石綿と耐震の欄は、調べていなければ「無し」で通ります|築古アパートのオーナーが重要事項説明で聞かれる10項目

仲介会社から一枚のファックスが届いた。「重要事項説明の準備で、確認させてください」。並んでいたのは、石綿の調査記録、耐震診断の結果、土砂災害警戒区域、そして敷金以外に精算するお金があるか。築42年の木造アパートで、どれも手元に紙がない。担当者に「調べていないんですが」と伝えると、返ってきたのは「では無しで進めます」だった。

結論からお伝えすると、築古で聞かれる項目のうち、石綿の調査と耐震診断は「していないなら、していないで通る」作りになっています。宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3が、石綿は「調査の結果が記録されているとき」、耐震診断は「耐震診断を受けたものであるとき」と、条件付きで書いているためです。オーナーに調査や診断そのものを命じる条文ではありません。

築古の建物を貸すときに重要事項説明へ追加される項目を6つ並べた図。区域に入っているか、水の図面の位置、石綿の調査の記録、昭和56年より前の建物、台所や浴室の状況、あとで精算するお金。

建物を貸すときに追加で聞かれるのは、この10項目です

重要事項説明の項目は宅建業法第35条にありますが、その第1項第14号ロが国土交通省令に委任していて、中身は施行規則第16条の4の3にあります。この条文は1つの条に13号を並べ、取引の種類ごとに、どの号を使うかを冒頭で振り分けています。

建物の貸借の契約に使うのは第1号から第5号まで、および第7号から第12号まで。第6号(新築住宅の住宅性能評価)と第13号(宅地上の建物の取壊し)は入りません。

  • 第1号——造成宅地防災区域内にあるときは、その旨
  • 第2号——土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨
  • 第3号——津波災害警戒区域内にあるときは、その旨
  • 第3号の2——水防法施行規則第11条第1号により市町村長が提供する図面に位置が表示されているときは、その所在地
  • 第4号——石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容
  • 第5号——昭和56年6月1日より前に新築工事に着手した建物が耐震診断を受けたものであるときは、その内容
  • 第7号——台所、浴室、便所その他の設備の整備の状況
  • 第8号——契約期間および契約の更新に関する事項
  • 第9号——定期借家、終身建物賃貸借に当たるときは、その旨
  • 第10号——用途その他の利用に係る制限に関する事項
  • 第11号——契約終了時に精算することとされている金銭の精算に関する事項
  • 第12号——管理が委託されているときは、委託を受けている者の氏名および住所

第1号の造成宅地防災区域は、宅地造成及び特定盛土等規制法第45条第1項によるものです。以前の宅地造成等規制法が改正されて名前が変わっているため、古い書式のままの重要事項説明書だと、旧法の名前で印刷されていることがあります。

石綿と耐震は、なぜ「無し」で通るのですか?

条文の書き方が、ほかの号と違うからです。第1号から第3号は「区域内にあるときは、その旨」で、区域の指定は行政がしているので、調べれば必ず答えが出ます。

これに対して第4号は「調査の結果が記録されているときは、その内容」です。記録が存在しないなら、説明する内容そのものが存在しません。宅建業者に調査を実施する義務はなく、オーナーに調査を命じる条文でもありません。調査記録があるのに渡さなかった場合に問題になる、という向きの条文です。

第5号も同じ形で、しかも診断をした人が4種類に限定されています。建築物の耐震改修の促進に関する法律第4条第1項の基本方針のうち、同条第2項第3号の技術上の指針となるべき事項に基づいて、次の者が行った診断であることが条件です。

  1. 指定確認検査機関(建築基準法第77条の21第1項)
  2. 建築士
  3. 登録住宅性能評価機関(住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条第1項)
  4. 地方公共団体

付き合いのある工務店に見てもらって「まあ大丈夫でしょう」と言われた、という話は、この4者にも基本方針にも当たりません。説明書に書く対象ではないし、逆に「診断済み」と伝えるのも正しくありません。旧耐震のアパートを持ち続けるときの順番で扱った診断とは、そもそも意味が違う話です。

なお、対象は「昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く」と書かれています。基準になるのは完成日でも登記の日でもなく、着手した日です。登記簿の新築年月日が昭和56年でも、着手が5月31日以前かどうかで扱いが分かれます。

重要事項説明の項目を必ず伝える欄と、記録があるときだけの欄に分けた図。左は区域や水の図面や設備や精算するお金、右は石綿の調査記録と耐震診断で、調べる決まりは条文にないこと。

第11号は「敷金」とは書いていません

見落としやすいのが第11号です。条文はこうなっています。

「敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項」

「いかなる名義をもつて授受されるかを問わず」という一文が入っています。つまり敷金という名前でなくても、契約終了時に精算するお金なら、全部この号の対象です。保証金、預り金、クリーニング費の前受け——名前を変えても外れません。

逆に言えば、礼金のように精算しないお金は、この号ではなく契約条件の側で扱われます。オーナーの側でここを整理しておくと、募集条件を組み替えるときに何を説明書に載せることになるのかが先に見えます。鍵交換の費用を誰が払うかのように、特約で決めているお金は、その特約の中身まで見られます。

設備の整備の状況は、どこまで書くのですか?

第7号は「台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備の状況」です。3つの設備を例示したうえで「その他の」と続けているので、給湯、冷暖房、給排水も入ります。築古で問題になりやすいのは、あるかないかではなく、残置なのか設備なのかの区別です。

入居者から見れば、部屋に付いているエアコンが壊れたときに直してもらえるかどうかは、この区別で決まります。ここを曖昧にしたまま貸すと、入居中に必ずもめます。残置エアコンを置いていくか撤去するかを先に決めておくと、説明書に書く内容も1行で決まります。

オーナーが先に用意しておくもの

重要事項説明そのものは宅建業者が借主に対して行うもので、オーナーが説明する書面ではありません。ただし中身の材料は、ほとんどがオーナーの手元にあります。

  1. 着手日が分かる資料——確認済証、検査済証、登記簿。第5号の入口です
  2. 過去に石綿の調査をしたときの記録——改修や解体の際に取った報告書があれば、第4号の対象になります
  3. 市町村のハザードマップ上の位置——第3号の2で使います
  4. 精算するお金の一覧——名前を問わず全部(第11号)
  5. 管理委託先の商号と所在地——第12号。委託先を変えたら、そのつど差し替えます

売買のときは、これに修繕履歴と建物状況調査の話が乗ってきます。貸すときと売るときでは、聞かれる号そのものが違うので、同じ書類の束で両方に間に合うとは限りません。

条文の当てはめ、とくに区域指定や着手日の判断は、個別の事情で結論が変わります。この記事は条文がどこで条件を付けているかを並べたもので、個別の物件の判定をするものではありません。実際の説明書の作成は宅建業者が行い、迷う点は所管の窓口や建築士にご確認ください。

今日やることを1つだけ選ぶなら、確認済証か検査済証を探して、工事に着手した日が昭和56年5月31日より前かどうかだけ見てください。ここが分かれば、第5号の欄を毎回「不明」で埋めずにすみます。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の木造アパートは、ちょうどこの前後に建ったものが多く、1年違いで扱いが分かれます。

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