採光規制の合理化に、住まいの居室は入っていません|築古アパートのオーナーが9月11日の政令を主語で読む4つの順番

2026年9月11日、国土交通省が「建築基準法施行令の一部を改正する政令」の閣議決定を発表しました。見出しには「採光規制・防火規制・用途地域における危険物の総量規制の合理化を行います」とあります。公布は令和8年9月16日、施行は令和8年11月1日です。

「採光の規制が緩くなるなら、うちの暗い部屋も何か変わるのか」と思ったオーナーがいるかもしれません。

結論からお伝えすると、この改正で住まいの居室の採光は1文字も変わりません。緩和されるのは児童福祉施設等の居室で、条文の主語がそもそも別です。そして防火の側も、対象は延べ面積1,500平方メートルを超える建築物なので、木造アパートには届きません。

ただ、この「届かない」を自分で確かめられるようになることのほうが、たぶん役に立ちます。国の発表は年に何度も出ますが、自分の物件に効くかどうかは、条文の主語を1行読めば分かることがほとんどだからです。

9月11日に閣議決定された政令が誰に効くのかを4点にまとめた図

改正されるのは4か所です

報道発表資料(国土交通省住宅局・令和8年9月11日)が挙げているのは次の4つです。

  1. 型式適合認定の類型の追加。建築資材の調達が困難になった場合に、構造耐力に係る規定の審査省略を受けたうえで、調達が困難になった資材だけ個々に確認の審査を受けられるようにする
  2. 採光規制の対象の合理化。対象となる児童福祉施設等から、一定のものを除外する
  3. 防火上及び避難上の規制の対象の合理化。施行令109条の2の2と112条1項・4項・5項・11項の対象から、一定のものを除外する
  4. 用途地域における危険物の総量規制の合理化。圧縮ガス又は可燃性ガスを燃料として使用する設備で一定の基準に適合するものにより貯蔵・処理されるガスを、用途規制上の危険物から除外する

並べてみると、賃貸経営に関係しそうなのは2と3に見えます。実際に新旧対照表を開くと、印象が変わります。

採光の条文は、住まいの居室を見ていません

改正されるのは施行令19条2項です。現行の2項は、こう並んでいます。

  • 1号 保育所及び幼保連携型認定こども園の保育室
  • 2号 診療所の病室
  • 3号 児童福祉施設等の寝室(入所する者の使用するものに限る。)
  • 4号 児童福祉施設等(保育所を除く。)の居室のうちこれらに入所し、又は通う者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用されるもの
  • 5号 病院、診療所及び児童福祉施設等の居室のうち入院患者又は入所する者の談話、娯楽その他これらに類する目的のために使用されるもの

5つの号を上から下まで読んでも、住宅の居室が出てきません。この項は「法28条1項の政令で定める居室」を決めている項で、住宅は法律本文のほうに直接書かれているからです。

そして今回の改正は、4号のかっこ書きを次のように差し替えるだけです。

「児童福祉施設等(保育所及び利用者の滞在時間が短いことその他の理由により衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)の居室のうち……」

加わったのは「利用者の滞在時間が短いことその他の理由により衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定めるもの」という除外だけです。短時間しか使わない施設の部屋を対象から外す、という話で、アパートの部屋とは接点がありません。

アパートの居室の採光については、部屋の使い方の側から収納が少ない部屋はどう募集するか|築古アパートのオーナーが押入れを潰す前に確かめる3つに、照明設備との関係は照明器具は付けるか、入居者に任せるか|築古アパートのオーナーが球と器具を分けて決める順番にまとめています。

防火のほうは、面積で先に落ちます

3つ目の防火・避難の合理化は、施行令109条の2の2と112条が対象です。

109条の2の2は層間変形角の規定で、主要構造部を準耐火構造とした建築物等について「地上部分の層間変形角は、150分の1以内でなければならない」と定めています。ここに「その構造及び用途並びに周囲の状況を考慮して防火上支障がないものとして国土交通大臣が定めるものを除く」というかっこ書きが入ります。

112条1項は防火区画です。ここが分かりやすい。条文は、対象となる建築物のうち「延べ面積……が千五百平方メートルを超えるもの」について、1,500平方メートル以内ごとに1時間準耐火基準に適合する床・壁または特定防火設備で区画せよ、と定めています。

1,500平方メートルという線が、この条文の入口です。木造2階建てで6戸から10戸の規模のアパートは、延べ面積が数百平方メートルにとどまるのが普通なので、そもそも112条1項の話に入りません。入っていない条文が緩和されても、影響はありません。

