居住サポート住宅とは何か|築古アパートのオーナーが手を挙げる前に確かめる4つ
結論からお伝えすると、居住サポート住宅に手を挙げる前に確かめるのは4つです。①申請先はどこか ②見守りを誰がやるか ③自分の部屋の広さが基準に届くか ④空室が出たときにどう貸せるか——です。とくに④が、普通の空室対応と違います。ここを知らずに申請すると、空いた月に動けなくなります。
2025年(令和7年)10月1日に、改正された住宅セーフティネット法が施行されました。この改正で新しく入ったのが「居住サポート住宅」の仕組みです。国土交通省のページには「令和7年10月1日に、改正住宅セーフティネット法が施行しました!」と掲げられています。

「居住サポート住宅」は、法律の条文に出てこない言葉です
法律を開いても、この名前は見つかりません。条文にあるのは「居住安定援助賃貸住宅事業」で、その計画(居住安定援助計画)の認定を受ける、という書き方です(住宅セーフティネット法40条)。
「居住サポート住宅」は、国土交通省が用語解説でこう説明しています。
居住支援法人等が大家と連携し、[1]日常の安否確認、[2]訪問等による見守り、[3]生活・心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う賃貸住宅として市町村長等の認定を受けた住宅。
(出典:国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」関連資料 用語解説)。ここに「大家と連携し」と書かれているのが、この制度のいちばんの特徴です。オーナーが1人で背負う仕組みではありません。
①申請先は都道府県ではなく、多くの場合「市長」です
法40条1項は、認定を申請する相手を区域で分けています。
- 市の区域=当該市の長
- 社会福祉法に規定する福祉に関する事務所を設ける町村の区域=当該町村の長
- その他の区域=当該区域を管轄する都道府県知事
セーフティネット登録住宅の登録先が都道府県知事等であることから、こちらも県だと思われがちですが、物件がさいたま市にあるならさいたま市長、川口市にあるなら川口市長です。相談の入口が市区町村の住宅部局になります。まずここを間違えないでください。
②見守りは、オーナー自身がやらないといけないのでしょうか
いいえ。法40条4項に、はっきり書かれています。
居住安定援助を行う者(中略)と住宅確保要配慮者を入居させる賃貸人とが異なる場合であっても、これらの者が共同して第一項の認定の申請を行うときは、(中略)これらの者を一の居住安定援助賃貸住宅事業者とみなす。
援助をする人と、部屋を貸す人が別でかまいません。居住支援法人などと組んで、共同で申請する形が想定されています。オーナーが毎日安否を確認しに行く制度ではありません。
では、援助の中身はどこまで決まっているのか
省令(国土交通省・厚生労働省関係の施行規則)14条が、提供する援助の基準を具体的に定めています。
- 一日に一回以上、通信機器の設置その他の方法により、安否の確認を行うこと
- 一月に一回以上、訪問その他の方法により、心身及び生活の状況の把握(見守り)を行うこと
- 福祉サービスへのつなぎ(情報の提供・助言、必要に応じて行政機関等と接触するための援助)を行うこと
いずれも「災害その他やむを得ない事情がある場合は、この限りでない」という但し書き付きです。安否確認は毎日、見守りは月1回。ここが実務の重さの正体なので、組む相手を探すときはこの3つができるかを確認することになります。
なお、この援助には対価を取れますが、省令15条が「居住安定援助の提供に要する費用に照らして不当に高いものでないこと」という枠をはめています。
③面積の下限は25平方メートル。ただし既存住宅は18平方メートルです
認定の基準は法41条で、各戸の床面積の規模は省令で決まっています。省令9条を読むと、こうなっています。
- 原則 25平方メートル
- 既存住宅である場合 18平方メートル
- 共用部分に共同で使う適切な台所・収納設備・浴室またはシャワー室がある場合 18平方メートル
- 既存住宅で、かつ上記の共用設備がある場合 13平方メートル
この4つは国が置いた原則で、市町村や都道府県が賃貸住宅供給促進計画を定めている場合、床面積や共同利用設備の基準が強化されたり緩和されたりします。そして市町村と都道府県の両方が定めているときは、市町村の基準が優先されます(出典:国土交通省・厚生労働省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律等について【関係事業者向け】」令和7年6月)。自分の物件の数字は、国の原則ではなくその市区町村の計画で決まります。
この数字は、いま国が別のところで置いている線と並べて見ると意味が分かります。2026年3月27日に閣議決定された住生活基本計画は、供給・流通を促していく住宅の規模を「40平方メートル程度を上回る住宅とする」としました。そのうえで、同じ計画の別紙1に続きがあります。
