スレート屋根の上の作業には、幅30センチの歩み板が要ります|築古アパートのオーナーが屋根の古い設備を外す見積りで見る行

結論からお伝えすると、スレートの屋根に上がって古い設備を外す工事では、幅30センチメートル以上の歩み板と防網などの踏み抜き対策が、法令上の前提になります。労働安全衛生規則524条は、スレートや木毛板などでふいた屋根の上で作業をし、踏み抜きの危険があるときは、事業者が「幅が三十センチメートル以上の歩み板を設け、防網を張る等」の措置を講じなければならないとしています。そして労働安全衛生法3条3項は、建設工事の注文者に、安全な作業を損なうおそれのある条件を付けないよう配慮することを求めています。見積書の「歩み板」「養生」の行を値引きの対象にしないことが、大家さんの側でできる一番の対策です。

屋根の上に、もう何年も使っていない物が載っています。昔の太陽熱温水器、錆びた物干し台、倒れかけた古いアンテナの支柱。業者に撤去の見積りを頼むと、「撤去・処分」の下に「歩み板設置」「防網」「屋根養生」の3行が並んでいました。別の業者の見積りは、その3行がなく、合計が少し安い。安いほうに決める前に、なぜ3行が無いのかを聞いてください。

屋根の撤去の見積書で見る3つの行(歩み板、防網、屋根の養生と穴埋め)の図

スレート屋根には、足場とは別の決まりがあります

高いところの作業の決まりとして知られているのは、2メートル以上の場所では足場などの作業床を設ける、それが難しければ防網や墜落制止用器具を使う、という労働安全衛生規則518条です。屋根の点検で業者の上がり方を聞く意味は屋根の点検を誰に頼むかに書きました。

スレート屋根には、それとは別の条文があります。

  • 労働安全衛生規則524条…事業者は、スレート、木毛板等の材料でふかれた屋根の上で作業を行なう場合において、踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、幅が三十センチメートル以上の歩み板を設け、防網を張る等踏み抜きによる労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない

518条が「落ちる」ことへの対策なら、524条は「踏み抜く」ことへの対策です。薄い板状のスレートは、古くなると人の体重に耐えられない場所が出ます。重い設備を下ろす作業では、足をかける場所が限られ、力もかかります。屋根の古い設備の撤去は、524条がいちばん効く場面の1つです。

職人さんが1人で来る場合も、歩み板は要るのですか?

524条が義務を課しているのは「事業者」で、守る相手は「労働者」と書かれています(2026年9月26日時点)。人を雇わずに1人で仕事を受ける職人さんの場合、その現場には条文が守る相手としての労働者がいないことがあり、条文の当てはまり方は会社に頼む場合と同じではありません。ただ、踏み抜きの危険は、雇われているかどうかで変わりません。1人で来る職人さんに頼むときほど、歩み板を使う前提の見積りになっているかを確かめてください。職人さんに直接頼むときに大家さんの側へ来る役目は職人に直接頼むとオーナー側に来る3つの役目にまとめています。

大家さんが「注文者」として配慮すること

労働安全衛生法3条3項は次のとおりです。

  • 3条3項…建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない

大家さんが業者に撤去を頼めば、この「建設工事の注文者」に当たります。具体的には、次の3つの頼み方を避けることです。

  1. 「歩み板の分を引いてほしい」と値引きの行を指定する…安全の措置そのものを削らせる条件になります
  2. 「今日中に終わらせてほしい」と工期を詰める…雨上がりや強風の日に上がらせることにつながります
  3. 「屋根に上がらずに下から外せないか」と方法を決めつける…無理な姿勢での作業を求めることになります
注文者として避けたい3つの頼み方(歩み板の値引き、工期を急がせる、方法の決めつけ)の図

外す前に確かめておくこと

  • 屋根の材料…建てたときの図面の仕上表に「スレート」「化粧スレート」などと書かれているか。分からなければ業者に見てもらう
  • 石綿を含む屋根材か…古いスレートには石綿を含むものがあります。設備を外す際に屋根材を割ったり穴を開けたりする場合は、事前調査の話になります。改修工事も100万円を超えると石綿の報告が要りますを見てください
  • 固定していた金具の穴をどう塞ぐか…設備を外したあとの穴は雨漏りの入口になります。見積りに「穴埋め・防水処理」の行があるか
  • その設備を誰かが使っていないか…アンテナなら入居者が使っていることがあります。屋根の古いアンテナは、契約書の設備欄を見てから外しますに確かめ方を書きました

都合の悪いことも書いておきます

歩み板・防網・養生の行があるぶん、見積りは高くなります。ただ、その差額は、屋根を踏み抜いたときの修理費や、人がけがをしたときの事態に比べれば小さなものです。撤去の費用は屋根の勾配・高さ・設備の重さ・足場が要るかで大きく変わるので、この記事では金額を置きません。同じ写真と条件を複数の業者に渡して見積りを取ってください。また、この記事は建物ごとに屋根の強さを判定するものではありません。傷みがひどい屋根は、上がれるかどうかから業者の判断に任せてください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

手元にある屋根の撤去の見積書を開いて、「歩み板」「防網」「養生」の行があるかを見てください。無ければ、値段の話より先に「スレート屋根の上ではどうやって作業しますか」と1行聞く。その答えで、頼んでよい業者かどうかがほぼ分かります。

出典

  • 労働安全衛生規則518条・524条(e-Gov 法令API・2026年9月26日時点)
  • 労働安全衛生法3条3項(e-Gov 法令API・2026年9月26日時点)

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