境界線の上に立つ塀は、隣と共有のものと推定されます|築古アパートのオーナーが直す前に見る民法の4条
結論からお伝えすると、境界線の上に立っている塀は、相手と共有のものと推定されるのが民法の出発点です。民法229条は「境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する」と定めています。自分の敷地の内側に立っているのか、境界線の真上に立っているのかで、直すときの手続きが変わります。築古アパートの外まわりで、いちばん揉めやすいのがここです。

まず「誰のものか」ではなく「どこに立っているか」を見る
民法の相隣関係の条文は、塀の扱いを立っている場所で分けています。
- 境界線の上に立っている → 229条で共有と推定される
- 自分の敷地の内側に立っている → 自分の所有物として扱える
- 建物の外壁そのものが境界にある → 230条1項で229条の適用が外れる(一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁)
229条は「推定する」という言葉です。断定ではありません。反対の証拠、たとえば一方が単独で費用を出して設置したことを示す資料があれば、その推定はくつがえります。だからこそ、工事の見積書や領収書が残っているかどうかが効いてきます。
実務で困るのは、昭和に建てたアパートで、当時の書類が1枚も残っていない場合です。この状態で「うちの塀だから壊して建て替える」と動くと、共有物を勝手に処分したことになりかねません。
共同で作るときの決まりは、条文に細かく書いてある
民法225条1項は、2棟の建物の所有者が別々で、その間に空地があるとき、各所有者は他の所有者と共同の費用で境界に囲障を設けることができるとしています。同じ条の2項は、話がまとまらないときの標準を決めています。
「当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであつて、かつ、高さ二メートルのものでなければならない」
板塀か竹垣、高さ2メートル。ブロック塀ではありません。費用は226条で「相隣者が等しい割合で負担する」、つまり折半です。
では、こちらはもっと丈夫なものにしたい、もっと高くしたいときはどうするか。227条が用意されています。より良い材料を使ったり高さを増したりすることはできるが、それによって生じる費用の増加額は、言い出したほうが負担するという書き方です。
さらに231条1項は、共有の障壁の高さを増すことができるとしたうえで、その障壁が工事に耐えないときは、自己の費用で必要な工作を加えるか、その障壁を改築しなければならないとしています。2項では、高さを増した部分はその工事をした者の単独の所有になる、とされています。232条は、その工事で隣人が損害を受けたときは償金を請求できる、と続きます。
つまり「共有の塀を高くする」という一見ささいな話に、費用負担・補強義務・所有の帰属・損害の償金という4つの条文が用意されているということです。

境界標はどう扱われるか
塀の手前にある境界標も、同じ考え方で条文があります。民法223条は、土地の所有者は隣地の所有者と共同の費用で境界標を設けることができるとし、224条は「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する」としています。
費用は折半だが、測量の費用だけは土地の広さの割合という書き分けです。境界の確認そのものについては私道と境界、越境をいつ確認するか|築古アパートのオーナーが今のうちにやる手順にまとめています。
もうひとつ、228条という短い条文があります。「前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う」。225条から227条までの囲障のルールは、その土地の慣習があればそちらが優先されます。地域によって扱いが違うことがある、という前提が条文に書いてあるわけです。
築古アパートのオーナーが、先に確かめる3つ
- 塀の足元が、境界標のどちら側にあるか。写真を撮るときは、境界標と塀の両方が1枚に入る角度で撮ります
- 設置したときの書類が残っているか。229条の推定をくつがえせるかどうかは、この1点で決まります
- ブロック塀なら、控え壁と高さ。建築基準法の側にも、組積造の塀やブロック塀の構造の基準があります。ここは専門家の見立てが要る領域です
塀そのものの傷み方は、敷地の他の場所と一緒に見ておくと効率がよいところです。雨のまわり方はアパートの雨樋の詰まりを放置すると何が起きるか|築古オーナーが建物と隣地の両方で見る3か所、敷地の木が隣に伸びる話はアパートの落ち葉と剪定枝は家庭ごみに出せない|築古アパートのオーナーが敷地の木で先に確かめること、基礎まわりのひび割れの見方は基礎のひび割れは0.3ミリか0.5ミリか|築古アパートのオーナーが幅より先に見る3つに書きました。
なお、境界そのものの位置に争いがあるときは、民法の条文だけでは解決しません。筆界特定制度や土地家屋調査士への依頼が必要になります。所有権の帰属や登記に関わる判断は、土地家屋調査士・司法書士・弁護士にご確認ください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
塀と境界標が1枚に入る写真を、四隅ぶん撮ってください。境界標が見つからない角があれば、それが最初に手を付ける場所です。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでは、塀の建て替えの話が、相続や売却のタイミングで急に出てきます。写真1枚が「共有かどうか」の話し合いの出発点になります。


