築古アパートの床は何にするか|クッションフロア・畳・フローリングを費用と退去時の負担で選ぶ
退去した和室に入ると、畳は窓側の2枚だけ色が抜けて白茶けていて、縁の布がほつれていました。押入れの前は逆に濃いまま。工事会社の見積には「床工事一式」と書かれています。畳を替えるのか、クッションフロアを貼るのか、洋室にしてしまうのか——ここで決めた内容は、次の募集だけでなく、次の退去のときに誰がお金を払うかまで変えます。
結論|床材は「入替の費用」と「退去時の負担」の2つで選ぶ
結論からお伝えすると、床材を選ぶときに見るべき数字は2つあります。
- いま入れ替えるといくらかかるか
- 次の退去のとき、傷が付いたら誰がいくら払うことになるか
1つ目だけで選ぶと、安く入れた床が退去のたびに自分の持ち出しになります。2つ目を知っていると、同じ予算でも置き方が変わります。

6畳の床、いくらかかるか
大家さんの内装屋が公表している料金表では、床の単価はこうなっています(税抜)。
- クッションフロア(CF)貼り……3,980円/㎡
- フロアタイル貼り……6,999円/㎡
- カーペット張り替え……6,190円/㎡
- 畳の表替え……3,780円/畳
- 和室6畳をフローリングにする工事……198,000円〜(材料費・工事代金込み)
(出典:大家さんの内装屋「クロス張替えの料金表」および同「リフォーム工事全般」・2026年7月1日改定・税抜/2026年8月16日時点で確認)
6畳(約9.7㎡)に置き換えると、CFで約3万8,600円、フロアタイルで約6万7,900円、カーペットで約6万円。畳の表替えは6枚で2万2,680円です。
ただしこれは継続して工事を発注する事業者向けの業者価格です。大家さんが単発で工事会社に頼む一般消費者価格は2〜3割ほど上。6畳ならCFで約4万6,000〜5万円、フロアタイルで約8万2,000〜8万8,000円、畳の表替えで約2万7,000〜2万9,500円、洋室化は約23万8,000〜25万7,000円あたりが目安になります。
金額を動かすのは、材料よりも「はがすかどうか」
上のCFとフロアタイルの単価は、既存の床へ上貼りできる場合の金額です。はがして張り替える場合は、処分代と下地処理代が別途乗ります。ここを確認しないまま単価だけを比べると、見積が届いてから金額が動きます。
畳にも同じ形の条件があります。同じ料金表では、切り込みがある場合は1畳あたり1,500円増、厚み3cm以下の薄畳も1,500円増、3階以上でエレベーターが無い場合は「階数×100円×枚数」が加算されます。畳は重いので、運ぶ手間が金額に出るわけです。
見積を頼む前に割っておく条件は4つです。
- いまの床の上に貼れるか、はがす必要があるか
- 下地(根太・合板)が沈んでいないか
- 巾木を替えるか、そのまま残すか
- その部屋は何階で、エレベーターがあるか

床材で変わるのは、退去時に誰が払うかです
ここが本題です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料(令和5年3月・住宅局参事官)は、床材ごとに扱いを分けています。
- カーペット、クッションフロア……耐用年数6年。6年で残存価値1円となる直線を想定して入居者の負担割合を出すため、6年住まれれば負担はほぼ0になります
- 畳表、襖紙、障子紙……消耗品。「経過年数の考えにはなじまない」とされ、経過年数は考慮されません
- フローリング……経過年数を考慮しない。平方メートル単位で入居者が原状回復費用を負担するのが基本。ただし全体を張り替える場合だけは建物の耐用年数(木造22年、RC造47年など)で按分します
この差は、金額にするとかなり大きく出ます。参考資料の計算例では、8畳の部屋・工事費単価15,000円/㎡・4年入居という条件で、
- 部分補修の場合……傷2か所を直すのに必要な2㎡が対象。経過年数を考慮しないので負担割合は100%。2㎡×15,000円×100%=30,000円
- 全体を張り替える場合……築10年の木造アパートで4年入居=14年経過。木造の耐用年数22年で計算して負担割合36.4%。総額195,000円のうち入居者70,909円、大家124,091円
一方、同じ資料のケーススタディでは、6畳の和室のうち2畳分が日照で変色していた畳の表替え30,000円は、全額が大家さん負担と整理されています。日焼けは通常の使用で起きるものだからです。
(出典:国土交通省「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に関する参考資料」令和5年3月)
つまり畳のまま持つなら表替えは大家さんの経費として毎回出ていく、CFにすると6年でほぼ大家さん持ちになる、フローリングは部分補修なら入居者に求めやすいが工事費そのものが高い——この3つの性格を、費用の数字と一緒に並べて決めるということです。なお個別の負担割合は契約書の内容と傷み方によって変わりますので、判断に迷うときは宅建業者や専門家に確認してください。
畳のままでは、もう決まらないのでしょうか
そんなことはありません。単身向けで家具が少ない層や、腰を下ろして暮らす方には畳が選ばれます。判断が分かれるのは6畳2万2,680円の表替えを何年ごとに出すかと、19万8,000円からの洋室化を1回出すかの比較です。表替えを4回まわせば洋室化に届く、という見方をすると決めやすくなります。費用と埋まりやすさの整理は和室を洋室に変えるか|費用と埋まりやすさを判断する順番にまとめています。
床を替える前に効く手が残っていることもあります。家賃を下げる前に試す4つの手と空室の掃除はどこまでやるかを先に確かめてください。ペット可にするかどうかで床材の選択が変わる場合は、築古アパートをペット可にすると何が変わるかも合わせてどうぞ。
今日やることを1つだけ選ぶなら
空室の床を1部屋、部屋の隅に立って足で軽く踏みながら一周してみてください。沈む場所があれば、その部屋は床材の話ではなく下地の話です。沈まなければ、上貼りできる可能性が高い。この5分で、見積の桁が変わります。


