家賃を期間限定で下げるなら、元の家賃を契約書に残します|築古アパートのオーナーが読む借地借家法32条と最高裁平成20年判決

結論からお伝えすると、家賃を期間を区切って下げること自体は、入居者との合意でできます(民法135条2項:終期が来れば、その取り決めの効力は消える)。ただし書き方が大切です。「家賃を5万5千円に変更する」と書くと、それが新しく合意した家賃になります。最高裁は家賃の減額請求を判断するとき、当事者が現実に合意した直近の家賃を基にするとしています(平成20年2月29日判決)。期間限定で試すなら、契約の家賃は元の額のまま残し、「この月からこの月まで5千円を値引きする」と書くのが筋です。

たとえば2月の終わり、駅から歩いて15分の1K。家賃6万円で募集して3週間、内見は2件。仲介の担当者から「最初の半年だけ5万5千円にできれば、今週中に決めたいという方がいます」と電話が入る。半年後に6万円へ戻すつもりで受けるなら、その「戻る」を書面に残しておく必要があります。

家賃を月を区切って下げるときの書き方4点(契約の家賃は変えない・始まりと終わりの月・戻ったあとの家賃・終わる前に知らせる)

期間を切った値下げは、合意だけでできますか?

できます。家賃をいくらにするか、いつまでその額にするかは、当事者の合意で決められます。民法135条2項は、「法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する」と定めています。「2026年4月分から9月分まで」と終わりの月を書いておけば、値引きの取り決めはそこで効力を失います。

「家賃を変更する」と書くと、何が残りますか?

最高裁平成20年2月29日第二小法廷判決(平成18(受)192)は、賃料の自動改定特約があった事案で、借主からの減額請求を判断するときは、特約で改定される前に「当事者が現実に合意した直近の賃料」を基にして、その日からの経済事情の変動などを考えるべきだとしました。

この判決は期間限定の値下げそのものを扱ったものではありません。ただ、家賃の額を書き換える形で値下げすると、その額が「直近に合意した家賃」と読まれるおそれがあります。後で家賃をめぐる話し合いになったとき、6万円ではなく5万5千円が出発点になりかねません。一般的には、契約の家賃は6万円のまま、値引きの額と期間を別に書くほうが、元の家賃がはっきり残ります。

家賃を変更する場合と期間で値引きする場合の比較

期間が終われば、必ず元の家賃に戻りますか?

取り決めのうえでは戻ります。ただし借地借家法32条1項は、家賃が周りと比べて不相当になったときは、「契約の条件にかかわらず」当事者が増減を請求できると定めています。同じ項のただし書で特約の効力が認められているのは、「一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約」だけです。

つまり、「値引き期間が終わったら減額は求めない」と書いても、入居者が減額を請求する道は残ります。期間限定の値下げは「試す」ための道具であって、元の家賃を約束させる道具ではありません。値引きが終わる2か月ほど前に、入居者へ一言知らせておくと、揉めにくくなります。

入居前に試すなら、どうしますか?

まだ入居者が決まっていない部屋なら、家賃の額そのものより先に、礼金・フリーレント・初期費用で試す手もあります。順番の考え方は礼金・敷金・フリーレントはどの順番で緩めるかに、申込みの段階で「下げてくれれば借りる」と言われたときの扱いは「家賃を下げてくれれば借りる」という入居申込は、条文の上では新しい申込みですに書いています。

帳簿は、どう付けますか?

値引きした月は、実際に受け取る額で家賃収入を記帳するのが基本です。値引きを支払日の前に決めたか後に決めたかで記帳が分かれる話は家賃を値引きしたときの記帳は、支払日の前に決めたか後に決めたかで分かれますにまとめています。

都合の悪いことも書いておきます

期間限定の値下げは、同じ建物の他の部屋の入居者にも伝わります。先に下げた家賃が隣の部屋の物差しになる話は空室が2部屋あるとき大家はどちらを先に決めるかが詳しく扱っています。また、半年で戻すと入居者の負担感が急に上がり、更新の前に退去されることもあります。埼玉・千葉西部・栃木南部の築古アパートでも、試すなら期間は短すぎないほうが無難です。家賃の争いになったときの判断は、弁護士に相談してください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

期間限定で下げる話が来たら、覚書に「契約賃料は6万円とする」「2026年4月分から9月分まで、月5千円を値引きする」の2行を分けて書いてください。この2行で、元の家賃と終わりの月が残ります。

出典

  • 民法135条、借地借家法32条(e-Gov 法令API・2026年10月11日時点)
  • 最高裁判所第二小法廷 平成20年2月29日判決(平成18(受)192 賃料減額確認請求本訴,同反訴事件・集民第227号383頁)

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