収益物件の価格は、家賃を表面利回りで割っては決まりません|築古アパートのオーナーが国の鑑定評価基準で引き算する費用

結論からお伝えすると、収益物件の価格を、満室の家賃を表面利回りで割って出すのは、国の鑑定評価の基準とは別の計算です。国土交通省の「不動産鑑定評価基準」は、収益価格を純収益を還元利回りで割る「直接還元法」と、複数年の純収益と売却時の価格を現在の価値に割り戻して足す「DCF法」で求めるとしています。ここでいう純収益は総収益から総費用を引いたもので、総費用には維持管理費・修繕費・公租公課・損害保険料などが入ります。築古のアパートほど、この引き算で価格が大きく変わります。

売却の相談をすると、査定書の1枚目に「想定年間収入 480万円 表面利回り 12% 査定価格 4,000万円」とありました。2枚目以降を見ても、固定資産税の額も、屋根と外壁の修繕の予定も書かれていません。買う側が同じ物件を見るときは、そこから引き算を始めます。

総収益から空室・管理費・修繕費・税と保険料を引いて純収益を出す流れをまとめた図

国の基準は、「純収益」を還元利回りで割ります

不動産鑑定評価基準は、収益還元法を次のように説明しています。

  • 収益価格を求める方法には、一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法(直接還元法)と、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法(DCF法)がある
  • 対象不動産の純収益は、一般に1年を単位として総収益から総費用を控除して求める

直接還元法の式は、価格=純収益÷還元利回りです。割られるのは家賃の総額ではなく、費用を引いた残りです。基準は、自分で使っている不動産であっても賃貸を想定して適用するものとしており、さらに、取引価格の上昇が著しいときには「先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段」として収益還元法を使うべきだと書いています。

総収益に入るもの、総費用に入るもの

賃貸用の不動産について、基準は総収益と総費用の中身を挙げています。

総収益(支払賃料等)

  • 支払賃料
  • 預り金的性格を有する保証金等の運用益
  • 賃料の前払的性格を有する権利金等の運用益及び償却額
  • 駐車場使用料等のその他収入

総費用

  • 減価償却費(償却前の純収益を求める場合には計上しない)
  • 維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)
  • 公租公課(固定資産税、都市計画税等)
  • 損害保険料等の諸経費

DCF法については、「特に保有期間中における大規模修繕費等の費用の発生時期に留意しなければならない」とも書かれています。屋根や外壁を何年後に直すかが、価格の計算に入るということです。

同じ家賃でも、引き算で価格が変わります

冒頭の査定書の数字を使って、仮の条件で引き算をしてみます(数字は説明のための例で、相場ではありません)。

  1. 満室の家賃 年480万円
  2. 空室と滞納を1割とみて -48万円 → 432万円
  3. 管理委託料・共用部の電気代・清掃・保険料 -60万円
  4. 固定資産税・都市計画税 -35万円
  5. 修繕の積立(毎年ならした額) -50万円
  6. 純収益 287万円

表面利回り12%で割れば4,000万円でした。純収益287万円を同じ4,000万円で割ると、7.2%前後になります。買う側が求める利回りが純収益で10%なら、この計算では2,870万円です。築古で修繕の予定が重いほど、表面と純収益の差が開きます。満室でもお金が残らない理由の整理は満室なのにお金が残らない築古アパートに書いています。

還元利回りは、誰が決めるのですか?

基準は、還元利回りと割引率について、比較可能な他の資産の収益性や金融市場の動向などに留意して求めるとしています。法律や国が数字を1つに決めているものではありません。物件の場所・築年数・構造・入居の安定性で変わります。

表面利回りで割った価格と、純収益で割った場合の利回りを仮の数字で比べた図

都合の悪いことも書いておきます

実際の売買の価格は、買主の融資の条件や、同じ時期に出ている物件の数でも動きます。鑑定評価の考え方どおりに値段が付くとは限りません。また、上の例の費用の数字は、物件ごとに大きく違います。「築年数が古いから価値がない」という見方が当てはまらない場合は築後20〜25年で価値ゼロは、国が改めるよう求めた慣行です、売る時期の考え方は築古アパートを売るなら満室にしてからか空室のままかを見てください。価格そのものの妥当性は、不動産鑑定士に確かめてください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

去年1年の家賃の入金額から、固定資産税・都市計画税・管理費・保険料・修繕に払った額を引いて、1つの数字にしてください。それがあなたの物件の純収益の実績です。査定書の利回りを見るときは、まずこの数字で割り直してください。

出典

  • 国土交通省「不動産鑑定評価基準」総論第7章第1節「収益還元法」(平成26年5月1日一部改正の版)

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