木造アパートに実際にかかってくる面積の線は別にあります。共用廊下の内装制限は木造アパートは200平方メートルから内装制限がかかります|オーナーが共用廊下を貼り替える前に見る条文に、確認申請の要否は木造2階建てのアパートは面積を問わず建築確認の対象です|築古オーナーが大規模修繕の前に見る号の分け方にまとめています。

この政令だけでは、まだ中身が決まっていません

もう1つ見ておくべき点があります。報道発表資料の2、3、4のすべてに、同じ注記が付いています。

「(※)具体的な基準は別途告示で規定」

つまり、除外される施設がどれなのか、どういう構造なら防火上支障がないのか、どんなガス設備が基準に適合するのかは、この政令には書かれていません。政令は「国土交通大臣が定めるものを除く」という枠を作っただけで、中身は後から出る告示が決めます。

制度の動きを追うときに効いてくる読み方です。「政令が閣議決定された」という記事を見た時点では、まだ何が緩和されたのかは確定していません。実務が動き出すのは告示が出てからで、施行日の11月1日までに間に合うかどうかも、この資料からは読み取れません。

4つ目の危険物の話は、どう読めばいいですか?

4つ目は用途地域の規制です。施行令130条の9が、法別表第二の(と)項4号・(ぬ)項4号・(る)項2号を受けて、「危険物の貯蔵又は処理に供する建築物」に当たる数量を表で定めています。

ここに「圧縮ガス又は可燃性ガスを燃料として使用する設備(これと一体として設置されるこれらのガスを貯蔵するものを含み、安全上及び防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものに限る。)により貯蔵し、又は処理される圧縮ガス及び可燃性ガス」という除外が加わります。燃料電池のような、ガスを燃料に使う設備とそれに付くガスの貯蔵を、数量の計算から外す改正です。

アパートのプロパンガスがこれに引っかかるのかを気にされるかもしれませんが、数量の桁が違います。表の基準量は施行令116条1項の数量から計算され、液化ガスは「常時貯蔵する場合」で70トン、準住居地域ではその20分の1が線です。3.5トン、つまり50キログラムのボンベで70本に相当します。一般的なアパートの設置本数とは2桁近い開きがあります。

ただし用途地域によって表の当てはまり方が違い、線が引かれているのは準住居地域・商業地域・準工業地域の3つだけです。低層住居専用地域のように、この表に欄が用意されていない用途地域では別の読み方になります。ここは条文の構造が入り組んでいるので、敷地にガス設備を新しく置く計画があるなら、建築士か市の建築指導課に確認してください。

改正が自分の物件に効くかどうかを確かめる4つの順番を並べた図

「自分に効くか」を確かめる4つの順番

  1. 報道発表の見出しではなく、条文の番号を見る。「採光規制」なら施行令19条、「防火区画」なら112条というところまで下りる
  2. その条文の主語と対象を読む。今回の19条2項は児童福祉施設等、112条1項は延べ面積1,500平方メートル超。自分の物件が入っていなければ、そこで終わりです
  3. 新旧対照表で、実際に動いた文字を見る。報道発表資料と一緒に公開されており、傍線が引かれた部分が改正箇所です
  4. 「別途告示で規定」と書かれていないか探す。書かれていれば、中身はまだ決まっていません

この4つで、たいていの「規制緩和」の記事は5分で仕分けできます。そして仕分けの結果が「自分には関係なかった」であることが、実はいちばん多い。それが分かること自体に意味があります。

都合の悪いことも書いておきます

  • 「関係ない」と判断するのは、告示が出るまでは暫定です。告示で示される基準の中身によっては、想定より広い範囲に及ぶ可能性は残ります。施行の11月1日が近づいたら、もう一度見ることをおすすめします。
  • 今回の改正は既存の建物の是正を求めるものではありません。裏を返せば、いま何か直す必要が生じたわけでもありません。
  • 建物ごとの適否を、この記事で判定することはできません。用途地域・延べ面積・構造・階数の組み合わせで結論が変わります。大規模修繕や用途の変更を考えている場合は、着工前に建築士に確認してください。
  • 同じ9月11日には、改正建築物省エネ法の施行に伴う関係政令も閣議決定されています。こちらは令和9年4月1日から上位住宅トップランナー制度と大臣認定制度が始まるという内容で、既存の賃貸住宅への義務づけではありません。省エネ基準と既存建物の関係は、別の回に整理します。

出典は国土交通省「『建築基準法施行令の一部を改正する政令』を閣議決定」(令和8年9月11日報道発表)および同時公開の新旧対照条文、条文は法令検索の現行の建築基準法施行令によります。

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