かれやすい契約です。そして、必要になるのは決まって、いちばん困っているときです。埼玉・千葉県西部・栃木県南部でも、台風や大雪のあとに同じ問い合わせが増えます。そのときに証券を探すところから始めると、初動が数日遅れます。

今日やることを1つだけ選ぶなら、火災保険の証券を手元に出して、「時価」か「再調達価額」かと、満期日の2つだけ確認してください。この2つが分かれば、代理店への相談を何から始めればいいかが決まります。加入の可否・補償の範囲・保険料・保険金が支払われるかどうかを判断するのは保険会社です。契約の内容と個別の事情については、加入している保険会社または代理店に必ずご確認ください。

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