残置エアコンは置いていくか撤去するか|築古アパートのオーナーが入居前に決めること

結論からお伝えすると、前の入居者が置いていったエアコンは、「設備として貸す」か「残置物として渡す」かを、次の募集を出す前に決めてしまうのが、あとがいちばん楽になります。決めないまま「エアコン付き」で募集を始めると、壊れたという連絡が入った日に、直す責任がどちらにあるのかで話が止まってしまいます。

3月の退去立会いでのことです。荷物の運び出しが終わった部屋で、退去する入居者が壁のエアコンを指して「これは置いていきます」と言う。カレンダーの跡が残った壁に、室内機だけが白く残っています。数日後、仲介会社から電話が入ります。「エアコン付きにできますね。そのほうが決まりは早いです」。ここで「じゃあ、それでお願いします」と答えると、決めるべきことを1つ飛ばしたまま募集が始まります。

残置エアコンで決めることを6つ並べた図。設備か残置物かの区別、契約書への記載、撤去してよいかと費用の負担、退去時の扱い、銘板の写真、室外機と配管の確認。

設備と残置物は、何が違うのか

言葉は似ていますが、壊れたときの扱いが変わります。

  • 設備……オーナーの持ち物として、部屋と一緒に貸すもの。故障したときは、一般的にはオーナー側に直す責任が生じるという整理をされます
  • 残置物……前の入居者の私物が部屋に残ったもの。「あるものをそのまま使ってよい。ただし壊れても直さない」という合意のうえで、次の入居者に渡すもの

同じ1台でも、契約書のどちらに書いたかで、8月に「冷えません」と電話が来た日の立場が変わります。ここで気をつけたいのは、入居者から見れば、壁に付いているエアコンはどちらも同じに見えるということです。内見のときに口頭で「これは残置なので」と伝えても、入居して1年後には記憶に残っていないことがあります。書面に残っていない状態で「それは残置物ですから」と説明しても、そのまま納得してもらえるとはかぎりません。

残すと決めたなら、契約書に何を書いておくか

残置物として渡す場合、一般的には次のような点を書面ではっきりさせておく形になります。

  1. そのエアコンが設備ではなく残置物であること
  2. 故障しても、修理や交換をしないこと
  3. 入居者が不要な場合、撤去してよいのか。撤去する費用は誰が負担するのか
  4. 退去するとき、置いたままでよいのか、外して返すのか
  5. そもそも使わずに、自分で新しいエアコンを付けてもよいのか

3番目と4番目は忘れられやすいところです。書いていないと、退去のたびに「これは前の人のものだから、うちは関係ない」という話が繰り返されることになります。

ただし、こうした条項が実際にどこまで有効かは、契約書全体の書き方や個別の事情によって判断が変わる部分です。修繕義務や費用の負担区分は民法や契約の解釈がかかわる領域ですので、文言そのものは管理会社や弁護士に確認したうえで入れてください。

それでも撤去に寄せたほうがいいのは、どんなときか

残せば費用はかかりません。それでも外して入れ直すほうがよい場面があります。判断の材料は、機械そのものを見れば集まります。

室内機と室外機で見るところ

  • 製造年……室内機の右側面か、フィルターを外した内側の銘板に入っています。ここが古ければ、次の入居者が使い始めてすぐ止まることもあります
  • 室外機の据わり……架台が錆びている、置き台が傾いている、押すとぐらつく
  • 配管の保温材……テープが裂けて中の銀色が見えている
  • ドレンの排水先……水が出ている先が分からない、隣の敷地に向いている

もうひとつ、募集の側からの理由があります。「エアコン付き」を条件として前に出したいなら、残置物では武器になりません。壊れても直さないものを付いていますと言うのは、あとで説明が難しくなります。設備が決め手になる部屋かどうかは、昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因や、築古アパートは誰に貸すかのほうから考えると整理しやすくなります。

撤去にも、都合の悪いことがある

外すと決めても、そこで終わりではありません。

  • 撤去そのものに費用がかかります。金額は建物と設置状況で変わるので、数量の入った見積りで2〜3社に出してもらうのが確実です
  • 壁には配管を通した穴が残ります。パテやキャップで塞ぎますが、跡は残ります
  • 室内機を外した壁だけ日焼けの差が出ることがあります。クロスの張り替えと同じタイミングにすると1回で済みます
  • エアコン用のコンセントや配線を触る作業は、一般的に電気工事士の資格が必要とされています。オーナーが自分で外す話ではありません

古い建物では、そもそもエアコン専用のコンセントが無い部屋もあります。その場合は電気側の工事が先に必要になることがありますので、給湯器とエアコンはいつ交換するかで触れている設置年の確認とあわせて、電気工事店に一度見てもらってください。

残置エアコンを撤去に寄せたほうがいいときと、残置物として渡せるときを左右で比べた図。左は製造年が古い・室外機がぐらつく・保温材の破れ・募集の武器にしたい場合、右は契約書と募集図面に残置物と書けて故障時と退去時の扱いも決められる場合。

置くか外すかを決める順番

  1. 退去の立会いで、室内機の銘板を写真に撮る(製造年と型番)
  2. 室外機の据わりと配管の状態を、その場で確認する
  3. 製造年が古い、または状態が悪ければ、撤去して新しく入れるほうに寄せる
  4. 残すと決めたら、契約書と募集図面の両方に「残置物」と書けるかを管理会社に確認する
  5. 書けないなら、残さない。中途半端に付いている状態がいちばん揉めます

相続などで引き継いだ物件では、エアコンだけでなく家具や家電がまとめて残っていることもあります。その場合の進め方は、空き家になった実家を賃貸に出すまでの流れのほうが近い内容です。

まとめ

残置エアコンで困るのは、置いたこと自体ではありません。設備なのか残置物なのかが決まっていないまま入居者が入ってしまうことです。決まってさえいれば、故障の連絡が入っても、その日にやることは動きません。

埼玉県・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでは、前の入居者の設備がそのまま次に引き継がれたままになっている部屋があります。今日やることを1つだけ選ぶなら、いま「エアコン付き」で募集している部屋の契約書を開いて、そのエアコンが設備として書かれているか残置物として書かれているかを確かめてください。どちらとも読めるようなら、次の契約から直せます。

なお、修繕義務や費用の負担をどう定めるかは契約の解釈にかかわりますので、実際の文言は管理会社や弁護士にご確認ください。

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