生活保護の受け入れをどう考えるか|築古アパートのオーナーが確かめる順番

結論からお伝えすると、生活保護を受けている方の入居は、その場で「受けるか、断るか」を決める話ではありません。担当の福祉事務所に先に電話をして、確かめることを確かめるところから始まります。確かめる項目は、多くありません。

火曜の昼、仲介会社から電話が入る場面があります。「1階の2DKなんですが、生活保護を受けていらっしゃる方です。大丈夫でしょうか」。ここで即答できず、「確認して折り返します」と言って切る。翌日、教えていただいた福祉事務所に電話をすると、担当の方はこう言います。「まず、その家賃と共益費が基準の範囲に収まるかを確認させてください」。書類が整って入居日が決まるのは、そこから2週間ほどあと、ということもあります。やり取り自体は難しくありません。ただ、日数はかかります。

受け入れる前に確かめること6項目。家賃が扶助の範囲か、家賃の払われ方、緊急連絡先と保証の形、入居日が読みにくいこと、更新と原状回復の説明、連絡の経路。聞く先は福祉事務所。

断る前に、確かめることは3つだけ

オーナーが判断に必要な情報は、次の3つです。ご本人に聞くのではなく、福祉事務所に聞きます。

  1. 家賃と共益費が、住宅扶助の基準の範囲に収まるか。基準の額は自治体や世帯の人数によって決められており、地域ごとに違います。金額はここでは書けません。福祉事務所に、物件の住所と家賃を伝えて確認してください
  2. 家賃はどう払われる形になるか。ご本人からのお支払いか、後述の代理納付が使えるか
  3. 緊急連絡先と保証の形をどうするか。保証人を立てられるか、保証会社を使うか

この3つがはっきりすれば、あとは他の申込と変わりません。どんな方に貸すかを先に決めておく考え方は 築古アパートは誰に貸すか|オーナーが入居者層を決めてから募集する順番 にまとめています。

なぜ、福祉事務所に先に電話をするのが早いのか

お申し込みが入ってから調べ始めると、仲介会社もご本人も待つことになります。しかも運用は自治体や福祉事務所によって違います。他の物件で通った形が、別の市で同じように通るとはかぎりません。ネット上の記事や、以前の経験をそのまま当てはめないでください。

電話で聞くのは、この2つで足ります。

  • 「この住所、この家賃と共益費で、扶助の範囲に収まりますか」
  • 「代理納付は使えますか。使える場合、いつからの分になりますか」

いいことばかりではありません。書類が整うまでに日数がかかり、入居日が読みにくいことがあります。その間も空室のままです。空室期間が手取りをどう削るかは 満室なのにお金が残らない築古アパート|オーナーが収支のどこを見直すか をご覧ください。待てる期間を先に決めておくと、判断が楽になります。

代理納付という仕組みを知っておく

住宅扶助の分を、自治体からオーナーや管理会社へ直接お支払いいただく代理納付という仕組みがあります。ご本人の口座を経由しないため、家賃の入り方が安定しやすくなります。

ただし、次の点は必ず福祉事務所に確認してください。

  • その方について代理納付が使えるかどうか(自治体やご事情によって扱いが変わります)
  • 開始できるのはいつからの分か。入居初月がどうなるか
  • 共益費や駐車場代など、家賃以外の扱い
  • 振込のタイミングと、通知が届く形

「代理納付があるから安心」と決めてかからないでください。使えるかどうかは、こちらが決められることではありません。

家賃が基準を超えていたら、下げるべきか

家賃が扶助の範囲を少し超えている、と言われることがあります。ここで反射的に下げると、その家賃がその後の基準になります。下げる前に、共益費との内訳を組み替えられないか、設備を足して同じ家賃で通す道がないかを仲介会社と相談してください。家賃以外に動かせる手は 家賃を下げる前に試す4つの手|築古アパートのオーナーが順番に確かめること にまとめました。

それでも合わないときは、無理に合わせないという判断もあります。合わない部屋に合わせるより、その基準に合う部屋を1つ用意しておくほうが、次からの動きが早くなります。

契約のときに整えておくこと

  • 緊急連絡先を2件。ご親族が難しい場合、担当のケースワーカーの連絡先を控えておく
  • 保証の形を決める。保証会社の可否は会社によって違います。判断の順番は 家賃保証会社は築古物件でも使えるのか|オーナーが加入前に決める6つのこと をご覧ください
  • 更新のときの費用と、退去時の原状回復の負担を、契約の前に書面で説明する。どこまでが扶助の対象になるかは福祉事務所の判断になります。オーナーが「出ます」と言わないでください
  • 連絡の経路を決める。ご本人、ケースワーカー、仲介会社のうち、どの用件を誰に伝えるか

入居していただいたあとは、他のお部屋と同じ

入居後の管理に、特別な手順はありません。エアコンが効かない、水が出ないという連絡には、他のお部屋と同じ速さで動いてください。生活の状況が変わって転居や入院のご連絡が入ることもありますが、そのときも窓口は同じです。

やってはいけないのは、受給されていることを他の入居者に伝えたり、ポストや掲示物から分かる形にしたりすることです。これは受け入れる側の責任にあたる部分です。管理を任せている会社にも、同じ扱いをお願いしておいてください。

申込が来てから調べる場合と、先に福祉事務所へ聞いておく場合の比較図。前者はその日に折り返せず空室が続く。後者は窓口を控え、扶助の範囲と代理納付の可否を確認し、待てる期間を決めておく。

まとめ

生活保護を受けている方の入居で、オーナーがやることは「福祉事務所に電話をして、3つ確かめる」だけです。基準の額も、代理納付が使えるかどうかも、自治体と福祉事務所によって違います。ここを人づてやネットの情報で埋めないでください。

埼玉・千葉県西部・栃木県南部のように、駅から離れた築古の部屋を持っているオーナーにとっては、受け入れの準備を先に済ませておくこと自体が、募集の幅になります。

今日やることを1つだけ選ぶなら、お持ちの物件がある市区町村の福祉事務所の電話番号を調べて、控えに書き足してください。申し込みが入ってから探すと、その日のうちに折り返せません。

制度の運用、扶助の範囲、代理納付の可否は、必ず物件所在地の自治体・福祉事務所の窓口にご確認ください。契約書の書き方や原状回復の負担区分については、宅建業者や弁護士にご相談ください。

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