収納が少ない部屋はどう募集するか|築古アパートのオーナーが押入れを潰す前に確かめる3つ

結論からお伝えすると、収納を増やす工事はいちばん後ろに置いてください。先に確かめることが3つあります。①募集図面に何を書けるか ②その部屋が国の水準のどこに立っているか ③押入れを部屋に取り込むと何が動くか——です。この順番を逆にすると、お金をかけたのに募集図面の見え方が変わらない、ということが起きます。

築古の1Kで、収納は押入れが1つ。幅は1間、中に中段と枕棚が入っている。募集図面の設備欄には「押入」と1行だけ書いてある。ここから動かすなら、まず紙の上に残っている手があります。

収納が少ない部屋で工事より先に見る3つを並べた図。募集図面の畳数の根拠、国の水準のどこに立つか、押入れを潰すと床面積が増えて採光の分母が増えること。

「6畳」と書くには、壁心で9.72平方メートルが必要です

募集図面の畳数は、書き手が好きに決められる数字ではありません。不動産の表示に関する公正競争規約の施行規則(16)は、住宅の居室等の広さを畳数で表示する場合、畳1枚当たりの広さは1.62平方メートル(各室の壁心面積を畳数で除した数値)以上の広さがあるという意味で用いることと定めています。

  • 6畳と書くなら、その部屋の壁心面積を6で割った値が1.62平方メートル以上(=壁心で9.72平方メートル以上)
  • 8畳なら12.96平方メートル以上

ここで見てほしいのは「各室の」壁心面積という書き方です。基準になるのは部屋の面積で、押入れは襖で仕切られた収納です。「収納が付いているぶん広く見せる」という書き方は、この規則の中では成立しません。畳数を動かしたいなら、部屋そのものの面積を動かす必要があります。(出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」)

窓が足りない部屋は「納戸」と書くことになります

同じ施行規則の(17)は、採光及び換気のための窓その他の開口部の面積の当該室の床面積に対する割合が建築基準法第28条の規定に適合していないため、同法において居室と認められない納戸その他の部分については、その旨を「納戸」等と表示することと定めています。

建築基準法28条1項が求める割合は、施行令19条3項の表で住宅の居住のための居室は7分の1です。つまり床面積の7分の1以上の有効採光面積が要ります。ここが足りない部屋は、広さがあっても「洋室」ではなく「納戸」「サービスルーム」と書くことになります。

押入れを潰して広くする前に、床面積が増えることを思い出してください

収納が少ないと言われたとき、押入れを撤去して部屋に取り込む案が出ることがあります。逆方向のようで矛盾して見えますが、「収納は諦めて、広い1室にする」という選択です。壁心面積が増えるので、畳数の表示を上げられる可能性が出てきます。

ただし、ここで動くのは面積だけではありません。採光の必要面積は「床面積の7分の1」なので、窓を増やさずに床面積だけ増やすと、比率は下がります。もともと余裕が少ない部屋では、この1畳ぶんが効いてくることがあります。

どこまでが採光の計算に入るのか、いま何分の1あるのかは、建物ごとに違います。図面の畳数を動かす前に、建築士か自治体の建築指導課に確認してください。この記事では判定をしません。和室そのものを洋室に変えるかどうかの判断順は和室を洋室に変えるか|築古アパートのオーナーが費用と埋まりやすさを判断する順番にまとめています。

国の計画で、収納は「基本的機能」の1項目として立っています

収納は「あれば喜ばれるもの」という扱いに見えますが、国の書き方は違います。2026年3月27日に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)の別紙1「住宅性能水準」は、基本的機能の項目として「世帯構成に対応した適正な規模の収納スペースを確保する。」を1行立てています(1(1)③)。台所・便所・洗面所・浴室と並ぶ位置づけです。

この計画で、面積の水準の置き方が変わりました

同じ別紙1の1(1)④には、こう書かれています。

今後の住宅ストックの充実に当たって供給・流通を促していく住宅の規模は、これまでの単身世帯の最低居住面積水準が25㎡以上とされてきたことにも留意しつつ、(中略)40㎡程度を上回る住宅とする。

