洗濯機置場が外にある部屋はどう募集するか|築古アパートのオーナーが室内に移す前に潰す3つ

外廊下の突き当たり、玄関ドアの横に、洗濯機がぽつんと1台。屋根はなく、上からのぞくとフタの上に細かい砂ぼこりが乗っている。足元の排水口には落ち葉が数枚たまっていて、蛇口は青緑色に変色している。昭和の終わりから平成のはじめに建ったアパートでは、いまも珍しくない光景です。

この部屋を募集に出すとき、多くのオーナーが最初に考えるのは「室内に移せないか」です。移せれば話が早い。ただ、見積もりを取ると想像より高く、そこで止まってしまう。止まったまま次の繁忙期が来る、というのがいちばん多いパターンです。

結論:室内に移せるかを決めているのは、たいてい排水です

結論からお伝えすると、順番はこうなります。

  1. 室内化ができるかどうかは、給水でも電源でもなく、排水の勾配がとれるかで決まる
  2. それを確かめる前に、屋外のまま効く3つ(におい・凍結・屋根と電源)を潰す
  3. 募集図面には「屋外」であることを先に書く。書かないほうが損をします

屋外の洗濯機置場は「古い物件のマイナス設備」として片づけられがちですが、実際に嫌われているのは屋外であること自体ではなく、におい・凍る・濡れる・電源が心もとない、という4つの具体的な不便です。そちらは、室内化より安く、早く潰せます。

洗濯機置場を室内化する見積もりで先に割ってもらう4点。排水の経路、給水の分岐、防水パンの有無、電源のアース

なぜ室内に移せないのか

建築基準法施行令129条の2の4は、建物に設ける配管設備の構造を定めています。排水についての第3項1号は、こう書かれています。

排出すべき雨水又は汚水の量及び水質に応じ有効な容量、傾斜及び材質を有すること。

「傾斜」——つまり勾配です。排水は電気と違って、下へ流れる力しか持っていません。洗濯機を置きたい位置から、既存の排水につながる位置まで、下り続ける経路が要ります。

1階の部屋なら床下に空間があることが多く、経路を作れる場合があります。ところが2階の部屋は、床下が下の部屋の天井です。そこに新しい排水管を通すとなると、下の部屋の天井を開けるか、床を上げて段差を作るか、どちらかになります。「洗濯機を室内に移す工事」が高くなるのは、洗濯機のせいではなく、この経路づくりのためです。

見積もりを取るときは、金額だけを聞かずに、次の4点を先に割ってもらってください。

  • 排水の経路をどう取るか(床下を通すのか、床を上げるのか、下の階を開けるのか)
  • 給水をどこから分岐するか(洗濯機用の水栓を新設するのか、既存から引くのか)
  • 防水パンを入れるか(入れると床が上がります。入れない場合、漏れたときの被害が階下に及びます)
  • 電源をどうするか(アース付きのコンセントが新たに要るのか、既存を使えるのか)

この4点が分かれていない「洗濯機置場室内化工事一式」という1行の見積もりは、比べることができません。

屋外の洗濯機置場のまま効かせる順番。排水口に水を流してにおいを見る、水栓の保温と水抜き手順を渡す、屋根と防水コンセントを整える

屋外のまま先に潰す3つ

1. におい(排水トラップ)

同じ施行令129条の2の4第3項2号は、こう定めています。

配管設備には、排水トラップ、通気管等を設置する等衛生上必要な措置を講ずること。

排水トラップは、管の途中に水をためて、下水側のにおいが上がってくるのをふさぐ仕組みです。屋外の排水口では、この水が問題になります。空室で誰も水を流さない期間が続くと、たまっていた水が蒸発して、においをふさぐものが無くなります。

内見のときに玄関を開けた瞬間に来るにおいの原因が、実は室内ではなくドアのすぐ外にある洗濯機の排水口だった、ということが起こります。空室が長い部屋を見に行くとき、屋外の排水口にコップ1杯の水を流してから内見に備えるだけで変わることがあります。トラップそのものが付いていない古い形の排水口なら、後付けできる部材があるかどうかを設備業者に見てもらってください。においの切り分けは結露とカビの相談が入居者から来たときでも扱っています。

