保証人も保証会社も付けられない申込が来たとき|築古アパートのオーナーが断る前に見る3つの制度

仲介会社から電話が入ります。「保証会社の審査が通りませんでした。ご親族の連帯保証人も立てられないそうです」。受話器の向こうで担当者が言葉を選んでいるのが分かります。空室は4か月目。内見はこの1件だけでした。オーナーは「じゃあ、難しいですね」と答えて電話を切ります。次の内見の予定は、入っていません。

結論からお伝えすると、「保証会社に断られた」は「どの保証会社にも断られた」ではありません。家賃債務保証の世界は2025年10月に制度が一段増えており、国が認定した家賃債務保証業者と、その保証に住宅金融支援機構が保険を付ける仕組みが動いています。しかもその保険は、保証人がいないことを前提に組まれています。断る前に確かめる先が3つあります。

保証人も保証会社も付けられない申込を断る前に見る5つ。認定業者は全国12者、機構の保険は事業者が入るもので、保証人を付けると対象外になる。居住支援法人は全国1,196法人。

なぜ「保証会社に断られた」で話が終わってしまうのか

オーナーの手元に届く情報は、たいてい「審査NGでした」の一言です。どの会社に出したのか、その会社が何を見て落としたのか、別の枠組みがあるのかは、ふつう伝わってきません。

国土交通省に登録している家賃債務保証業者は123者あります(令和8年8月13日時点・登録家賃債務保証業者一覧)。仲介会社が使うのはそのうちの2〜3社で、審査の物差しも会社ごとに違います。1社の結果を業界全体の結論として受け取ると、判断を1社に預けたのと同じことになります。

① 国が認定した家賃債務保証業者は、全国で12者しかない

2025年10月1日から、住宅セーフティネット法に認定家賃債務保証業者という枠ができました。登録より一段上の枠で、国土交通大臣が認定します。

認定されている事業者は、全国で12者です(令和8年7月31日時点・国土交通省「認定家賃債務保証業者一覧」)。123者の登録に対して12者。一覧はページを1枚開けば全部読み切れます。

認定の基準は法律に書かれています(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律 第72条第1項)。要点は2つです。

  • 第1号:認定住宅の賃貸借契約を結ぼうとする住宅確保要配慮者から保証の申込みがあった場合に、正当な理由なくこれを拒まないこと
  • 第2号:保証契約の締結の条件として、親族その他の関係者の連絡先に関する情報の提供を求めないこと

ここが効きます。「親族の連絡先を出せないなら受けられない」という運用そのものが、認定の要件と正面からぶつかっているのです。認定業者にとっては、親族の連絡先が無いことは断る理由になりません。

なお「住宅確保要配慮者」は、高齢者・18歳以下の子どもを養育している人・生活困窮者・低額所得者・障がいのある人・災害の被災者(発災から3年未満)・外国人などが含まれます。築古アパートに申込が入る層と、かなり重なります。

② 機構の保険は、大家さんが入る保険ではない

「国の保険がある」と聞いて、オーナーが自分で加入するものだと受け取る方がいます。違います。

住宅金融支援機構は、家賃債務保証保険についてこう書いています。「家賃債務保証保険は機構と家賃債務保証事業者との間で契約する保険です。機構と賃貸住宅に入居される方が直接契約する保険ではありません」(住宅金融支援機構「家賃債務保証保険事業の概要」)。

つまりオーナーがやることは、加入手続きではありません。「その保証会社は、機構の保険を使っているか」を聞くことだけです。保険料は当初月額家賃の25〜35%を、付保時に1回だけ保証事業者が払います(出典:住宅金融支援機構「家賃債務保証保険のご案内」令和8年4月1日)。オーナーの負担ではありません。

「他に保証人を付けない」ことが、保険の条件になっている

同じ案内の付保要件に、こう書かれています。

「保証委託契約において、他に保証人又は連帯保証人を設定していないこと(緊急連絡先を届け出させることは可能)」

読み違えやすいところなので、2つに分けます。

  • 保証会社と連帯保証人の両方を求める運用は、この保険の対象から外れます。「念のため両方」は、安全側に倒しているつもりで、公的な裏付けが付く道を自分で閉じている場合があります
  • 緊急連絡先の届出は、括弧書きで明示的に認められています。「保証人が立てられない=連絡先も取れない」ではありません

