アパートの雨樋の詰まりを放置すると何が起きるか|築古オーナーが建物と隣地の両方で見る3か所
結論からお伝えすると、雨樋の詰まりは見た目の問題ではなく、建物側と隣地側の2方向に効いてくる問題です。そして隣地側には条文があります。民法第218条は「土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない」と定めています。雨樋は、この「注がない」を成立させるための装置です。落ち葉が原因なら、令和5年4月1日から使える条文がもう1本あります。
軒樋の継ぎ目に、黒く固まった葉と泥が10センチほど溜まっている。表面に細い草が生えていて、抜こうとすると根がついてくる。雨の日、外壁の同じ位置だけが縦に黒く濡れている。その真下は、隣地との境界から60センチのところ。地面には浅いくぼみができていて、雨のあとだけ水が残る。

雨樋は「管」なので、1か所詰まれば全部が止まる
雨樋は3つの部分でできています。屋根の軒先を横に走る軒樋、その水を1か所に集める集水器、地面まで縦に降ろす竪樋です。どれか1か所が詰まれば、そこから溢れます。溢れた水は、真下ではなく建物の面を伝います。
- 外壁:同じ場所だけが濡れ続けるので、塗膜が先に切れる
- 軒天:上から回り込んで染みる。ここが茶色くなったら、たいてい樋が先に壊れている
- 基礎まわり:地面に落ちる位置が集中して、跳ね返りが基礎の立ち上がりを濡らし続ける
順番としては、雨樋が先で、外壁と屋根の傷みが後です。外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかで書いた「後回しにすると高くなる」の入り口が、たいていここにあります。基礎まわりの見方は基礎のひび割れは0.3ミリか0.5ミリかにまとめました。
室内に水が回ってから連絡が来ると、初動が変わります。そこまで行った場合の順番は雨漏りの連絡が入ったときオーナーが最初にやることを見てください。
隣の家の木の落ち葉が原因のときは、どうすればいいですか?
ここが、この3年で変わったところです。
民法第233条第1項は昔から「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」と定めています。切らせるであって、切るではありません。2023年3月31日の時点では、この条文は2項までしかなく、自分で枝を切ってよいとは書かれていませんでした(根は昔から自分で切れます)。
2023年4月1日施行の改正で、第3項が加わりました。いまの条文はこうです。
第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
- 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき
- 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
- 急迫の事情があるとき
あわせて第209条第1項第3号に「第233条第3項の規定による枝の切取り」が加わり、そのために隣地を使うことができるようになりました。ただし条件があります。住家については、その居住者の承諾がなければ立ち入れません(同項ただし書)。そして、あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地の所有者と使用者に通知する必要があります(同条第3項)。損害が出れば償金の対象です(同条第4項)。
使う順番としては、まず1号です。いきなり切りに行く条文ではありません。書面で切除をお願いし、相当の期間を置く。ここを飛ばすと、権利の話ではなく揉め事の話になります。空き家で連絡先が分からない隣地なら2号、台風の直前で今にも落ちそうなら3号、という順で考えます。
境界そのものが分からない物件は、枝の前にそちらです。私道と境界、越境をいつ確認するかをご覧ください。

逆向きも見ておく:こちらの雨水が隣に落ちていないか
冒頭の民法第218条は「設けてはならない」と書かれているので、文言としては造るときの規定です。壊れて外れたままの樋がそのまま218条違反になるかどうかは、条文だけでは決まりません。ここは弁護士の領域です。
ただ、結果として起きていることは同じです。屋根に降った雨が、直接、隣の敷地に落ちている。境界から50センチや60センチしか離れていない築古アパートでは、樋が1本外れただけでこの状態になります。相手から言われる前に、雨の日に一度、自分の目で見ておく価値があります。
もし落ちた水や外れた部材で隣家に損害が出た場合は、民法第717条の土地工作物責任の話になります。この条文の重さは下の階に水が漏れたときで扱いました。所有者には免責の規定がありません。
費用はどれくらいかかるのか
リフォーム会社の一括見積りを運営するリショップナビ(株式会社じげん)が公表している相場では、部分的な手当てと全交換で桁が変わります。
- 雨樋の交換・修理(1メートル):3〜5千円前後
- 継ぎ手の補修(1か所):5千〜2万円
- 雨樋の清掃:1〜3万円
- 雨樋の全交換(全体):15〜60万円
同社が自社のサービス経由の施工事例を集計した平均は約25万円で、価格帯としては10万円未満が全体の52%を占めています(出典:リショップナビ「雨樋(あまどい)修理にかかる費用は?自分でできる修理方法と業者の選び方」2026年6月19日更新/監修・一級建築士 平井淳一)。
ここに足場代が乗ります。雨樋は屋根の際にあるので、2階の軒樋を触るなら足場が要ることが多い。そして足場は、雨樋のためだけに組むと割高になります。屋上・陸屋根の防水、外壁の塗り替え、手すりの塗装。足場が要る工事は同じ年に寄せるのが基本で、この考え方は陸屋根の防水はいつやるかに周期ごとまとめてあります。
なお、台風や強風で樋が破損した場合は、火災保険の風災の対象になることがあります。契約内容によるので、築古アパートの火災保険で確認する欄を先に見てください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
次に雨が降っている日に、建物の周りを1周してください。晴れた日に見上げても、詰まりは分かりません。溢れているところ、外壁を伝っているところ、地面に水が集中しているところ。この3つは雨の日にしか出ません。写真を3枚撮っておけば、業者に見せる材料にもなり、隣地との話になったときの記録にもなります。
出典
- 民法(明治29年法律第89号)第218条、第233条、第209条、第717条(e-Gov法令検索・2026年8月29日確認)。第233条第3項の追加は2023年4月1日施行(e-Gov法令検索の時点指定で2023年3月31日時点の条文と突き合わせて確認)
- リショップナビ「雨樋(あまどい)修理にかかる費用は?自分でできる修理方法と業者の選び方」(株式会社じげん/2026年6月19日更新)
隣地との権利関係は事案ごとに結論が変わります。実際に枝を切る前、あるいは相手方へ請求する前に、弁護士へご確認ください。