2. 凍結

同じ条文の第2項4号は、給水についてこう定めています。

給水管の凍結による破壊のおそれのある部分には、有効な防凍のための措置を講ずること。

屋外の水栓は、その「おそれのある部分」の代表です。埼玉県・千葉県西部・栃木県南部でも、朝の冷え込みが強い日には凍ります。凍って割れると、水は止まらずに出続けます。洗濯機置場が外廊下にある場合、あふれた水は廊下を伝って階段や下の階へ回ります。

やることは大きく2つです。保温材(凍結防止のカバー)が巻いてあるかを目で見て確かめること。そして入居者に、冬の水抜きの手順を紙で渡しておくことです。口頭で伝えても、いちばん冷える朝には忘れられます。

なお、凍って壊れたときに誰が直すのかは、敷地内のどこで壊れたかと、契約でどう決めているかで変わります。この線引きは敷地内の水道管は誰が直すのか|メーターの前後で分ける負担にまとめました。

3. 屋根と電源

屋根は、洗濯機そのものより写真に効きます。雨ざらしの洗濯機置場は、募集写真に撮った瞬間に「ここに自分の洗濯機を置くのか」という顔をされる場所です。簡易な屋根やカバーがあるだけで、写真の印象がまったく変わります。撮る順番は募集写真は何枚・どの順番で載せるかを参照してください。

電源は、屋外用の防水コンセントになっているか、アースが取れるかを確認してください。屋内用のコンセントが露出したまま外に付いている物件があります。ここは電気工事の資格が要る部分ですので、自分で判断せず電気工事店に見てもらってください。

募集図面に「屋外」と書かないほうが損をするのはなぜか

設備欄に「洗濯機置場あり」とだけ書いて、屋外であることを書かない。決まりやすくなる気がしますが、逆です。

まず表示のルールの話です。不動産の表示に関する公正競争規約(不動産公正取引協議会連合会)の施行規則は、不当表示にあたるものを列挙していて、その〔設備・生活関連施設〕の項目に次があります。

建物に付属する設備について、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示

「洗濯機置場あり」という表示が、室内にあると誤認される形になっていれば、この項目に触れるおそれがあります。個別の広告がこれに当たるかどうかの判断は、宅地建物取引業者と各地の不動産公正取引協議会が行いますので、気になる場合は仲介会社を通じて確認してください。

そして実務の話です。書かずに集めた内見は、現地で断られます。仲介会社の担当者は次からその部屋を案内しにくくなり、鍵の手配と往復の時間だけが消えます。書いておけば、来る人は「屋外でも構わない」と決めたうえで来ます。母数は減りますが、決まる率は上がります。設備欄の書き方は募集図面(マイソク)でオーナーが必ず直させる7つの欄にまとめています。

書くときは、事実を具体的に書いてください。「洗濯機置場(屋外・玄関横/屋根あり/防水コンセント・アース付き)」のように、場所・屋根・電源まで書けば、読む側は自分で判断できます。

入居後に壊れたときは誰が直すのか

屋外の水栓や排水口も、オーナーが備えた設備です。民法606条1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めており、ただし書きで外れるのは、入居者の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合です。

屋外の設備は、日光と雨と気温で室内より早く傷みます。「外にあるから入居者が管理するもの」という整理にはなりません。連絡が来たときの動き方は設備が壊れた連絡が入ったら|修理と交換を分ける判断ラインを見てください。

なお、水抜きを怠って凍らせた場合のように、使い方が原因だったかどうかの判断は個別の事情によります。負担の話になったら、管理会社や専門家にご確認ください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

屋外の洗濯機置場の排水口に、コップ1杯の水を流してきてください。流したあとに、においが戻るかどうかを見る。それだけで、その部屋の内見でいちばん最初に嫌われている原因が、においなのかどうかが分かります。室内化の見積もりを取るのは、そのあとで間に合います。

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