真冬に給湯器が止まったと連絡が来たら|築古アパートのオーナーが最初の1日で決める3つ
結論からお伝えすると、真冬の給湯器で決まるのは直す速さではなく、湯が出ない間をどう渡すかです。10月から2月は給湯器の需要が集中し、業者の予約と在庫の状況によっては交換まで数週間かかることがあります。今日呼んで今日直る前提で動くと、その前提が崩れたところで手が止まります。
「お湯が出ません」という連絡は、いちばん寒い朝に入ってきます。前の晩まで普通に使えていた、というのがほとんどです。まずやるのは業者に電話することではありません。

凍結か、故障か。切り分けを先にする
真冬は、故障ではないものが混ざります。聞き取るのは4つです。
- お湯だけ出ないのか、水も出ないのか。水も出ないなら給水側(凍結・断水)の話になります
- 朝だけか、日が高くなると戻るか。戻るなら凍結の可能性が上がります
- 屋外の配管に保温材が巻かれているか、割れていないか
- リモコンにエラー番号が出ていないか。番号があれば、電話の時点で症状が絞れます
配管の凍結対策は、建物側にも根拠があります。建築基準法施行令129条の2の4第2項4号は、飲料水の配管設備について「給水管の凍結による破壊のおそれのある部分には、有効な防凍のための措置を講ずること」と定めています。ただしこの第2項には、冒頭に「水道法第三条第九項に規定する給水装置に該当する配管設備を除く」というかっこ書きが付いています。建築の条文と、水道の給水装置の枠は別ということです。敷地内の水道管が誰の負担になるかは敷地内の水道管は誰が直すのかで、メーターの前後に分けて整理しています。
凍結が原因なら、直す先は給湯器ではなく配管と使い方です。冬の水抜きの手順を紙で渡しておくと、いちばん冷える朝に効きます。
交換までに、実際どれくらいかかるのですか?
目安は公表されています。給湯器の交換は、依頼から施工まで1日〜1週間程度を見込むのが一般的で、特に10〜2月は需要が高まり、予約状況や在庫によっては交換まで数週間かかる場合があるとされています。当日の工事時間はガス給湯器で2〜5時間程度(出典:リショップナビ「給湯器交換費用はいくら?工事費込みの相場を種類・号数別に解説」2026年8月20日更新)。
つまり真冬は、「直るまでの日数」を自分で短くできません。できるのは、湯が出ない期間の扱いを先に決めることだけです。

湯が出ない間、家賃はどうなるのか
民法611条1項は、賃借物の一部が使用及び収益をすることができなくなり、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額されるとしています。
国土交通省の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」には、全国の相談窓口から集めた実例が並んでいます。トラブルの原因でいちばん多いのは「風呂が使えない」で56.2%。対応の中身は幅があります。
- 埼玉県:修繕完了まで30日で月額の50%/10日で50%
- 京都府:2〜3日で銭湯代/14日で50%
- 東京都:10日で50%/1〜7日で銭湯代
- 神奈川県:3日で10%
- 熊本県:30日で100%
同じ日数でも割合が10%から100%まで分かれています。相場と呼べる数字はありません。 そして同じ調査では、一部使用不能のトラブルで賃料の減額やそれに相当するお詫び金の提供等を行っている者は12.3%にとどまるとされています。
読み取れるのは、金額の正解を探す話ではないということです。「何日から、いくら(または銭湯代)」を自分の物件の基準として先に決めておくほうが、寒い朝の電話で迷わずに済みます。減額の対象になる水準そのものについては、国の研究会は「一部使用不能の程度が社会通念上の受忍限度を超えており、通常の居住ができなくなった場合」と解釈しています。湯が出ない冬の部屋は、この線を超えている側と読むのが自然です。
給湯器の交換は、誰でもできる工事ではありません
ここは知られていないところです。ガス給湯器の設置・交換には、特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律(昭和54年法律第33号)がかかります。
同法3条は、特定工事を施工するときは「ガス消費機器設置工事監督者の資格を有する者に実地に監督させ、又はその資格を有する特定工事事業者が自ら実地に監督しなければならない」と定め、10条で違反には20万円以下の罰金を置いています。対象は施行令1条2号で、ガス湯沸器のうちガス瞬間湯沸器はガスの消費量が12キロワットを超えるもの、その他のものは7キロワットを超えるものと決められています。賃貸で使う号数の給湯器は、ふつうここに入ります。
オーナーが確かめられる手がかりもあります。同法6条は、特定工事を施工したときは当該特定ガス消費機器の見やすい場所に、氏名又は名称、施工年月日その他の事項を記載した表示を付さなければならないとしています(13条で表示をしなかった者に10万円以下の過料)。給湯器の前に立ってシールを見れば、前回の工事が誰の手でいつ行われたかが書いてあります。
