アパートの屋根の太陽光は、24円が10年続くわけではありません|築古オーナーが載せる前に見る4つの数字
結論からお伝えすると、2026年度の太陽光の売電単価は、期間中ずっと同じ金額ではありません。前半だけ高く、後半は8.3円へ落ちる2段の形になりました。10キロワット未満なら24円が4年、そのあと8.3円が6年です。前の年度は15円が10年そのままでしたから、数字の見出しだけを見ると上がったように読めますが、10年ならして比べると14.58円で、前年より下がっています。
築古アパートの屋根に太陽光を置くかどうかは、この単価の形と、あと3つ——積立金・屋根の荷重・工事の順番——を並べてから決めます。順に開いていきます。

2026年度の単価は、なぜ2段になったのか
売電の単価(正式には調達価格)は、経済産業省の調達価格等算定委員会が毎年度決めます。2026年度分は令和8年2月5日の意見でまとまりました。10キロワット未満の住宅用は次のとおりです(出典:調達価格等算定委員会「令和8年度以降(2026年度以降)の調達価格等について」別紙)。
- 2025年度 1キロワット時あたり15円 調達期間10年
- 2026年度 1キロワット時あたり24円(1〜4年目)、1キロワット時あたり8.3円(5〜10年目) 調達期間10年
10年でならすと、24円×4年と8.3円×6年で、1キロワット時あたり14.58円です。前年の15円より0.42円低い。「24円に上がった」と読むと、判断を間違えます。
同じ資料には、10年間の想定値も並んでいます。システム費用は1キロワットあたり25.5万円、運転維持費は1キロワットあたり年0.30万円、設備利用率13.7%、余剰売電比率70.0%、税引前の内部収益率は3.2%。そして調達期間が終わったあとの売電価格は1キロワット時あたり10.0円で見込まれています。11年目からは10円前後という前提で計算されている、ということです。
アパートの屋根は、たいてい10キロワット以上になります
一戸建てなら4〜6キロワットで収まりますが、アパートの屋根は面積が広く、10キロワットを超えることが珍しくありません。10キロワット以上には別の区分があり、2025年度から「屋根設置」と「地上設置」が分かれました。2026年度はこうなっています。
- 屋根設置10キロワット以上 1キロワット時あたり19円(1〜5年目)、1キロワット時あたり8.3円(6〜20年目) 調達期間20年
- 地上設置10キロワット以上50キロワット未満 1キロワット時あたり9.9円 調達期間20年
- 地上設置50キロワット以上(入札対象範囲外) 1キロワット時あたり9.6円 調達期間20年
屋根設置の20年平均は10.98円です。前年度の屋根設置は11.5円が20年そのままでしたから、ここでも平均は下がっています。10キロワット未満と同じ形の変更です。
なお10キロワット以上には、2024年度以降の新規認定分について「発電側課金相当額を加えた額とする」という注記が付いています。単価表の数字がそのまま振り込まれるわけではない、という意味です。調達価格は、認定を受けた人が課税事業者なら消費税を加えた額、免税事業者なら税込の額として扱われます。ここは自分がどちらかで変わります。
地上に置いたほうが有利ではないのですか?
単価だけ見れば屋根設置のほうが高いので、答えは逆になります。そのうえで、同じ資料の注記に期限が書かれています。地上設置(10キロワット以上)の区分は、2027年度以降は支援停止です。2027年度の表に残っているのは屋根設置だけになりました。敷地に架台を組む案を検討しているなら、この一行は先に読んでおくところです。
売電代金から、20年目まで引かれ続けるお金がある
ここが見落とされやすいところです。10キロワット以上の太陽光には、撤去費用を前もって積み立てる義務があります。
根拠は再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法15条の12第2項です。条文は「認定事業者は、積立対象区分等に該当する再生可能エネルギー発電設備を用いて発電した再生可能エネルギー電気を供給するときは……解体等積立金として積み立てなければならない」と書いています。努力義務ではありません。
金額は同法15条の13第1項で、供給した電力量に「解体等積立基準額」を掛けた額と決まっています。2026年度の基準額は次のとおりです。
- 屋根設置10キロワット以上 1キロワット時あたり1.12円
- 地上設置10キロワット以上50キロワット未満 1キロワット時あたり0.60円
- 地上設置50キロワット以上 1キロワット時あたり0.62円
屋根に置いたほうが、積立額は約1.9倍高い。高いところから外すぶん撤去に手間がかかる、という想定が入っているからです。単価が高いことだけを見て屋根設置を選ぶと、この差を勘定に入れそこねます。
積み立てる期間は、同法施行規則13条の4が定めています。調達期間が終わる日から起算して10年前の日以降、最初の検針が行われた日から、調達期間の終了日まで。調達期間が20年なら、11年目から20年目までの10年間です。しかも積立ては自分で振り込むのではなく、同法15条の12第4項により電気事業者を経由して推進機関へ渡ります。売電代金から引かれて積まれていく、と考えてください。ちょうど単価が8.3円に落ちている期間と重なります。
10キロワット未満はこの表の対象外です。積立の義務がかかるのは10キロワット以上だけ、という線引きになっています。

屋根に何キロまで載るかは、法令の表には書かれていません
建築基準法施行令83条1項は、建物にかける荷重として固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧力・地震力の5つを挙げています。パネルと架台は、このうち固定荷重です。
そして同令84条はこう定めています。「建築物の各部の固定荷重は、当該建築物の実況に応じて計算しなければならない」。ただし書きで表の数値を使ってもよいとされていますが、その表に太陽光パネルの欄はありません。つまり、載せてよい重さの答えが法令の表にある、という状態ではないのです。製品ごとの重量を拾って計算するしかありません。
比較の物差しとしては、同じ表の屋根の数値が使えます(単位はいずれも1平方メートルあたりのニュートン)。
- 瓦ぶき(ふき土がある場合) 980
- 瓦ぶき(ふき土がない場合) 640
- 厚形スレートぶき 440
- ガラス屋根 290
- 薄鉄板ぶき 200
- 波形鉄板ぶき(もやに直接ふく場合) 50
1ニュートンはおよそ0.102キログラム重ですから、640は1平方メートルあたり約65キログラムにあたります。瓦屋根とスレート屋根では、もともと載っているものの重さが違う。同じ枚数のパネルでも、屋根の種類によって余力の残り方が違います。ここは建築士に見てもらうところで、記事で判定できる話ではありません。
建築確認は要らないのですか?
