新築から10年の保証は、建物ではなく契約に付いています|築古アパートのオーナーが売買の前に分ける3つの責任

築28年のアパートを売りに出したところ、買主側の担当者から「構造の10年保証は残っていますか」と聞かれた。手元には新築時の書類一式があり、その中に「10年」と書かれた紙も入っている。こちらとしては、あると答えていいのか分からない。売買の場では、この確認がほぼ必ず出てきます。

結論からお伝えすると、いわゆる新築10年の保証は、建物に付いているのではなく契約に付いています。買主が代われば、原則としてそこで切れます。しかも法律上の「新築住宅」は、完成から1年たった時点で終わります。誰も住んでいなくても、です。まずここを分けないと、売買の交渉が噛み合いません。

新築10年の保証が誰に付くのかを並べた図。引き渡した人と受けた人の間で働く、対象は骨組みと雨のみち、新築は1年で終わる、売っても移らない、古い建物で効くのは民法の条文。

「10年」の正体は、品確法94条と95条です

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第94条第1項は、住宅を新築する建設工事の請負契約について、「請負人は、注文者に引き渡した時から十年間……瑕疵について……担保の責任を負う」と定めています。第95条第1項は同じことを新築住宅の売買契約について定め、売主が買主に引き渡した時から10年としています。

そして第94条第2項・第95条第2項は、「前項の規定に反する特約で注文者(買主)に不利なものは、無効とする」と書いています。これが「外せない10年」と呼ばれる根拠です。第97条では、逆に引渡しから20年以内まで伸ばすことができると定められています。

建物の全部が対象ではありません

ここが実務でいちばん取り違えられます。94条・95条の対象は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」だけで、中身は同法施行令第5条が名指しで並べています。

  • 構造耐力上主要な部分=基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい・方づえ・火打材など)、床版、屋根版、横架材(はり・けたなど)。ただし自重や積載荷重、積雪、風圧、土圧、水圧、地震などを支えるものに限られます
  • 雨水の浸入を防止する部分=屋根、外壁、これらの開口部に設ける戸・わく・その他の建具。そして雨水を排除するための排水管のうち、屋根か外壁の内部または屋内にある部分

給湯器もエアコンも、室内の内装も、この2つには入っていません。設備の不具合を「10年保証があるはず」と言われても、条文の側からは出てきません。設備の故障をどこまで急ぐかは入居中に設備が壊れたとき、どこまで急ぐのか|築古アパートのオーナーが連絡の日から数える3つの期限に分けて書いています。

「新築住宅」は1年で終わります

品確法第2条第2項の定義がこうなっています。

「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)をいう

2つの条件が両方必要です。①まだ誰も住んでいない ②完成から1年たっていない。つまり完成して1年2か月たった未入居の部屋は、もう法律上の新築住宅ではありません。この日から、95条の10年義務も、次に書く供託・保険の仕組みも、新しく発生しません。

では、築28年のアパートを買った人に10年は残りますか?

残りません。95条の責任は「その新築住宅の売主」と「その買主」の間に発生するものだからです。買主だった人が次の人へ売っても、その契約はまったく別の契約で、最初の売主は当事者になりません。

都合の悪いことも書きます。例外があるとすれば、契約でその権利を譲る取り決めをしているときです。新築時の売買契約書や、前のオーナーが交わした覚書に何か書かれていないか、売る前に確認してください。「たぶん残っていない」で進めると、あとで揉める材料になります。売る前に集める書類はアパートの修繕履歴は重要事項説明に出てきません|築古アパートのオーナーが売る前にまとめる4つの束にまとめました。

供託と保険も、新築住宅だけの仕組みです

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(履行確保法)は、10年の責任を負う業者が倒れたときに備えるための法律です。第3条第1項は建設業者に、第11条第1項は宅地建物取引業者に、毎年、基準日(3月31日)から3週間を経過する日までに、その基準日前10年間に引き渡した新築住宅について保証金を供託していなければならないと義務づけています。保険に入っていればその分は除かれます。

保険の中身も条文に書かれています。第2条第6項第3号・第7項第3号で保険金額は2,000万円以上、同項第4号で引渡しから10年以上有効、第5号で国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、変更も解除もできないとされています。

ここでも入口は「新築住宅」です。築古の売買には、この供託・保険の仕組みがそもそも働きません。

新築住宅の売買と築古の売買で働く法律を比べた図。新築住宅は品確法95条で10年、不利な特約は無効、供託か保険が義務。築古は民法566条、知った時から1年以内の通知、宅建業者が売主なら2年以上。

では、築古の売買で働くものは何か

  1. 民法第566条——買主が種類・品質の不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、追完請求・代金減額・損害賠償・解除ができなくなります。ただし売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この制限がかかりません
  2. 宅地建物取引業法第40条——売主が宅建業者のときだけ働きます。「引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き」民法566条より買主に不利な特約はできず、違反した特約は第2項で無効になります。逆に言えば、オーナー個人が売主のときは、この制限がかかりません
  3. 既存住宅の売買を対象にした瑕疵保険——国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人が扱っています。これは義務ではなく任意で、加入には現況検査が要るのが一般的です。条件は法人ごとに違うので、使えるかどうかは検査を頼む前に確認してください

売主が宅建業者になる買取と、仲介との違いは買取のとき、宅建業法のいわゆる八種制限は働きません|築古アパートのオーナーが仲介と比べる3つの物差しで整理しています。

都合の悪いことも書いておきます

個人間の売買では、契約不適合責任を一切負わないという特約も有効になり得ます。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでは、この形の契約は珍しくありません。売る側には有利に見えますが、買主が住宅ローンを使う場合に金融機関から嫌われることがあり、結果として価格を下げる方向に働くこともあります。どちらが得かは物件と相手によって変わります。

なお、ここに書いたのは条文の位置関係です。個別の契約でどこまで責任が残るかは法律の判断になりますので、契約書を持って弁護士や司法書士に確認してください。税務の扱いも別途、税理士か税務署にご相談ください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

新築時の売買契約書か請負契約書を出して、「引渡日」を確かめてください。そこから10年が経過していれば、94条・95条の話はもう終わっています。経過していなくても、いま持っているのが2人目・3人目のオーナーなら、その責任は自分には付いてきていません。「保証が残っているかもしれない」で交渉を始めるより、終わっている前提で、どこまで自分が負うかを決めるほうが早く進みます。満室と空室のどちらで売るかは築古アパートを売るなら満室にしてからか空室のままか|オーナーが決める順番を先に読んでください。

出典

  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)第2条・第94条・第95条・第97条、同法施行令(平成12年政令第64号)第5条(e-Gov法令検索・2026年9月17日時点)
  • 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成19年法律第66号)第2条・第3条・第11条(同上)
  • 民法(明治29年法律第89号)第566条、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第40条(同上)

Follow me!