建物を取り壊したら滅失登記は1か月以内です|築古アパートのオーナーが過料と1月1日で見る2つの日付
解体業者から「更地になりました」と写真が届き、精算も済んで、その年は終わる。ところが翌年の春、届いた固定資産税の納税通知書に、もう建っていないはずの建物がまだ載っている。築古アパートを1棟閉じたオーナーが、いちばん多く踏む段差です。
結論からお伝えすると、建物を取り壊したら、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請する義務があります(不動産登記法57条)。怠ると10万円以下の過料の対象です(同法164条1項)。そしてこの期限とは別に、1月1日をまたぐかどうかで税額が動きます。登記の期限と税の期日は連動していないので、取り壊す時期は2つの日付を見て決めることになります。

1か月の起算点は「解体が終わった日」であって、登記を思い出した日ではない
不動産登記法57条は、見出しを「建物の滅失の登記の申請」として、こう定めています。建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
申請義務を負うのが誰かが条文に書かれている点に注意してください。解体を請け負った業者ではありません。登記簿に載っている人が義務者です。取り壊しの発注と登記の申請は別の話なので、業者に頼んだから終わり、とはなりません。
ちなみに、建てたときの表題登記も同じ1か月です。不動産登記法47条1項が、新築した建物の所有権を取得した者は「その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない」と定めています。建物の登記簿は、建てるときも消すときも1か月で動かす仕組みになっています。
過料はいくらなのか。話題になった住所変更登記と比べると
ここは、実務者でも逆に覚えていることがある部分です。
不動産登記法164条1項は、過料の対象となる条文をずらりと列挙しています。その列挙の中に57条が入っており、金額は「十万円以下の過料」です。
一方、164条2項は「第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者」について定めており、こちらは「五万円以下の過料」です。76条の5は、2026年4月に始まった所有権の登記名義人の住所や氏名の変更登記の義務を定めた条文です。
つまり、大きく告知された住所変更登記の過料は5万円以下で、以前から義務だった滅失登記の過料10万円以下のほうが重いという並びになっています。新しく義務化されたもののほうが重いはずだ、という感覚とは逆です。住所変更登記の側は親の築古アパートを元気なうちに確認する5つのこと|住所変更登記の義務化が2026年4月に始まったにまとめています。
なお、164条1項も2項も「正当な理由がないのにその申請を怠ったとき」と書かれています。過料が機械的に科されるわけではありませんが、期限そのものは条文に書かれた1か月です。
登記を放置すると、税はどう動くのか
ここからは地方税法の話です。
固定資産税の基準日は、地方税法359条が定めています。条文は1行で、「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする」とあります。1年に1度、1月1日の状態で決まるということです。
そして誰に課税するかについて、地方税法343条2項は、土地または家屋については「登記簿または土地補充課税台帳もしくは家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録がされている者」を所有者とすると定めています。市町村が最初に見るのは現地ではなく帳簿です。
ですから、建物が現実には無くなっていても、1月1日の時点で登記簿に建物が残っていると、家屋の課税が続いてしまうことが起こりえます。実際の取り扱いは市町村ごとに違い、多くの自治体は登記とは別に「家屋滅失届」の窓口を用意しています。登記の申請と、市町村への届出は別の手続です。どちらが必要かは、物件のある市町村の資産税課に直接確認してください。
建物を消すと、今度は土地の税が上がる
こちらのほうが金額としては大きくなります。
地方税法349条の3の2は、住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例を定めています。同条1項で価格の3分の1、同条2項で、面積200平方メートル以下の部分などを「小規模住宅用地」として価格の6分の1とする、という仕組みです。
この特例は「専ら人の居住の用に供する家屋」などの敷地であることが前提です。建物を取り壊すと、その前提が外れます。建物の分の税は消えますが、土地の分は上がります。賦課期日は1月1日ですから、12月に取り壊すか1月に取り壊すかで、翌年度の扱いが変わることになります。
よく言われる「空室になると固定資産税が6倍」という話は、この特例と混同されたものです。何が起きると本当に特例が外れるのかは空室が続くと固定資産税は上がるのか|「6倍」が起きるのは空室ではないで整理しています。空室では外れませんが、取り壊せば外れます。ここが今回の記事との違いです。

取り壊す前に押さえておく順番
- 解体前に登記簿を取り、名義を確認する。相続が済んでいない建物だと、申請できる人が誰かという話が先に来ます
- 着工前の届出を出す。解体には規模に応じた事前の届出があり、出すのは業者ではなく発注者側です
- 取り壊し工事の完了日を記録に残す。57条の1か月はここから数えます
- 1か月以内に滅失の登記を申請する。土地家屋調査士に依頼するのが一般的です
- 市町村の資産税課へ、届出が別途必要かを確認する
2番目の届出については、解体の届出を出すのは業者ではなく発注者です|築古アパートのオーナーが80平方メートルと7日前で確かめる3点にまとめてあります。埼玉県・千葉県西部・栃木県南部でも、届出の窓口や様式は自治体ごとに違います。
取り壊しではなく貸し続ける道を検討する場合は、相続した築古アパートを短期間で立て直す進め方|オーナーが最初の3か月でやることと空き家を貸す以外で回す方法|築古物件のオーナーが撤退しやすい順に試すことも合わせてご覧ください。届いた納税通知書の読み方は固定資産税の課税明細書の見方は6つの欄から|築古アパートのオーナーが4月と3か月で動くにあります。
今日やることを1つだけ選ぶなら
すでに取り壊した建物があるなら、登記簿を1通取って、その建物が消えているかどうかだけ確かめてください。残っていた場合、慌てて自分で判断せず、土地家屋調査士に相談するのが早道です。何年も前の解体でも、申請そのものはできます。
なお、税額の計算や相続がからむ登記の判断は、事案ごとに結論が変わります。実際に動く前に、税理士・土地家屋調査士・司法書士など、その分野の専門家に必ず確認してください。この記事でお伝えしたのは、日付を決めるときに見ておく条文の位置です。