なお、主として既存住宅の活用が想定されるセーフティネット登録住宅、居住サポート住宅等、政策目的に照らして適正な水準を確保する必要がある場合は、上記によらないことができる。
40平方メートルの線の外側に、既存住宅のための別ルートが用意されているということです。この計画の面積の置き方については収納が少ない部屋はどう募集するか|築古アパートのオーナーが押入れを潰す前に確かめる3つにも書いています。
棟ごとではなく、1戸から申請できます
専用戸数(入居者を要配慮者に限る戸数)の下限は、省令12条で「一戸」と定められています。10室のアパートを全部差し出す制度ではありません。1戸から試せます。
構造・設備の基準は省令10条で、消防法・建築基準法等に違反しないこと、耐震関係規定に適合するものまたはこれに準ずるものであること、各戸が台所・便所・収納設備・浴室またはシャワー室を備えること(共用で同等以上の環境が確保される場合は各戸に備えなくてよい)が挙げられています。旧耐震の建物は、ここが最初の関門になります。旧耐震の物件をどう扱うかは外階段のサビと手すりのガタつきはいつ直すか|築古アパートのオーナーが自分で見る5か所とあわせて、建築士に見てもらうところから始めてください。
④空室が出たときの貸し方が、普通の募集と変わります
ここが、いちばん見落とされるところです。専用戸数として届け出た部屋に、要配慮者以外の人を入れたくなったらどうするか。法50条が定めています。
- 入居者を確保できない期間が3か月以上になったとき(省令31条)
- 都道府県知事等の承認を受けて、その一部を要配慮者以外に賃貸できる
- ただし、その賃貸借は借地借家法38条1項の定期借家としなければならない
- その期間は5年を上回らないこと(省令33条)
「空いたから普通に募集をかける」ができません。3か月待って、承認をもらって、定期借家で貸す。この段取りを知らずに普通借家で埋めてしまうと、認定の取消し事由(法56条2項2号)に触れます。
ただし、道は1本ではありません。国の事業者向け資料は、専用住宅の戸数を維持できない場合に必要な手続きを「目的外使用の承認申請」または「計画上の専用戸数の変更申請」の2つとしています。3か月を待たずに動きたいのであれば、専用戸数そのものを減らす変更申請という選択肢があるということです。どちらが自分の計画に合うかは、認定を受けた市区町村の窓口で確認してください。
定期借家そのものの手続きは更新料は残すか、やめるか|築古アパートのオーナーが金額より先に確かめる3点で触れた更新の考え方とはまったく別の話になるので、契約書を作る前に確認してください。
生活保護の家賃は「支払うものとする」と書かれています
オーナー側の利点として、はっきり効くのがここです。法53条は、認定事業者(居住支援協議会の構成員であること等の要件に該当する者に限られます)が希望する旨を保護の実施機関に通知したときの扱いを、こう定めています。
保護の実施機関は、前項の規定による通知を受けたときは、(中略)当該通知に係る家賃等の額に相当する金銭について、当該通知に係る被保護認定住宅入居者に代わり、当該通知に係る認定賃貸人に支払うものとする。
「支払うことができる」ではありません。口座振替が行われている場合など、厚生労働省令で定める場合は除かれます。生活保護の受け入れ全般の考え方は生活保護の受け入れをどう考えるか|築古アパートのオーナーが確かめる順番にまとめています。保証人・保証会社がいない申込の受け方は保証人も保証会社も付けられない申込が来たとき|築古アパートのオーナーが断る前に見る3つの制度をご覧ください。

認定を受けたあとに続く義務
手を挙げる前に、続く義務も見ておきます。
- 入居契約を締結するまでに、援助の内容と対価を書面で交付して説明する(法46条1項。電磁的方法も可)
- 認定を受けた計画に従って事業を行う(法47条)
- 実施状況を定期的に都道府県知事等へ報告する(法49条)
- 福祉サービス等の事業者との間で、紹介の対償として金品を渡すことも受け取ることもしない(省令35条4号・5号)
- 業務上知り得た入居者の秘密を漏らさない(省令35条10号)
これらに違反すると改善命令(法55条)が出て、命令に違反すれば認定の取消し(法56条2項3号)まで進みます。「登録するだけ」の制度ではありません。
今日やることを1つだけ選ぶなら
物件のある市区町村の住宅部局に電話をして、居住サポート住宅の申請窓口がどこかだけ聞いてください。県ではなく市、という一点を確認するだけで、次の一歩が正しい方向に出ます。
そのうえで、組む相手(居住支援法人など)を探す段階に入ります。高齢の入居者が増えたときの備えは高齢の入居者が増えた築古アパートの備え|オーナーが整える緊急連絡先と見守りにまとめてあります。この記事は制度の説明であって、個別の物件が認定を受けられるかどうかの判定はしていません。申請の可否は市区町村の窓口と、必要に応じて弁護士・建築士に確認してください。


