築古の賃貸を国がどう扱うかが決まりつつある|大家が意見を出せる窓口は2026年9月15日まで
結論からお伝えすると、築古の賃貸を「この先どう扱うか」の国の方針が、いま素案づくりの段階に入っています。国土交通省は令和9年春に「建築分野の中長期的なビジョン(仮称)」をとりまとめる予定で、その第3回検討会が2026年8月31日に開かれます。意見を出す窓口は開いています。意見箱の締切は2026年9月15日。そして、これまでに意見を出した99人のうち、建物所有者(オーナー)の立場からの人は2%でした。
第2回検討会(2026年6月29日)の参考資料に、意見箱に寄せられた意見の集計が載っています。回答者99名の内訳は、設計者39%、行政職員18%、施工者17%、その他15%。建物所有者(オーナー)2%、開発事業者2%、コンサルタント2%、建物管理者1%、建物利用者1%。建物を持っている側の声が、いちばん薄いという円グラフです。都道府県別では東京都が35名で最多、埼玉県は5名でした(集計は2026年6月25日時点)。

何が議論されているのか
検討会は5つの分野別ワーキンググループに分かれています。ストック/担い手/質・技術/DX/市街地の5つです。このうち築古の賃貸を持つ側に直接関わるのが、既存の建物の使い方を扱う「ストックWG」です。
資料に置かれている前提の数字は次のとおりです。
- 住宅ストック数は約6,500万戸(うち居住世帯あり約5,600万戸)から約6,300万戸(うち居住世帯あり約5,300万戸)へ
- 2048年の居住世帯のある住宅の少なくとも6割は2000年以降に新築された住宅ストック
- 所属建築士は半減。人口1,000人あたりの建築士数も約2割減(1.11人(2017年)から0.66人(2044年))
- 住宅建設技能者は2040年には4割近く減少(2020年比)するとの予測
ここは読み方に注意が要ります。資料には「統計データを基にしたコーホート推計及びトレンド推計によるものであり、社会・経済的要因等を加味して着工数や空き家数等を精緻に推計したものではない」と注記されています。将来の確定値ではなく、議論の前提として置かれた数字です。
築古を持っている側に、そのまま効く3つの記述
ストックWGの議論の概要には、築古アパートのオーナーが読むと手が止まる行が並んでいます。
- 「耐用年数を過ぎると価値がないというマインドを変え、ストックに価値があるものと考えると、非常に大きな経済効果がある」
- 「外壁落下、配管の漏れ、耐震補強、この3つのポイントをクリアできた場合、築100年が見えてくるのではないか」
- 「ストック活用の起点となる所有者の役割の拡大」(担い手のあり方の短期的な視点として)
2つ目は、日々の判断とほぼ同じ順番です。外壁、配管、耐震。ここを外さなければ建物は続く、という話が国の検討会の議事に載っているという事実には、それなりの重さがあります。外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかと築古アパートのシロアリと給排水管はいつ点検するかは、まさにこの1つ目と2つ目の話です。
もう1つ、「戸建て住宅の日常的な維持管理やメンテナンス、経営などを専門とする裾野の広いアドバイザーがいてもいいのではないか」という発言も記録されています。相談先が足りていない、という認識は共有されているということです。
都合のよくない記述も、同じ資料にあります
同じページに、こういう議論も並んでいます。
- 「インフラが維持できないエリアのストックは残さないという判断もあるのではないか」
- 「バランスシートの適正化が求められる企業と異なり、個人は保有するストックの量を調整する動機がない」
- 「エリア単位で残すストック、残さないストックがどうあるべきかを考えていくことが必要」
いずれも議論用のたたき台であり、決まった方針ではありません(資料にその旨が明記されています)。煽る話でもありません。ただ、こういう言葉が検討の場に出ていることは、知っておいて損はないと思います。2つ目は、個人で持っている大家が名指しされている行です。
大家でも意見を出せるのですか?
出せます。意見箱の趣旨に、対象がこう書かれています。
「建築物の設計者・施工者・管理者・所有者等の幅広い関係者からの意見を伺うため、意見箱を設置することといたしました」
所有者は、名指しで入っています。要件は次のとおりです(2026年8月29日時点)。
- 募集期間:令和8年4月21日〜令和8年9月15日(2026年8月7日に、9月15日まで延長されました)
- 提出項目:氏名/所属、年齢/所在地、メールアドレス、お立場(職種)、ご意見分類、ご意見の内容(200字以内)、ご意見の背景・理由
- 回答フォームからの提出。アクセスできない場合は指定様式でメール送付
- お立場・意見分類・意見の内容は公表されます(設問に【公表】と付記された項目)
- 個別の回答はありません。同一の人・団体からの複数意見は1件に集約されることがあります
- 意見箱の運営は、国土交通省から委託を受けた株式会社アルテップが実施
あわせて、連続シンポジウムの第3回「市街地・まちづくりの視点から」が2026年9月7日(月)14時〜16時40分に開かれ、聴講の申込を受け付けています。第1回・第2回はアーカイブが公開されています。

200字に何を書くか
意見の大分類の集計を見ると、寄せられた253件のうち「既存ストックの活用」は11%です。いちばん多いのは地球環境問題24%、次いで人材確保・育成22%、建築物の質19%。設計者と行政職員が多いので、意見の中身もそちらに寄ります。
逆に言えば、現場で建物を回している側にしか書けないことが残っています。
- 見積書が「一式」の1行で出てくること(原状回復の見積書は「一式」の行から見る)
- 小さな工事を受けてくれる職人が減っていること
- 築40年の建物をどう直すかを教えてくれる相手がいないこと
- 設備が壊れたときに、何日で直すべきかの目安が共有されていないこと(入居中に設備が壊れたとき、どこまで急ぐのか)
200字なので、1つに絞ったほうが通ります。困っている場面を1つ、数字を1つ。それだけで十分です。
今日やることを1つだけ選ぶなら
この1年で「誰にも聞けなかったこと」を1つ、200字で書いてみてください。出す・出さないは後で決めて構いません。締切は2026年9月15日です。99人中2人しか所有者がいない集計は、裏を返せば、1人増えるだけで割合が動くということです。
出典
- 国土交通省「建築分野の中長期的なビジョン策定に向けて議論します!〜第3回『建築分野の中長期的なあり方に関する検討会』の開催〜」(2026年8月26日報道発表)
- 国土交通省「建築分野の中長期的なあり方に関する検討会」第2回(2026年6月29日)配付資料 資料2「各WGの議論の状況」、参考資料「建築分野における中長期的なあり方に関する意見箱への意見について」
- 国土交通省「建築分野の中長期的なあり方に関する意見箱」(募集期間・提出項目・留意事項。2026年8月29日確認)