登録住宅でなくても使える商品がある

もうひとつの誤解が「うちはセーフティネットの登録住宅じゃないから関係ない」です。案内の表を見ると、保険は2種類・計5商品あり、そのうち【B-1】【B-2】は対象住宅が「限定なし」と書かれています。一般の賃貸住宅も対象です(認定保証業者が利用する場合)。

原状回復費用・残置物撤去費用・特殊清掃費用まで対象になる商品がある

オーナーがいちばん怖いのは、滞納そのものよりそのあとに残るものです。案内の保険対象範囲を見ると、家賃債務だけの商品と、家賃債務+原状回復費用+残置物撤去費用+特殊清掃費用まで含む商品(B-2・B-4)があります。

填補割合は対象住宅によって7割または9割、保険金の支払額は「代位弁済額×割合」「当初月額家賃の12か月分または18か月分×割合」「100万円」のうちいちばん小さい額です。上限100万円は覚えておいてください。青天井ではありません。

これは保証事業者が受け取る保険金であって、オーナーに直接支払われるものではありません。ただし事業者側のリスクが下がる=審査で受けられる幅が広がるという意味で、申込を通す側の材料になります。

③ 緊急連絡先は、親族でなくてもよい

「頼れる親族がいない」で止まる申込があります。ここに居住支援法人という受け皿があります。都道府県が指定する法人で(住宅セーフティネット法第59条)、全国で1,196法人あります(国土交通省「居住支援法人一覧」令和8年6月30日更新)。

業務として国が挙げているのは次のとおりです(国土交通省「居住支援法人制度の概要」)。

  1. 登録住宅の入居者への家賃債務保証
  2. 賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供・相談
  3. 見守りなど要配慮者への生活支援
  4. 賃貸人への賃貸住宅の供給の促進に関する情報提供
  5. 残置物処理等(モデル契約条項を活用して実施)

4番目に「賃貸人への情報提供」が入っている点に注目してください。入居者側の支援団体だと思われがちですが、オーナーが相談してよい相手として制度に書かれています。

一覧は都道府県ごとに並んでおり、対応エリアが「全域」の法人と市町村単位の法人があります。埼玉県・千葉県・栃木県のオーナーは、自分の物件の市町村を担当している法人を先に見ておくと、次に同じ申込が来たときに1本電話をかけられます。

なお、居住支援法人が家賃債務保証まで行うには、債務保証業務に関する規程を定めて都道府県知事の認可を受ける必要があります。すべての法人が保証をしているわけではありません。

家賃債務保証をめぐるよくある思い込みと、制度に書かれていることの対比。認定は全国12者、保険は機構と事業者の契約、対象住宅が限定なしの商品もあり、保証人を付けると対象外。

では、何を基準に審査すればいいのか

保証人という物差しを外すと、代わりの物差しが要ります。機構の保険の付保要件が、そのまま参考になります。

  • 収入:保証委託者(賃借人)の月収が、保証開始日における家賃月額の2倍以上あること
  • 本人確認:保証事業者が本人確認を行っていること
  • 反社会的勢力の排除

家賃6万円の部屋なら月収12万円以上。厳しすぎず、緩すぎない線です。「保証人がいるか」ではなく「毎月払えるか」を見る形に、国の制度側も揃っています。入居審査で見てよい点と見てはいけない点は入居審査でオーナーが見る点と、見てはいけない点に分けて置いてあります。

保証会社そのものの選び方・加入前に決めることは家賃保証会社は築古物件でも使えるのかにまとめています。高齢の入居者が増えたときの備えは高齢の入居者が増えた築古アパートの備え、外国籍の方の申込は外国籍の入居希望者を受け入れるときの実務が対になります。

なお、個々の契約の可否や条項の書き方は、物件と契約書の内容で変わります。判断に迷うものは宅地建物取引士や弁護士など専門家に確認してください。ここに書いたのは、断る前に確かめられる公的な材料の位置です。

今日やることを1つだけ選ぶなら

いま使っている保証会社に、電話で1つだけ聞いてください。「御社は住宅金融支援機構の家賃債務保証保険を使っていますか。原状回復費用と残置物撤去費用まで入る商品は扱っていますか」。

この一言で、次に「保証人が立てられない」申込が来たときの選択肢が変わります。答えが「使っていない」なら、認定を受けた12者の一覧を開いてみる番です。空室4か月目に届いた1件を、電話1本の情報不足で見送るのは、いちばんもったいない失い方です。

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