注目したいのは「とされてきた」という過去形です。この計画の別紙は3つ(別紙1 住宅性能水準/別紙2 居住環境水準/別紙3 公営住宅の供給の目標量の設定の考え方)で、誘導居住面積水準・最低居住面積水準の別紙は置かれていません。令和3年3月の前の計画には、別紙3として誘導居住面積水準、別紙4として最低居住面積水準がありました(国土交通白書2022 資料8-3で確認できます)。

つまり「25平方メートル未満は水準未満」という物差しが表から下がり、代わりに「供給・流通を促す規模は40平方メートル程度を上回る住宅」という別の線が引かれたということです。20平方メートル台の1Kを持っているオーナーからすると、これは重い変化です。

では、狭い部屋は退場ということでしょうか

そうは書かれていません。同じ別紙1の1(1)⑤に、続きがあります。

なお、主として既存住宅の活用が想定されるセーフティネット登録住宅、居住サポート住宅等、政策目的に照らして適正な水準を確保する必要がある場合は、上記によらないことができる。

40平方メートルの線の外側に、既存住宅の活用ルートが別に用意されています。あわせて、この計画が注視する指標には面積別の住宅ストック数【40平方メートル台:持家68万戸・借家312万戸、50平方メートル台:持家135万戸・借家295万戸(令和5年)】が入っています。40平方メートル台は借家が持家の約4.6倍です。狭い住戸は借家に集まっている、という前提で政策が組まれていることが数字から読めます。

収納が少ない部屋の、募集での見せ方

紙とデータの上でできることから並べます。

  1. 押入れの中を空にして、扉を開けた状態で撮る。中段と枕棚が写っていれば、上下に分かれていることが伝わります。「押入」の1行では伝わりません
  2. 採寸して数字で書く。幅・奥行・中段までの高さ。奥行が80センチ前後あれば、衣装ケースが前後に2列入るかどうかが読者側で判断できます
  3. 置ける場所を写真で示す。ハンガーラックやチェストを1つ置いて撮る方法は、家具を入れる打ち手と同じ考え方です(→空室に家具を置くのは築古で効くのか
  4. 写真の枚数と順番を先に決める。収納の写真を何枚目に置くかで、見られるかどうかが変わります(→募集写真は何枚・どの順番で載せるか
  5. 押入れの中の清掃を落とす。内見で開けられる場所です(→空室の掃除はどこまでやるか
押入れを残す場合と潰す場合を左右で比べた図。残せば襖の張替えで見え方が変わり採光の計算は変わらない。潰せば面積は増えるが採光の分母も増え建築士への確認が必要。

いちばん安く済むのは、押入れをそのまま使える状態にすることです

押入れの見え方を落としているのは、たいてい襖です。襖の張替えは、関東で賃貸の原状回復を専門にしている大家さんの内装屋の料金表で1枚2,800円(税抜/クロス張替えと同時施工のみ/押入れ・戸襖の場合等は別途料金)。ここで1つ落とし穴があります。

ダンボール襖は張替えができません。同じ料金表に「ダンボール襖は張替不可、新調となります。1本18,800円(表面:襖紙、裏面:雲華紙の場合)」と書かれています。2,800円と18,800円で約6.7倍です。築古のアパートで襖に手を付けるなら、先に襖の種類を確かめてください。(出典:大家さんの内装屋「クロス張替えの料金表」)襖・障子・網戸をどこまで直すかは網戸・障子・襖はどこまで直すか|築古アパートのオーナーが紙と建具を分けて決める順番にまとめています。

これは業者価格です。継続して発注する事業者向けの水準で、個人が単発で頼む一般消費者価格は、ここから2〜3割上がると考えてください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

いま出ている募集図面を開いて、畳数と設備欄の「押入」を見てください。畳数の根拠(壁心面積)を持っているか、押入れの中の写真が1枚も入っていないか。この2つのどちらかが欠けていたら、工事より先にそこを埋めるほうが早く効きます。

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