アパートの共用灯は、使えなくなるのではなく作れなくなります|築古オーナーがLED交換を3つの期日で決める

共用廊下の蛍光灯が1本切れて、いつもの電材店に同じ型番を頼んだ。折り返しの電話で「これ、次からは入らないかもしれません」と言われた——2026年に入ってから、こういう連絡が現場で増えています。

結論からお伝えすると、法律が止めたのは「作ること」と「輸入すること」であって、「使うこと」ではありません。いま付いている蛍光灯を外す義務も、在庫のランプを売り買いしてはいけないという決まりも、条文には書かれていません。そのかわり、作れなくなる日は「2027年末」の一本ではなく、2026年・2027年・2028年の三段に分かれています。この記事では、根拠の条文と、共用灯を替えたときに電気代がいくら下がるかの計算、そして替え方で税金の扱いが変わる点を順番に並べます。

禁止されたのは製造と輸入で、使うことではありません

根拠は水銀による環境の汚染の防止に関する法律(平成27年法律第42号)です。条文を開くと、書いてあることは驚くほど短いものでした。

  • 第5条「何人も、特定水銀使用製品を製造してはならない」——止めているのは製造です
  • 第12条「何人も、特定水銀使用製品を部品として他の製品の製造に用いてはならない」——他の製品に組み込むことです

この2本だけです。「使ってはならない」「売ってはならない」「取り外さなければならない」という条文は、この法律にありません。

輸入の側は、この法律ではなく外国為替及び外国貿易法52条の承認で押さえられています。第12条のただし書きが「外国為替及び外国貿易法第52条の承認を受けて輸入された特定水銀使用製品」とわざわざ書いているので、輸入の関門が別の法律にあることが条文からも読み取れます。

つまり、蛇口が2つある——国内で作る蛇口が水銀汚染防止法5条、海外から入れる蛇口が外為法52条。この2つが順に締まっていきます。手元の在庫と、いま天井に付いているものは、その外側にあります。

蛍光ランプが作れなくなる日を四段に並べた図解。2026年1月から2028年1月まで

作れなくなる日は、三段に分かれています

どのランプがいつ「特定水銀使用製品」になるかは、水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令(平成27年政令第378号)第1条が決めています。2024年12月27日の政令第402号が、この第1条を3回に分けて書き換える形になっていました。附則第1条が施行日を並べています。

施行日 第1条がどう変わるか
2026年1月1日(施行済み) 電球形蛍光ランプが「水銀5ミリグラム超」という条件を外れ、定格消費電力30ワット以下であれば水銀の量を問わず対象に
2027年1月1日 コンパクト形と電球形からワット数の条件も消える。直管形のうちハロりん酸塩を使うものも条件が消え、直管形以外(丸形など)でハロりん酸塩を使うものが新しく加わる
2028年1月1日 直管形の三波長形から水銀量とワット数の条件が消える。丸形などの三波長形もここで加わる

(出典:e-Gov法令検索の法令APIで、施行令第1条を2025年12月31日・2026年1月1日・2027年1月1日・2028年1月1日の各時点で取得して突き合わせ。2026年9月12日時点)

ここが読み違えられやすいところです。「2027年末まで」という言い方は、2027年12月31日まで作れる、という意味になります。つまり実際に作れなくなるのは2028年1月1日で、それも直管の三波長形の話です。逆に、電球形はもう2026年1月1日から条件が変わっていて、「まだ先の話」ではありません。

アパートの共用部で実際に効いてくるのはどれですか?

築古アパートの共用廊下・階段・外部照明で多いのは、次の3つです。

  1. 直管形(40形・20形など)——2028年1月1日にそろいます。手持ちの器具がここなら、いちばん時間があります
  2. 丸形(環形)——2027年1月1日から入りはじめます。共用部より住戸内で残っていることが多い形です
  3. 電球形(口金にねじ込むタイプ)——玄関灯・ポーチ灯で使われていることがあり、2026年1月1日の段ですでに動いています

共用灯を替えると、電気代はいくら下がりますか?

