設備が壊れた連絡が入ったら|賃貸オーナーが修理と交換を分ける判断ライン

結論からお伝えすると、設備が壊れたという連絡が入った日に決めるのは、修理か交換かではありません。決めるのは「その部屋の生活がいま止まっているかどうか」の一点です。止まっているなら、修理も交換も後回しにして手配を先に入れる。止まっていないなら、見積りが出てから落ち着いて決める。この順番を逆にすると、慌てて高いほうを選ぶことになります。

金曜の18時すぎ、入居者から管理会社に電話が入ります。「トイレの水が止まらないんですけど」。土日をはさむと、業者が動けるのは月曜です。翌週、業者から連絡が来ます。「タンクの中の部品は替えられます。ただ、便器のほうが古いので、次はどこが来てもおかしくないですね」。ここで初めて、修理か交換かという話になります。その2つを、電話が鳴った瞬間に考える必要はありません。

設備の故障連絡が入った日にやることを6つ並べた図。生活が止まるかどうかで分ける、止まるものは即日手配、製造年と型番を業者に送る、修理か交換かは設置年と再発と部品在庫で見る、負担区分は契約書を開く、対応後に1行記録を残す。

最初に分けるのは「止まる設備」か「止まらない設備」か

同じ「壊れました」でも、放置できる時間がまったく違います。

  • 止まるもの……給湯、トイレ、水漏れ、鍵が回らない、部屋全体の停電。ここは日程を選ぶ余裕がありません
  • 止まらないもの……換気扇の音、コンロの1口だけ点かない、網戸の破れ、収納の扉、ドアの立て付け

止まるものは、原因を特定する前に手配を入れてかまいません。原因が軽ければキャンセルすればいいだけです。逆に、止まらないものまで即日手配していると、日程を選べたはずの工事まで割高になっていきます。

水漏れのように、放っておくと下の階や躯体に影響が出るものは、止まらないように見えても止まる側に入れてください。初動の順番は雨漏りの連絡が入ったときオーナーが最初にやることと同じ考え方です。

どこで修理をやめて、交換に切り替えるのか

見積りが出てきたあとの判断です。線引きに使えるのは3つで、いずれも金額ではありません。

  1. 設置からの年数……本体に貼られた銘板に製造年が入っています。年数が経っているものは、直した部品とは別のところが次に来ることがあります
  2. 同じ症状の2回目かどうか……1年以内に同じ場所を2回直しているなら、修理は延命の意味しか持ちません
  3. 部品がまだあるかどうか……「この部品はもう在庫が少ない」と言われた時点で、次に壊れたときは修理という選択肢が消えます

この3つが1つも当たらないなら、修理で問題ありません。設置から数年で、原因がはっきりした単発の不具合なら、替える理由がないからです。判断を分けているのは、見積りの金額ではなく設置年です。給湯器やエアコンのように交換時期そのものを計画で決めておける機器については、給湯器とエアコンはいつ交換するかのほうに、年数の目安と台帳の作り方をまとめています。

業者に伝えると判断が早くなること

  • 症状だけでなく、製造年と型番(写真で送るのがいちばん早い)
  • 同じ場所を過去に直しているか。直したのはいつか
  • いま入居中か、空室か
  • この部屋を今後どうするつもりか(長く持つのか、数年で手放す可能性があるのか)
修理でよいときと交換に切り替えるときを左右で比べた図。左は設置から数年・原因がはっきりした単発の不具合・同じ場所は初めて・部品の供給が続いている場合、右は年数が経っている・同じ症状で2回目・部品の在庫が少ない・直しても別の場所が来る場合。

費用は誰が負担するのか

ここは判断が割れやすいところです。一般的には、年数が経ったことによる劣化はオーナー側、入居者の使い方に原因があるものは入居者側という整理をされることが多く、賃貸借契約書に負担区分の表が付いていることもあります。まず契約書を開いてください。

ただし、実際には「劣化なのか使い方なのか」がはっきりしない事例が出てきます。詰まりや破損はとくに分かれます。その場で結論を言わず、管理会社に確認したうえで回答するほうが、あとの関係が荒れません。金額が大きい場合や、入居者との間で意見が食い違う場合は、弁護士にご相談ください。

あわせて、火災保険で対応できることがあります。入居者が加入している保険、オーナーが加入している建物の保険、どちらに該当するかは契約内容によりますので、修理を発注する前に保険会社や代理店に一度確認しておくと、あとから請求できないという事態を避けられます。

交換すると決めたあとに、まだ残る3つの判断

  1. 同等品にするか、上のグレードにするか……募集条件として使えるなら上げる価値があります。ただし、工事の内容によっては税務上の扱いが修繕費ではなくなることがありますので、金額が大きい工事の前に顧問税理士へご確認ください
  2. いま替えるか、退去まで待つか……入居中の工事は在宅をお願いすることになり、日程が読めません。止まらない設備なら、空室になってから原状回復と同時にやるほうが段取りが減ります
  3. 同じ建物の他の部屋も一緒にやるか……同じ年に建てられた建物なら、他の部屋も似た時期に来ます。まとめて発注すると、業者の出入りが1回で済みます

3番目を判断するには、建物全体でどこにお金がかかる予定なのかが見えている必要があります。設備の交換だけを追いかけていると、手元にお金が残らない形になることがありますので、満室なのにお金が残らない築古アパートとあわせて考えてみてください。

1行だけ記録を残す

対応が終わったら、その日のうちに1行書いておきます。項目は5つで足ります。

  • 日付
  • 部屋番号
  • 症状(入居者が言った言葉のまま)
  • やったこと(修理・交換・部品交換)
  • 頼んだ業者

これがあると、次に同じ部屋から連絡が入ったとき、「2回目かどうか」がその場で分かります。3つの線引きのうち1つが、記録だけで判定できるようになります。配管や床下のように、症状が出る前に見ておきたい部分については、築古アパートのシロアリと給排水管はいつ点検するかも同じ台帳に足しておくと管理が楽になります。

まとめ

埼玉県・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでは、設備の履歴が残らないまま所有者が代わった建物があります。履歴がないと、毎回ゼロから考えることになります。

今日やることを1つだけ選ぶなら、直近1年で修理を頼んだ部屋を思い出して、日付・部屋・症状・やったことの4つをメモに書き出してください。次の電話が鳴ったときの判断が、それだけで速くなります。なお、費用の負担区分や税務上の扱いは個別の事情で変わりますので、管理会社・弁護士・税理士にご確認ください。

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