屋根に載せるだけなら、確認申請の手続きは通常出てきません。建築基準法87条の4を受けた建築基準法施行令146条1項が、確認を要する建築設備として挙げているのは、エレベーターとエスカレーター、小荷物専用昇降機、そして法12条3項で特定行政庁が指定した建築設備の3つだけで、太陽光発電設備はここに入っていないからです。
ただし、要らないということは誰も構造を見ないまま工事が終わるということでもあります。手続きが無いぶん、見積りを取る段階で「屋根の固定荷重をどう計算したか」を書面でもらっておくほうが安全です。
単価の前提には「自家消費30%」が入っています
屋根設置10キロワット以上の想定値には、自家消費比率30%という数字が置かれています。自家消費分の便益は1キロワット時あたり19.56円で見込まれ、システム費用1キロワットあたり15.0万円、接続費用1キロワットあたり0.3万円、運転維持費1キロワットあたり年0.5万円、設備利用率14.5%、運転年数20年です。
つまり「発電した3割は自分で使う」という前提で単価が組み立てられているということです。ところがアパートの場合、自分で使える先は共用灯・階段灯・ポンプといった共用部に限られます。入居者の各戸へ回すかどうかは電気の売り方そのものの話になり、この記事の範囲を超えます。
先にやることは単純です。共用部の電気を1年で何キロワット時使っているかを、検針票から拾い出す。それが発電見込みの3割に届かないなら、想定どおりの収支にはなりません。共用灯をLEDへ替えたあとなら、使用量はさらに減っています。アパートの共用灯は、使えなくなるのではなく作れなくなりますとアパートの共用部の電気代は10月からどうなるかも合わせて見てください。
いちばん効くのは、順番の話です
単価も積立金も計算できます。あとから取り返せないのは順番のほうです。
パネルの調達期間は20年。一方で屋根は、陸屋根の防水なら十数年、スレートや金属屋根の塗装・葺き替えも同じくらいの周期で回ってきます。パネルを載せたあとに屋根を触ろうとすると、外して・仮置きして・戻すという工程が丸ごと増えます。足場も二重にかかります。
ですから決める順番はこうです。
- 屋根の残り寿命を先に調べる。防水や葺き替えがこの10年に来るなら、先に屋根をやる
- 屋根を直したうえで、固定荷重の余力を建築士に見てもらう
- 共用部の年間使用量を検針票から拾う
- 単価(2段)と積立金(1キロワット時あたり1.12円)を入れて、20年で計算する
順番を逆にすると、屋根の工事のたびにパネルの脱着費用が乗ります。陸屋根の防水はいつやるかと外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかで、周期の考え方をまとめています。積雪の多い地域では垂直積雪量は市町村の規則で決まっていますも併せて読んでください。積雪荷重は令83条1項が挙げた5つの荷重のひとつで、パネルの重さと足し合わさります。
都合の悪いことも書いておきます
売電を始めるには、再エネ特措法9条1項の事業計画認定が要ります。条文は「再生可能エネルギー発電設備ごとに……経済産業大臣の認定を申請することができる」と定めており、設備ごとの手続きです。棟が2つあれば2回です。同条2項8号により、積立の対象になる設備では解体等の方法まで計画に書くことになります。
減価償却や固定資産税の扱い、消費税の課税事業者になるかどうかは、その方の申告の形で変わります。ここは一般論にとどめます。税務署か税理士に、自分の申告書を見せて確かめてください。屋根の構造についても同じで、判断できるのは現地を見た建築士です。
今日やることを1つだけ選ぶなら
屋根の直近の工事記録を出して、前回いつ触ったかを確かめてください。防水も塗装も葺き替えも記録が無いなら、そこが出発点です。単価の計算はそのあとで間に合います。載せたあとで屋根の番が来るのが、いちばん高くつく形です。