ここは自分で計算できます。前提を書いてから計算します。

  • 電力料金の目安単価は1キロワット時あたり31円(税込)。公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が令和4年7月22日に改定した目安単価です(出典:全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問Q&A」Q7・2026年9月12日確認)
  • 40形の直管蛍光灯は、安定器の損失を含めた消費電力がおよそ45ワット。同じ明るさの直管LEDはおよそ20ワット。差は25ワットとします
  • 共用灯の点灯時間は、タイマーで夜間だけ12時間の場合と、24時間つけっぱなしの場合の2つで出します
点灯時間 1灯あたりの年間削減電力量 1灯あたりの年間削減額
1日12時間(年4,380時間) 約110キロワット時 約3,400円
1日24時間(年8,760時間) 約219キロワット時 約6,800円

10灯ある建物なら、夜間だけの点灯でも年3万4千円ほど。つけっぱなしなら年6万8千円ほどです。点灯時間で倍ちがうので、「何灯あるか」より先に「何時間ついているか」を確かめたほうが早い——ここは共用部の電気代が上がったときにオーナーが確かめる順番でも書いたとおりです。

ランプだけ替えるか、器具ごと替えるか

費用は、この2つでまったく別の桁になります。

ランプだけ替える場合の金額は、国税庁が公表している質疑応答事例のなかに具体的な数字が置かれていました。「自社の事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用の取扱いについて」という事例で、ランプの購入費用が1本10,000円、取付工事費が1本1,000円、100本で総額1,100,000円という前提になっています(出典:国税庁 質疑応答事例・法人税。令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)。国が公表した文書のなかにある数字なので、見積りを見るときの物差しに使えます。

器具ごと替える場合は、配線を触るので電気工事士の資格が要る工事になります。公表されている内装の料金表に共用灯の器具交換の項目はありません。共用部の器具そのものの交換は、器具の種類と取り付け高さで見積りが変わるため、金額を1つに決められません。ここは幅を書けないので、書かないことにします。相見積もりを取るときは、器具代・取付手間・既存器具の処分・高所作業の足場や脚立の扱いを、別々の行に書いてもらってください。

既存の器具に直管LEDを挿すだけでは、なぜ済まないのですか?

蛍光灯の器具には安定器が入っていて、直管LEDの多くはこれを通さない配線に変える(バイパスする)必要があるためです。この配線替えは電気工事士法上の工事にあたります。資格の線引きは大家が自分で直してよい範囲はどこまでかと同じで、「自分の建物だから自分で触れる」とはならない領域です。

なお、共用廊下の照明が非常用照明を兼ねている場合は、そもそも替え方の話が変わります。非常用照明は建築基準法施行令126条の4・126条の5の設備で、器具を選べません。自分の建物が対象かどうかは共用廊下に非常用照明は要るのかで先に確かめてください。

ランプだけ替える場合と器具ごと替える場合の違いを左右に並べた比較図

税金の扱いは、工事をしたかどうかで変わります

上で引いた国税庁の質疑応答事例は、結論として「修繕費として処理して差し支えない」としています。理由は「蛍光灯(又は蛍光灯型LEDランプ)は、照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための一つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備として価値等が高まったとまではいえない」というものでした。

ただし、ここを飛ばして読むと間違えます。この事例の【取替の概要】には、はっきりこう書かれています。

この取替えに当たっては、建物の天井のピットに装着された照明設備(建物附属設備)については、特に工事は行われていない。

つまりこの回答は「器具に手を入れずランプだけ替えた場合」の話です。器具ごと交換した場合に同じ結論になるかは、この事例からは読み取れません。修繕費と資本的支出の分け方そのものは20万円と60万円は同じ基準ではありませんにまとめてあります。税務の判断は最終的に税理士・税務署に確認してください。記事はあくまで、どの条文と事例を見に行けばよいかの案内です。

都合の悪いことも書いておきます

  • LEDにしても明るくならないことがあります。既存の器具は反射板やカバーが蛍光灯の光の出方に合わせて作られているため、同じ全光束でも暗く感じることがあります
  • 器具ごと替えると、回収に何年もかかります。1灯あたりの削減が年3,400円で、器具交換に1灯2万円かかれば、単純計算で6年近くです
  • 切れていないものを前倒しで替える必要はありません。法律は使用を止めていないので、切れたときに順に替えるやり方も成り立ちます。ただし在庫がいつ市場から消えるかは、どの条文にも書かれていません
  • 「LEDだから10年もつ」と言い切れません。寿命の表示は器具の設計寿命や点灯条件で変わるため、カタログの数字をそのまま回収計算に入れないほうが安全です

今日やることを1つだけ選ぶなら

共用部を1周して、付いているランプの形と本数を数えてください。直管か、丸形か、電球形か。これだけで、自分の建物に効いてくる期日が2026年・2027年・2028年のどれなのかが決まります。本数が分かれば、上の表に当てはめて年間いくら下がるかもその場で出せます。

共用部の設備をどこまで直すかで迷っているなら、照明器具は付けるか、入居者に任せるかもあわせてどうぞ。住戸内の球と器具の負担区分を、契約書のどこで決めるかの話です。

共用部の工事は、1社の見積りだけで決めると比べる相手がいなくなります。条件をそろえた見積りを複数とってから判断してください。

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