誇大広告を禁じた条文に、大家は出てきません|築古アパートのオーナーが月1回だけポータルの掲載を確認する
結論からお伝えすると、広告の内容について責任を問われるのは、募集を出した仲介会社です。大家さんは、その条文の名あて人になっていません。だからこそ、間違いが載っていても誰も知らせてくれないまま何か月も残ります。月に1回、自分の物件のページを自分で開くしかありません。見るところは6か所だけです。
「誰が責任を負うか」から順に開いていきます。ここを知らないと、直させるときに何を根拠に言えばよいかが分からなくなります。

誇大広告を禁じた条文に、大家は出てきません
不動産の広告を縛っている中心の条文は、宅地建物取引業法32条です。条文をそのまま置きます。
「宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない」
主語は宅地建物取引業者です。物件の持ち主は書かれていません。そして禁じられている対象がここまで具体的に並んでいることにも注目してください。所在・規模・形質・利用の制限・環境・交通の利便、そして借賃等の対価の額と支払方法。家賃も、駅からの距離も、部屋の広さも、全部この列の中にあります。
破ったらどうなるのですか?
軽い話ではありません。同法81条1号により、32条に違反した者は6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です。さらに同法65条2項2号で、32条違反は1年以内の業務停止を命じることができる対象に並んでいます。免許を持って商売をしている会社にとって、業務停止は事業が止まるということです。
つまり仲介会社は、大家さんに言われなくても直す動機を十分に持っています。にもかかわらず古い情報が残るのは、悪意があるからではなく、棟数が多くて手が回っていないことがほとんどです。だから知らせれば直ります。
では、大家はまったくの部外者なのですか
ここは言い切れません。別の法律の入口が開いています。
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)2条1項は、この法律の「事業者」を「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」と定義しています。宅建業者に限っていません。同条3項には「不動産に関する取引を含む」という括弧書きがあり、同条4項は「表示」を「事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示」としています。
そして5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について」次の表示をしてはならない、と定めます。1号が実際より著しく優良と見せる表示、2号が価格その他の取引条件を著しく有利と誤認させる表示です。
賃貸住宅を貸しているのは大家さんですから、「事業者ではない」とは言いにくい立場です。広告そのものを出したのが仲介会社だったとして、その中身を決めて渡したのが大家さんなら、無関係で通るかどうかは簡単ではありません。ここは法律の判断が分かれるところなので、断定はしません。気になる案件がある方は弁護士か、免許を出している都道府県の宅建業の窓口に確かめてください。
実務として言えるのはこれだけです。「仲介が出した広告だから自分は関係ない」という前提で放っておくのは、安全側の判断ではありません。
月1回、開いて見る6か所
ここからは手順です。自分の物件名か住所で検索して、出てきたページを上から見ます。5分で終わります。
- 家賃・共益費・敷金・礼金が、自分が指示した金額か。条件を下げた月は特に見る。前の条件のまま残っていることがあります
- 入居可能時期の欄。ここが過去の日付のまま止まっていると、決まらない部屋に見えます
- 写真が自分の部屋か。同じ間取りの別室の写真が使い回されていることがあります。設備の型が違えば、内見で話が食い違います
- 設備欄に、無いものが載っていないか。ここがいちばん危ない。エアコン・洗濯機置場・独立洗面台・宅配ボックスの4つは特に確かめる
- 決まった部屋が残っていないか。1棟のうち1室だけ決まったとき、掲載の取り下げが漏れます
- 同じ部屋が、複数の会社から違う条件で出ていないか。片方だけ古い条件だと、安いほうに問い合わせが行きます
4つ目と5つ目は、32条が挙げた「形質」と「所在」にまっすぐ当たります。無い設備を載せるのは、実際のものより著しく優良と見せる表示そのものです。直させるのは仲介会社の身を守ることでもある——そう伝えると話が早く進みます。
広さの表記と募集図面の欄については登記の床面積は壁の中心線、募集図面は切り捨て可ですと募集図面(マイソク)でオーナーが必ず直させる7つの欄にまとめてあります。写真の枚数と順番は募集写真は何枚・どの順番で載せるかです。募集をいつ開始するか、掲載がいつまで残せるかという時期の話は空室の募集開始はいつにするかのほうが詳しいので、そちらに譲ります。

直させる根拠は、法律ではなく契約です
ここが今日いちばん伝えたいところです。
間違いを見つけても、大家さんが宅建業法32条を根拠に「直せ」と命じることはできません。32条は国と都道府県が宅建業者を監督するための条文で、大家さんに権利を与える条文ではないからです。行政処分を出すのは免許を出した知事か国土交通大臣で、大家さんではありません。
では何を根拠にするか。媒介契約と管理委託契約です。募集の内容をどう出すか、条件を変えたときにいつまでに反映するかは、契約で決める話になります。契約書に書いていないなら、次の更新のときに一文足しておく。「募集条件を変更した場合は、◯営業日以内に掲載中の全媒体へ反映する」——それだけで、言うときの立場が変わります。
広告料(AD)を出している物件なら、なおさら掲載の状態は確かめるところです。広告料(AD)を出す前に確かめる3点と仲介会社に物件を覚えてもらうにはも合わせてどうぞ。
都合の悪いことも書いておきます
月1回見たところで、反響が増えるわけではありません。これは守りの作業です。間違いを減らして、来たはずの問い合わせを落とさないためのもので、決まる速さを上げる打ち手は別にあります。
それから、あまり細かく指摘しすぎると、仲介会社の担当者の手が止まります。まとめて月1回、リストにして渡す。思いついた順に1件ずつ電話するのがいちばん嫌われます。相手の時間もこちらの募集力です。
今日やることを1つだけ選ぶなら
自分の物件名で検索して、設備欄だけを見てください。無いものが載っていないか。そこだけで構いません。1棟5分、月に1回。見つかったら、次の連絡のついでにまとめて渡す。それで十分です。