点検の通知は、ガス給湯器には来ません
「10年経つとメーカーから点検の案内が来るはず」という理解は、いまの制度と合っていません。消費生活用製品安全法の長期使用製品安全点検制度で、点検の通知が来る「特定保守製品」は、同法施行令の別表第三に列挙されています。中身は2つだけです。
別表第三(第四条関係) 一 石油給湯機 二 石油ふろがま
石油給湯機と石油ふろがまだけ。ガス給湯器はこの表に入っていません。所有者情報を登録すれば点検時期に書面で通知が届く仕組み(同法32条の14)も、ここに載っている製品の話です。
そのうえで、賃貸オーナーには一段強い書き方の条文があります。同法32条の16です。
特定保守製品の所有者は、……点検期間に点検を行う等その保守に努めるものとする。
2 特定保守製品を賃貸の用に供することを業として行う者は、特定保守製品の保守に関する情報を収集するとともに、点検期間に点検を行う等その保守に努めなければならない。
一般の所有者は「努めるものとする」、賃貸に出している側は「努めなければならない」。石油給湯機・石油ふろがまが付いた物件を貸しているオーナーは、条文の上でも別枠に置かれています。 千葉県西部や栃木県南部の戸建で、まだ石油の給湯機が生きている物件はあります。
ガス給湯器のほうは通知が来ないので、年数は自分で数えることになります。寿命・耐用年数の目安は一般に8〜10年とされ、10年前後で交換用部品が入手できず本体交換になる場合があります(出典:同上)。給湯器とエアコンはいつ交換するかで作った台帳が、そのまま冬の備えになります。
費用の目安
ガス給湯器の交換は、本体+工事費込みで10〜30万円程度が目安。施工実績の平均は18.7万円で、最も多い価格帯は15〜20万円。工事費だけなら3〜8万円程度とされています(出典:リショップナビ・2026年8月20日更新)。号数の目安は16号が1〜2人、20号が2〜3人、24号が4〜5人。単身向けの部屋に24号を入れる必要はありません。
大家さんの内装屋の料金表には、給湯器の項目はありません。数の出る工事ではないため、当社の業者価格を並べて比べることができないので、上の数字は一般消費者向けの目安として置いています。参考までに、同じ料金表の設備工事では浴室のサーモシャワー混合栓(壁付け)の交換が29,800円〜(税込32,780円〜)で、これは業者価格です。大家さんが単発で個別に頼む一般消費者価格は、業者価格から2〜3割上とお考えください。
電気温水器が付いている物件は、交換の判断軸が別になります(電気温水器のままでいいのか)。
今日やることを1つだけ選ぶなら
コートを着て、給湯器の前に立ってください。本体のシールを1枚写真に撮る。型番、号数、施工年月日、工事をした会社名。これが手元にあると、寒い朝の電話が「見に行ってから折り返します」ではなく「型番は分かっています、在庫を確認してください」から始まります。数週間が数日に変わるのは、ここです。
寒い時期の相談は結露やカビとも重なります(結露とカビの相談が入居者から来たとき)。設備が壊れたときに修理と交換のどちらを選ぶかは設備が壊れた連絡が入ったらをご覧ください。減額の可否や金額が争いになりそうな事案は、弁護士や宅地建物取引士にご相談ください。
出典
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の2の4/民法(明治29年法律第89号)第611条/特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律(昭和54年法律第33号)第3条・第6条・第10条・第13条/同法施行令第1条/消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)第32条の14・第32条の16/同法施行令別表第三 いずれもe-Gov法令検索(2026年8月25日時点)https://laws.e-gov.go.jp/
- 賃貸借トラブルに係る相談対応研究会「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集~賃借物の一部使用不能による賃料の減額等について~」(平成30年3月)/国土交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001230068.pdf
- リショップナビ「給湯器交換費用はいくら?工事費込みの相場を種類・号数別に解説」2026年8月20日更新 https://rehome-navi.com/articles/406
- 設備工事の料金:大家さんの内装屋「設備工事」https://owners-interior.com/pricelist/pricetable2/(2026年8月25日時点)


