真夏にエアコンが壊れた連絡が来たら|築古アパートのオーナーが最初の24時間で決める順番
今年の夏も各地で厳しい暑さが続いています。体調を崩された方、暑さのなかで大変な思いをされている方に、まずお見舞いを申し上げます。
「エアコンが効かないんですけど」。8月の午後2時、築古アパートの入居者からこの連絡が入ったとき、オーナーが最初に判断するのは修理か交換かではありません。今夜、その部屋で寝られるかどうかです。
結論からお伝えすると、真夏のエアコン故障で決めることは3つあります。①今夜の部屋をどうするか ②修理か交換か ③賃料をどう扱うか。この順番です。②から入ると、見積を待つ数日のあいだ入居者が放置され、直った頃には信頼が残っていません。
今年の夏がどうだったか
気象庁は2026年8月3日に「2026年7月中旬~下旬の顕著な高温と今後の見通しについて」を発表しました。この中で、7月中旬と下旬の西日本の平均気温は、統計を開始した1946年以降で最も高い記録となったことが示されています。あわせて、8月も西日本を中心に気温がかなり高い日が多くなる見込みとされています(2026年8月3日時点の発表内容)。
記録が出たのは西日本ですが、埼玉・千葉県西部・栃木県南部の内陸も、夏の高温と熱帯夜が続く地域です。 ここで言いたいのは「危ないから急げ」ではありません。逆です。連絡が来てから考えると必ず遅れるので、来ていない今のうちに順番だけ決めておく——それだけで当日の判断が変わります。

最初の24時間で決める順番
エアコンの不具合は、原因が確定するまでに時間がかかります。原因が分かる前に、動かせるものから動かします。
- 症状を具体的に聞く——動くが冷えない/まったく動かない/室外機が回っていない/水が漏れる。運転ランプの点滅回数を聞いておくと、業者への連絡が一往復減ります
- その日のうちに見に行ける相手を押さえる——夏場は繁忙期です。「来週の水曜なら」と言われることが普通にあります
- 待つ日数が読めたら、その間の過ごし方を伝える——何日かかるかを伝えないことが、いちばん不信を生みます
- やり取りを日付つきで残す——連絡を受けた日、手配した日、業者の訪問予定日
3つ目で、扇風機や可動式の冷風機を貸し出すオーナーもいます。義務ではありません。 ただ、数千円の判断で「待たされた」が「対応してもらった」に変わる場面ではあります(高齢の入居者が増えた築古アパートの備え)。

賃料は自動で下がるのか
ここは誤解が多いところです。民法第611条第1項は、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額されると定めています。
条文が「減額される」となっている点が重要です。入居者からの請求を待って減るのではなく、要件を満たせば当然に減るという書き方です。「言われていないから満額でいい」という整理にはなりません。
あわせて民法第606条第1項は賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う(賃借人の責めに帰すべき事由による場合を除く)と定めています。備え付けのエアコンは、この修繕義務の対象になるのが通常です。
減額はいくらになるのか
法律は割合の具体的な数字までは決めていません。実務では、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が公表している「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」(令和6年10月4日)が目安として参照されています。このガイドラインでは、エアコンが作動しない場合は賃料減額割合10%・免責日数3日が目安とされ、発生した季節・地域、間取りや設置台数等を考慮して必要に応じて調整する、と注記されています。 減額は日割りで計算する方法が示されています。
ガイドライン自体に「法的拘束力はなく目安を示しているもの」と明記されている点も、押さえておく必要があります。あくまで話し合いの出発点です。
目安に沿って考えると、金額の感覚はつかめます。仮に月額賃料6万円の部屋で、10日間使えなかった場合。免責の3日を除いた7日分を、月30日で日割りし、10%を掛ける——という計算になります。出てくるのは1,400円です。
この数字を見て、多くのオーナーが同じ感想を持ちます。思ったより小さい。 だからこそ判断の軸がはっきりします。真夏のエアコンで失うものは、賃料の1,400円ではありません。 待たされた10日間の記憶が、更新のタイミングと退去後の評判に残ります。減額を値切る交渉に時間を使うより、修理を1日早める交渉に使うほうが、収支としても合います。
個別の減額の可否や割合は契約内容にもよるため、判断に迷う場合は宅地建物取引業者や弁護士に確認してください。
残置エアコンの場合はどうなるか
築古アパートでよくあるのが、前の入居者が置いていったエアコンが、そのまま次の入居者に使われているケースです。設備として貸しているのか、残置物として「あるけれど保証しないもの」として引き渡したのかで、修繕義務の話が分かれます。
分かれ目は契約書と、引き渡し時にどう説明したかです。曖昧なまま夏を迎えると、壊れた当日にその議論から始めることになります(残置エアコンは置いていくか撤去するか)。
来年の夏までに決めておくこと
連絡が来る前に決めておけるのは、次の4つです。
- 各部屋のエアコンの設置年——分からない部屋は、室内機の側面か本体のラベルで製造年を確認しておく
- 交換の判断ライン——何年で、どの症状が出たら修理せず交換に振るか(設備が壊れた連絡が入ったら/給湯器とエアコンはいつ交換するか)
- 夏に動ける業者を1社——繁忙期に電話がつながる相手を、春のうちに決めておく
- 入居者への連絡先の周知——夜間・休日にどこへ連絡するかを、部屋に掲示しておく
1つ目は、空室のうちにやると早く終わります。年数の経った機器は、修理部品の在庫が無く「直せません」で終わることがあります。 真夏にその返事を聞いてから交換を手配すると、入荷と工事でさらに日数が乗ります。交換費用は機種・能力・設置条件で大きく変わるため、複数社から同じ条件で見積を取って比べてください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
所有している部屋のうち、エアコンがいちばん古い1部屋がどこかを特定することです。次に連絡が来るのは、たいていその部屋です。設置年が分かれば、今年直すか来年替えるかを、暑さの中ではなく涼しい部屋で決められます。


